幕間 総騎士団長の教育計画
急遽思い付いたので幕間追加です。
ちょっと短めです。
「頼みがあるのだが」
ハイトが連合国へ遠征している間のある日。
魔道具の作業をしているアメシスの元に、セファリシアが訪ねてきた。
珍しい賓客に、アメシスは作業を中断してそちらを見る。
「珍しいね。まあ、大方は魔道具絡みのお話だとは思うけど、聞くだけ聞くよ」
「うむ。察しの通りであるが、皆に支給している訓練着に、何かしらの機能を付けられないかと思ってな。できれば枷のような機能が欲しいのだが」
セファリシアの提案は、訓練着に身体機能の抑制効果を付与し、高付加トレーニングをできるようにしたい、という話だった。
提案を聞いたアメシスは、ふむ、と腕を組む。
「可能ではあるよ。ただ、普通の麻や絹だと魔力を定着させにくいから、どうしても効果が弱くなる。魔力の通りが良くて、定着をさせやすい素材ならできるから、そういう素材でできたものを用意するか、素材を用意して1から作るか、かな。1から作る場合はハイトが服飾職人を捕まえてくる事が前提になるけど」
「どちらにせよすぐには不可能、という事だな」
「発想自体は面白いと思う。状況が整ったらすぐに動きたいから、今考えてる事、もっと詳しく聞かせてよ」
セファリシアの構想に興味を持ったアメシスが、その内容を聞きながら実際に設計図を引いていく。
「頼まれてた部品、作ってきたよ」
設計図面を挟んであれこれと議論を交わす2人の元へ、テンションの低いレイネスタがやってきた。
その手には、アメシスが今後試作を行う魔道具の部品があったのだが、アメシスはそれを見て、すぐに図面に視線を戻す。
「適当な所に置いといてよ。今はそれどころじゃない」
言われた通り、わかりやすい場所に布でくるんだ部品を置き、レイネスタは何気なく2人が議論を交わす図面を覗き込む。
すると、ダウナー状態のレイネスタの表情が、鍛冶モードのそれへと変わっていく。
「面白そうな話してるじゃん。ちょっと混ぜなよ」
セファリシア発案の訓練着について、レイネスタが混ざると、より議論は加速する。
どうせなら、とレイネスタが高負荷トレーニング用の鎧などを提案すると、即座にセファリシアが食い付き、続いてアメシスも興味を示す。
「なるほど、確かに重量のある鎧で高負荷トレーニングをするのは理に叶っているな」
「持久力の訓練にはもってこいでしょ? どうせならさ、こういう感じのスタミナ回復強化を組み込んで……」
「それならここは複合術式にすべきだね。その方がコストも安くなるよ」
3人寄れば文殊の知恵、とばかりに構想が進んでいく。
実は相当な変態仕様の訓練装備を作り上げている事に、3人は全く気付いていない。
後に、この変態仕様の訓練装備が、リベルヤ養成装備と呼ばれ、精強なリベルヤ家の兵士や騎士を育て上げる事に大きく貢献した、と有名になるのだが、その事をまだ3人は知らなかったりする。
「もういっそ、早いうちにシャルロットに許可貰って予算組んでもらうべきじゃない?」
「そうだな。早いうちに手続きを踏んでおく方がいいし、シャルもダメとは言わないだろう」
「だったら、これを叩き台にしてもっともっと機能を良くしよう。シャルロットがぐうの音も出ないような、完璧なものを目指そうじゃないか」
盛り上がる3人の議論は、その日の予定を全キャンセルして翌日まで続いた。
深夜テンションも加わって、大いに変態仕様の装備が出来上がっていくその様は、他人が見たら顔を引き攣らせる事だろう。
「これで、ひとまずは完成という事になるだろうか?」
「だね。実際に試作してみて、ある程度修正を加える事になるだろうけど、ベースは殆ど変わらないと思うよ」
「じゃあ、アタシは合間で鎧とかの金属系装備の試作をしとくから、完成したらアメシスの方で仕上げて」
ひとまず試作を1つずつ作り、それを成果としてシャルロットに提出し、予算を組んでもらうという話で3人はひとまずの結論を出し、各々解散。
なお、予定をすっぽかした事により、1ヵ月の減給をシャルロットから言い渡されたのは、また別の話。
技術者たちがノリにノッてしまうと生まれる変態仕様の物品。
そんな繰り返しで日本は発展したんじゃないかなあ、と個人的に思ってます。




