ワケあり13人目③
活動報告を更新しました。
端的に言うと、感想に返信するようにしましたよー、という話です。
過去分も平等に全て返信させて頂きました。
(既にもう遅しかもしれませんが)
「蜘蛛女族の集落に行くなら、山の部族の方がオススメだ。あまり外部の人間に隔意が無いからね」
「森の部族は臆病だから余所者を警戒するよ」
「男は歓迎されるだろうな」
聞き込みで得られた蜘蛛女族の情報は、概ね同じだった。
山の部族の方が外部の人間に対して寛容で、森の部族は臆病。
男は歓迎される。
といった所だ。
前者は山と森の部族で何が違うのか不明だが、後者の男が歓迎されるという事に関しては、何となくわかる。
蜘蛛女族、という名前の如く、彼女たちの種族は女しか存在しない。
他種族の種で子を産むため、種族として繁栄するには外部から男を求めないといけないのだ。
「とりあえず山の部族の方に行くのが良さそうだな」
「聞き込みの結果的にはそんな感じだねー」
山の部族を優先して尋ねる、というのは決定事項として、文化的な話は全然集まっていない。
ほとんど同じ情報しか拾えなかった聞き込みを切り上げ、宿に戻ってきた俺やカトレスは、後続が戻ってくるまで暇になる。
あとは他の誰かがいい感じに違う情報を拾ってきてくれるといいんだが。
「お姉ちゃん、ハイト、もう戻ってたんだね」
少し遅れて、クルスも戻ってきた。
とりあえず、得られた情報を彼女にも話して、違う話を聞けたか確認してみる。
「なるほど。それならうちはちょっとだけ違う情報を拾えたよ。山の部族は狩りをするから、武闘派が多いんだって。森の部族は狩りをしない分、臆病で温厚だって聞いた」
「なるほど。武闘派と穏健派で棲み分けをした結果が、森と山の部族ってわけか。だとしたら、何か手土産でも用意すべきかもな」
狩りだけで生計を立てているわけではないだろうけど、狩りがメインという事であれば、生産力は低い可能性が結構ある。
であれば、酒などの嗜好品や調味料なんかは喜ばれそうに思えるな。
あとは単純に街や都市でしか買えない菓子なんかもアリか。
「決闘とか申し込まれたりしない?」
「武闘派な部族の中でも過激なトコはあるかもな。まあ、その辺はどうとでもなるだろ。それこそあれこれ口で文句を言われるよりは、拳で語り合った方が早いって事もあり得る」
脳筋部族なら、殴り合いで語った方が早い場合が往々にしてある。
そうなったらなったで、こちらとしてはわかりやすいのである意味助かるし。
「効果がある保証は無いけど、酒とか調味料とか、狩りだけじゃ手に入らなそうな物を適当に見繕ってきてくれ。俺は残りが戻ってきたら情報を纏めておく」
「りょー。そんじゃ行ってくるね」
何かの品目を大量に用意する、というよりは種類を広く浅く集めるように指示を出し、双子をセットで買い物に出す。
決して俺自身が買い物に行くのが面倒だったとかではない。
双子を送り出してから程なくして、続々と兵士と騎士たちも聞き込みを終えてきたが、新しい情報はほとんど無かった。
せいぜい、最近は山の部族が一部殺気立っている、という事くらいが新情報だ。
「殺気立ってる、ねえ。外敵を警戒してるのか、それとも侵略者を警戒してるのか……」
連合国が先の傭兵国との戦争で被害を受けたのは、西側国境から中枢統制局までの区間だ。
東側の方面は、直接的な被害は殆ど無いはず。
そこまで考えた所で、俺は竜人族の商人、マジャンを思い出す。
色々と非合法な手を使っており、極め付けは闇奴隷商の組織と関わりがある。
あいつが、もし蜘蛛女族をターゲットにしていたとしたら……?
身内を攫われた武闘派の部族が殺気立つのは無理も無いだろう。
とはいえ、推測の域を出ないし、証拠も情報も無い。
「ある程度は行き当たりばったりになるかもだけど……できれば面倒に巻き込まれないといいな。あんまし人手も多くないし」
兵士や騎士はあくまで最低限の人数しか連れて来ていないし、連れて来た彼らも半分は休暇のようなものだ。
戦えと命じれば戦うだろうし、職務は全うしてくれるだろうけど、羽を伸ばしてもいいと言った手前、ちょっと命令を出しにくい。
とはいえ、俺が単独行動をするわけにもいかないしな……。
こういう時、貴族ってのは腰が重くなるから困る。
けどまあ、手抜きをするわけにもいかない、か。
「すまんが暗部とコンタクトを取って、ここらの蜘蛛女族の情勢を探らせてくれ。とりあえず明日いっぱいで確認できる範囲でいい」
手近な兵士に指示を出して、暗部を動かす事にした。
こういう時、この大陸中に網を巡らせているエスメラルダの組織力はかなりありがたい。
急に情報を集める必要が出た時も、大抵の街や都市には暗部のエージェントが1人くらいはいる。
そこから連絡を取れればあっという間に情報が集まるので、まさに情報戦の最先端だ。
こればかりは王家側の組織である眼すら上回るので、時折王家の方からも協力要請が来るくらいだし。
出会った時こそ色々あったが、今となってはシャルの提案に頷いておいて良かったと思う。
あの時、俺が怒りに任せてエスメラルダたちを地面の染みに変えていたら……きっと今よりも大変な思いをしていただろうし、こんな風に自分の用事で出歩く余裕なんて無かった。
今となっては代えの効かない大事な仲間だ。
世の中、何が起こるかわからないものである。
「カトレスとクルスが戻ってくるまで俺の護衛をする人員以外は、明後日まで自由行動でいいぞ。交代要員は、交代を忘れるなよ」
とりあえず、暗部から調査結果が届くまでは待ちが確定したので、俺は宿に残っていた兵士たちを解散させた。
喜んで出掛ける者や、交代の日程について確認をしている者、すぐに宿の部屋に戻る者と、みんな思い思いに動いている。
「当主様は何かとトラブルに恵まれる星の生まれですか?」
「うっせ。俺だって好き好んでトラブル呼び込んでるんじゃないわい」
双子が買い物から戻るまで、俺の護衛に当たる騎士と軽口を叩き合う。
こういう待ちのタイミングで、部下と気軽に喋れる関係はいいな。
時間潰しになるし、俺には無い視点に気付く事もある。
「たっだいま~」
「言われた通り、色々買ってきたよ」
買い物を終えた双子が宿に帰ってきたのは、夕方少し手前の時間帯。
午前中を聞き込みに宛て、午後から買い物に出ていたのを考えると、なかなかに時間がかかったな。
「ずいぶん長い買い物だったな」
「まーねー。並ばないと手に入らない物もあったし?」
「お姉ちゃんが何でも買おうとするから止めるのが大変だった」
相変わらず奔放なカトレスに、そのお目付け役であるクルス。
全くブレないその姿勢は、だいぶ俺に慣れてきた証拠だろう。
「とりあえず、明日いっぱい暗部に情報収集させるから、それまで待機だ。何だか、山の部族が殺気立ってるらしい」
「ふ~ん? 相変わらず、トラブルを呼び込むね」
「うっせ」
慣れてきすぎてだいぶ気安くなってきたような気もするが。
まあ、まだ気を張り続けるような段階ではないので、わざわざ咎める事も無いだろう。
とりあえず、暗部が厄介な情報を持ってきませんように、と祈るのだった。
何もありませんようにと願う=フラグ
もはやお約束。




