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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり13人目④

「北の方に住む山の蜘蛛女(アラクネ)族、クラタン氏族が相当に殺気立っているらしいです。あまりにも警戒度が高いので、細かい理由までは探れませんでした」


 翌日の昼頃。

 暗部のエージェントから調査結果が上がってきたが、連合国の最北東を縄張りにする山の部族、クラタン氏族が殺気立っている、というものだ。

 うちの暗部で入り込めないというのなら、それは相当なものなのだろう。

 まあ、殺気立っているというのなら、そこを避ければいいという話ではある。


「だったら、クラタン氏族の影響力がある地域は避けた方が良さそうだな。影響範囲はわかるか?」


「それが……クラタン氏族は連合国内の蜘蛛女族の元締めのような立ち位置でして……蜘蛛女族に関わるとすれば、避けては通れないかと」


 おおう……元締めって、ギャングじゃないんだから。

 まあ、種族的な総人口があまり多くないのなら、色々とお互いに横の繋がりが強いのはわからないでもないか。


「だったら、最初からクラタン氏族のトコに行くしかなさそうだな」


「そだねー。まあ、何とかなるっしょ。うちらも別に争いに行くわけじゃないし」


「いざとなったら戦う準備はしておかないといけないね」


 暗部からの情報を纏め、とりあえず戦闘に備えつつ、俺たちは出発の準備をしていく。

 とはいえ、今日はもう時間が中途半端なので、明日の朝出発となる。


「もうちょい何かわかる事があればいいんだけどなあ……」


 出発の前に取れる情報がイマイチだったけど、うちの暗部が逃げてくるって事は、それだけ防備が固められているという事。

 基本的には命大事に、ってのが基本方針だし。

 逆に言えば、犠牲を恐れなければ色々情報は取れるのかもしれないけど、わざわざ犠牲を出すような局面じゃないからな。


「こういう時に何か事件起きるのがハイトじゃない?」


 したり顔で揶揄いにくるカトレスはちょっとムカつくが、ちょっと否定できないのがなんともな、という感じ。

 今までの経験上、こういう微妙に時間が余りそうな時に何かが起きる。


「当主様! 傷付いた蜘蛛女族を保護しました!」


 ほら。

 そんな気がしてたから、心構えができてると驚かずに済む。


「とりあえず、意識があるなら保護した蜘蛛女族を連れてきてくれ」


 緊急事態とばかりに駆け込んできた兵士は、平然としている俺たちの様子を見て、一瞬怪訝な表情をしたものの、指示に従って一度退出。

 少ししてから、傷の手当てを受けたであろう蜘蛛女族を連れた兵士が戻ってくる。


「彼女です。この街の近くで倒れていました」


 身体の所々に包帯を巻かれ、痛々しい姿ではあったが、俺は初めて見る蜘蛛女族が美しいと思った。

 身長は2メートルに達しそうなくらい大きく、相応に下半身の蜘蛛部分も大きい。


「ええと、とりあえず大丈夫か? 意識はあるみたいだけど」


 ここに来るまでに、特にこれといった反応を示さない蜘蛛女族は、俯いたまま小さく頷く。

 肩口くらいまでの亜麻色の髪が垂れて、表情が見えないが、こちらを警戒している、という感じではなく、ただ何かの恐怖に怯えているというか、そんな感じ。


「良かったら、事情を話してくれないか? もしかしたら力になれるかもしれない」


 なるべく威圧感を与えないよう、努めて優しく話しかけるよう意識して声をかけると、恐る恐る、といった様子で彼女は顔を上げた。

 顔には傷が無かったようで、整った顔立ちながら、どこか素朴さを感じさせる顔つきだ。


「ノ、ノルは買い物を言い付けられて、街に向かってたら、魔物に襲われて……何とか逃げた所で意識を失ったら、さっきの兵士さんに助けられてなあ。いやぁ、おっかねえ思いをしたぁ」


 独特の訛りがある口調で、蜘蛛女族は語る。

 なんというか、田舎訛りみたいな口調だな。

 名前はノル、でいいのか?


「ええと、ノルさん、でいいのかな? 身体は手当てを受けたみたいだけど大丈夫そうか?」


「ああ、自己紹介がまだだったなぁ。ノルはノルフィー・クラタンって名前なんだぁ。クラタン氏族のもんだぁ」


 最初はちょっと怖がっていたようだが、口を開けば結構良く喋る。

 特徴的なのは自分の事を名前で表す所と、~だぁ、っていう口癖か。


「身体の方はおかげさまで、問題無しだぁ。何日かすりゃあ治るんだぁ。人間さんたちはいいやつらだぁ」


 緊張が解れた、あるいは何かプレッシャーを感じていたのかは不明だが、今となっては元気そうだ。

 数日すれば怪我も治るだろうと言ってるし、ひとまず心配はいらなそうか。


「買い物に来たって言ってたけど、何を求めて山を下りてきたんだ?」


「ノルはこの街限定の菓子を頼まれたんだぁ。何ヵ月かに1度は買いにくるけんど、毎回すっげぇ行列だぁ」


 この街限定の菓子、ね。

 ちらりと双子の方に目線を送ると、カトレスが気まずそうな表情をしている。


「えっと……そのお菓子、昨日で売り切れたかも」


 どこか居心地が悪そうな様子のカトレスの言葉に、ノルは目を見開く。


「売り切れたぁ? ノルは発売日に合わせて来たはずだなぁ?」


「いやー、うちらが爆買いしたせいで今回作った分は売り切れって言われちゃったからね」


 買い占めかよ。

 思わず、カトレスを睨むと、彼女は気まずそうに顔を逸らす。

 とりあえず、彼女が買い占めたであろうお菓子はいくらか弁償してあげるとしよう。

 彼女がいればクラタン氏族との窓口になてくれるかもしれない。

 訛りはあれど、幸いにも言葉は標準語が通じるので、言葉の壁で躓く、なんていう展開が無かったのが幸いか。

 取らぬタヌキの皮算用ではるが、とりあえず今後の動きをあれこれ考えつつ、俺は人生初の蜘蛛女族と交流を行うのだった。


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