第3話 異世界神アルテミア
初めての執筆で読みにくいところもあると思いますが楽しんで読んで頂けましたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
本日3話投稿のうち3話目です。
「ようこそ、死者の間へ。」
銀髪の女性は穏やかに微笑んだ。
その声は不思議だった。
大きいわけではない。
むしろ優しい。
だがなぜか頭の中へ直接響いてくる。
俺は数秒間、その美貌に見惚れていた。
長い銀髪。
透き通るような白い肌。
黄金色の瞳。
整いすぎた顔立ち。
現実世界なら芸能人どころではない。
世界一の美女と言われても納得するレベルだ。
そして何より。
神々しい。
存在感が違う。
そこに立っているだけで周囲の空間そのものが神聖に見える。
「……えっと。」
俺はようやく口を開いた。
「ここ、どこですか?」
「死者の間です。」
「なるほど。」
全く分からない。
女性はクスリと笑った。
「混乱していますね。」
「そりゃしますよ。」
「でしょうね。」
「さっきまでキャバクラにいたんですけど。」
「はい。」
「気付いたら真っ白です。」
「はい。」
「死んだんですか?」
女性は静かに頷いた。
「死にました。」
あっさりだった。
あまりにもあっさりだった。
俺はその場に座り込む。
床は無いはずなのに不思議と座れた。
「マジかぁ……。」
現実味がない。
まだ夢のような気分だ。
だが否定できない。
最後の記憶は鮮明だった。
焼酎。
吐き気。
呼吸困難。
暗闇。
どう考えても助かっていない。
「急性アルコール中毒です。」
女性が言った。
「残念ながら救命は間に合いませんでした。」
「そうですか。」
俺は笑った。
乾いた笑いだった。
「なんか呆気ないですね。」
「人の死とはそういうものです。」
女性は静かだった。
慰めもしない。
同情もしない。
ただ事実を語る。
だからこそ不思議と受け入れられた。
しばらく沈黙が続いた。
やがて俺は顔を上げた。
「あなたは神様ですか?」
「はい。」
やっぱり。
「私はアルテミア。」
女性は優雅に一礼した。
「異世界エルディアを管理する神です。」
異世界。
その単語に俺は反応する。
「やっぱり異世界あるんだ。」
「あります。」
「転生とか。」
「あります。」
「勇者とか。」
「います。」
「魔王とか。」
「います。」
「エルフ?」
「います。」
「獣人?」
「います。」
「ドラゴン?」
「います。」
俺は思わず拳を握った。
「テンション上がってきた。」
アルテミアは少し呆れた顔になった。
「先ほどまで死んだことを嘆いていたのに。」
「まあ死んだのは残念ですけど。」
俺は肩をすくめる。
「終わったことは仕方ないですし。」
実際そうだった。
もちろん家族には申し訳ない。
友人にも申し訳ない。
だが今さら戻れないなら前を見るしかない。
アルテミアは少し感心したようだった。
「切り替えが早いですね。」
「接客業やってると嫌なこと引きずってられないんですよ。」
「なるほど。」
神様が納得していた。
なんだろう。
意外と話しやすい。
◇◇◇
「では本題です。」
アルテミアが指を鳴らした。
すると空中に無数の光の文字が現れた。
俺は思わず声を上げる。
「うおっ。」
まるでゲーム画面だ。
数え切れないほどのスキル名が並んでいる。
剣術。
槍術。
体術。
炎魔法。
雷魔法。
召喚術。
錬金術。
農業。
建築。
商売。
鍛冶。
ありとあらゆる能力が存在していた。
「転生特典です。」
アルテミアが説明する。
「本来は四つ選択できます。」
「四つ。」
「ですが。」
アルテミアが少しだけ表情を曇らせた。
「あなたの場合は不運な死でした。」
「不運。」
「あなたは寿命ではなく他者の行動によって死亡しています。」
確かに。
自分で飲みたくて飲んだわけではない。
断れない状況だった。
アルテミアは続ける。
「そのため私の裁量で一つ追加します。」
「五つ!?」
「はい。」
神。
本当に神。
俺は心の中でガッツポーズした。
◇◇◇
まず考える。
何を選ぶべきか。
戦闘系か。
生産系か。
万能系か。
普通の転生者なら剣聖や魔王級の能力を選ぶかもしれない。
だが俺は違った。
俺には俺の人生がある。
俺の武器がある。
大学。
経済学。
キャバクラ。
黒服。
接客。
酒。
その瞬間。
ある考えが頭に浮かんだ。
「神様。」
「はい。」
「異世界の酒ってどんな感じです?」
アルテミアが首を傾げた。
「酒、ですか?」
「はい。」
「エール。」
「はい。」
「ワイン。」
「はい。」
「果実酒。」
「はい。」
「蒸留酒。」
「なるほど。」
少ない。
かなり少ない。
ビールはあるらしい。
だがウイスキーは?
ブランデーは?
シャンパンは?
カクテルは?
ハイボールは?
日本酒は?
焼酎は?
その辺りが気になる。
「酒文化は発展していますか?」
「平均的です。」
平均的。
つまり現代日本ほどではない。
俺の中で一つの仮説が生まれた。
もしかして。
これ。
商売になるんじゃないか?
◇◇◇
「決めました。」
俺は最初のスキルを選ぶ。
【全アルコール精製】
その瞬間。
光が弾けた。
スキルが確定する。
アルテミアが目を丸くした。
「珍しいですね。」
「そうですか?」
「転生者の九割は戦闘系を選びます。」
「俺、戦う予定ないんで。」
「はぁ。」
神様が若干困惑していた。
気にしない。
二つ目。
【全氷魔法】
酒には氷が必要だ。
これは絶対。
冷えたビール。
ロック。
ハイボール。
カクテル。
氷が無ければ始まらない。
三つ目。
【全鑑定】
客商売には必須。
危険人物。
金持ち。
嘘つき。
全部見抜きたい。
四つ目。
【アイテムボックス】
物流革命。
保存革命。
在庫管理革命。
絶対に必要。
そして最後。
アルテミアが微笑んだ。
「こちらは私からです。」
光が降り注ぐ。
俺の身体に吸い込まれていく。
【強靭な腎臓】
「……。」
「……。」
俺とアルテミアは見つめ合った。
「腎臓ですか。」
「腎臓です。」
「なんで。」
「酒で死んだからです。」
正論だった。
反論できない。
「二日酔いしません。」
「強い。」
「泥酔しません。」
「強い。」
「ただし酔います。」
「惜しい。」
アルテミアが初めて声を出して笑った。
その笑顔は本当に綺麗だった。
◇◇◇
全てのスキル取得が終わる。
すると俺の前に半透明の画面が現れた。
――――――――――
名前:レン
種族:人間
年齢:16
職業:なし
スキル
【全アルコール精製】
【全氷魔法】
【全鑑定】
【アイテムボックス】
【強靭な腎臓】
――――――――――
「おお……。」
思わず感動する。
完全に異世界だ。
完全にチートだ。
「では転生準備が整いました。」
アルテミアが言った。
いよいよらしい。
「最後に質問はありますか?」
俺は少し考える。
そして答えた。
「一つだけ。」
「何でしょう。」
俺は笑った。
「異世界にキャバクラってあります?」
アルテミアは数秒固まった。
そして。
「ありません。」
と答えた。
その瞬間。
俺の中で何かが決まった。
「じゃあ作ります。」
「……はい?」
「異世界初のキャバクラ。」
アルテミアが頭を抱えた。
「普通は冒険者とか勇者とかを目指すのですが。」
「俺、黒服なんで。」
「そうでしたね……。」
神様の反応がおかしい気がする。
だが気にしない。
俺はもう決めていた。
酒で死んだなら。
今度は酒で成功してやる。
異世界一の店を作ってやる。
そう思った瞬間。
視界が光に包まれた。
転生が始まったのだ。
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