ワケあり13人目②
前回の記載に間違いがあったので修正しました。
西の山岳地帯→×
東の山岳地帯→○
です。
該当部分は既に修正済みですが、先に読んでしまった方は上記に置き換えて下さい。
「兵士向けの奴隷が結構いたな」
「ええ。今後の成長に期待できる若手が多くて嬉しい限りですね」
東の山岳地帯へ向けて連合国を移動していく。
途中で立ち寄ったいくつかの街で奴隷商を訪ね、兵士として見込みのある者が多く見つけられたので、それぞれ購入し、配送サービスで王都に向けて送ったが、既に200人程度を集められたのはかなり大きい。
全体の必要数としてはまだ足りないものの、一気に人数が増えたのはかなり大きいな。
新入りが増えれば、リシアが張り切って調練を施す事だろう。
「低い位置とはいえスティクス山脈の方に住んでるなんて、なかなか大変そうだよね」
目的地へ向けて騎馬で移動する最中、カトレスがぽつりと漏らす。
今回の目的である蜘蛛女族が住むのは、帝国との国境線でもあるスティクス山脈の麓。
アメシスに聞いた話によると、他にも森に住む部族も少数ながらいるらしいが、大方は山の方に集中しているらしい。
そのため、数打ちゃ当たるの精神でまずは山の方から当たって、そのまま南下して西回りのルートで沿岸地帯を回り、最終的に北上して帰国する、という旅程だ。
今回の主目的は蜘蛛女族と人魚族の職人スカウトなので、その他の奴隷商巡りは移動のついで、という形になっている。
まあ、現状では奴隷商巡りがメインになってしまっているが。
「元々森に棲んでたらしいけど、数が増えるにつれて山に移り住んだ部族もいるって話だな。蜘蛛女族の中では森の部族とか山の部族って感じで区別してるらしい」
蜘蛛女族は女性の上半身に蜘蛛の下半身を持つ種族だ。
結構ファンタジー物ではメジャーな部類だと思う。
カテゴライズとしてはモンスター娘とされる事もあるな。
まあ、こっちの世界では半身が人間だから半人族、っていう括りになってるけど。
蔑称とかじゃなく、ただ事実として半身が人間だからという区別でそうなっているだけだ。
エルフやドワーフ、獣人なんかは人間と一部だけが違う、という意味で亜人族、と区別されているし。
そういう意味ではうちの幹部は亜人族が多い。
人間なのは俺とシャル、オルフェさんくらいなものだ。
まあ、俺は別に人間至上主義とかじゃないし、ちゃんと言葉が通じれば別に構わないというスタンスなので、見た目の違いに忌避感は無いのだが。
帝国は歴史上どちらかといえば人間至上主義の色が強く、他種族が王国よりも少ない。
多分、帝国の人口の1分もいればいいくらいじゃなかろうか。
「へー。それじゃうちらは山の部族の方に行くんだ」
「山の方から行くってだけだ。麓の森にいる部族も尋ねるぞ。まあ、その辺りは近場の街や村で蜘蛛女族と交流のある所を探して、情報集めが必要だけどな」
いきなり伝手の無い人間が行っても現地の部族が歓迎してくれるとも限らない。
それならば、蜘蛛女族の服飾品が各地に出回っている以上、交流のある人間がいるはず。
そこから情報を拾って、可能なら紹介状でも書いてもらうのがいいだろう。
あとは蜘蛛女族の習性というか、風習なんかを聞いておく必要もあるか。
人間の中では当たり前でも、他種族間ではタブーという話もあるかもしれないし。
「じゃ、うちらは次の街に着いたら情報収集?」
「そうなるな。直接の付き合いがあるのは村とかでも、最終的に物流に乗せるには大きい街に集める必要がある。そうなると、次の目的地には何かしら情報があるはずだ。そこから色々辿っていく」
「お姉ちゃん、情報収集にかまけて遊んじゃダメだからね?」
妹に釘を刺され、ギクリとするカトレスを見て、俺は自然と笑みを浮かべてしまう。
何というか、年頃の少女なんだな、と。
最初の頃はずっと気を張ってたのか、かなり礼儀作法もしっかりしていたが、うちに慣れてきてからはオンとオフの切替ができるようになったようだ。
まあ、そのせいでクルスからお小言を言われる機会も増えたようだが。
「そういうクルスは、もう少しくらい肩の力を抜いてもいいんだぞ。いつも気を張ってたら疲れるだろうし」
「ううん、平気。うちは性格、っていうか性分だから」
俺がもうちょっとはっちゃけてもいいぞ、と声をかけてみれば、クルスは苦笑いを浮かべて小さく首を振る。
まあ、姉が少しだらしない分をフォローするのが習慣になってしまった、という感じか。
「クルスがカトレスの手綱を握ってくれてるのは正直助かってるよ」
「お姉ちゃんは私がいないとダメだから……」
「別にクルスがいなくたって平気だし! もう、失礼しちゃう!」
双子と俺の会話を聞いて、近くの兵士や騎士たちが小さく笑う。
ある意味、こういうやり取りも名物になりつつある。
良くも悪くも、みんなリベルヤ家の色に染まってきたなー、という所だ。
俺としてはガチガチに規則で縛るよりも、締める所さえ締めてくれれば普段くらいは大目に見てもいいと思っているし。
まあ、だからといって悪さを黙認するわけじゃないから、俺も締める所は締めるようにしている、という感じ。
「当主様、そろそろ街の審査列に入ります」
「おし、並ぶぞ」
東側で最大の都市に入るための列に並ぶ。
貴族用の列に並んでいるので、一般列よりも進むのは早い。
まあ、俺たちには連合国発行の無限通行証があるので、順番さえ来れば手続きはすぐだ。
ある程度以上の規模の街では、これが効果抜群だった。
「この街にはどういう名物があるんだろうね?」
「山の幸があるといいな。野菜ばっかで飽きてきた所だし」
今まで通ってきた街の名物は、物は違えど全部野菜だったので、そろそろ肉が欲しい感じだ。
あとは山岳地帯が近いので、山菜とかもアリか。
山菜も野菜だと言われれば、それはそうなのだが、野菜と山菜は似て非なるものだと思う。
何というか、野性味というか、そんな感じの違いがあるというか。
「うちはそろそろガッツリ肉食べたいなー。野菜も美味しいけど、やっぱ肉っしょ肉」
「うちは果物でもいいかな。山が近いなら季節的に色々ありそう」
「ああ、言われてみれば果物もいいな。保存の効くものがあればお土産にも良さそうだ」
列待ちの時間で、名物についてみんなで話す。
カトレスだけでなく、兵士と騎士たちも肉が食いたい、と口々に言っている。
やはり身体を動かす職業だからか、みんな食欲旺盛で食いでのあるものが好きなようだ。
かくいう俺もそろそろ肉は欲しいなという思いはある。
連合国は自然豊かなお国柄か、野菜が名産な所が多いらしい。
一応畜産とかもやってるはずなんだけど、俺たちが通ってきたルートは野菜が名産な所ばかりだったと信じたい所。
「次の人、どうぞ」
名物に関する会話で盛り上がっていると、いつの間にか俺たちの順番が回ってきた。
さて、この街で探している情報があればいいな。
そんな思いを胸に、俺は無限通行証を取り出すのだった。




