ワケあり13人目①
「とりあえず、領内の視察は何事も無し、と」
おおよそ1ヵ月をかけてリベルヤ侯爵領内の査察を終え、俺は護衛のカトレスとクルス、他少数の兵士と騎士を連れ、連合国へ向けて南下していた。
各領地の運営は基本的に良好で、不正を行った形跡はゼロ。
時に代官から問題の解決を依頼される事もあったが、俺の対処が必要かつ急ぎのものはその場で対応し、後回しで問題無く、シャルにも対応できるものに関しては、都度手紙で王都邸のシャルへ手紙を出して対応済み。
ようやく主目的である各種人材の捜索に迎えるわけだ。
既に連合国の方にも先触れを出し、ある程度の期間滞在する旨に返事も貰っているので、大手を振って連合国内に入れる。
「ハイト・リベルヤ侯爵様ご一行でございますね。中枢統制局よりお話は伺っておりますので、こちらにて簡易検査のみお願いします」
国境にて、連合国に入る人数と名前、簡単な荷物検査を受けて、俺たちはスムーズに入国。
そのまま、真っ直ぐに南下していく。
今回、中枢統制局には寄らず、旅をしながら各地の街や都市を巡って奴隷や在野の人材を探す。
こちらに関しても、連合国から許可は貰っているので、奴隷以外は双方が合意していればOKとなっている。
連合国側は俺たちが外貨を落としていくし、先の傭兵国との戦乱の傷もまだ癒えきっていないので、場合によっては露頭に迷う人を減らせる可能性があるメリットがあるのだ。
巡り巡って将来的には、リベルヤ領で雇われた者たちの子孫が情報や技術を持って連合国に帰ってくる可能性もある。
長寿種族の多い国柄ゆえに、そういった思惑も含まれているだろう。
「さて、移動しながらでいいから聞いてくれ。一応、形式上護衛を連れて行く必要があったから君たちに同道してもらったが、基本的には急いで各地を移動する予定は無い。滞在先の街や都市で多少羽を伸ばしても構わないから、あまり必要以上に気を張る必要な無いぞ。移動も身軽に移動できるように騎馬のみだしな。ただし、侯爵家所属として恥ずかしくない程度の立ち振る舞いで頼むぞ。最低限の部分さえ守ってくれれば、滞在している場所で娼館に行こうが飲み歩こうが自由にしてくれていい」
今回の遠征は、移動力を重視して各時が騎馬に乗って移動しており、馬車は無し。
奴隷や交渉に成功した人材は、前回と同じく配送サービスを利用する予定だ。
そんなわけで、多少はハメを外してもいいとみんなに声をかけると、騎士と兵士たちから歓声が上がる。
「とはいえ、何人かは交代で俺についてきてもらう事になるから、そこは喧嘩にならないように上手くやってくれ。そうだな……基本的に2人ついてきてくれればいい。どういう頻度で交代するかは任せる」
カトレスとクルスは護衛でもあるが、俺の側仕えでもあるので、以外と雑務が多い。
なので、何人かは監視などの役目で必要になる。
その辺りは各々で調整をしてもらうよう伝えると、早速とばかりにみんながあれこれと話し合いを始めた。
とはいえ、会話はしつつも周囲への警戒は怠っていないので、そこはしっかりとリシアに鍛えられたのだろうな、と思う。
「うちらは自由時間あるの?」
「あるわけないでしょ」
周囲に身内しかいないので、双子の態度も気楽なものだ。
とはいえ、俺の側付きというわけで、自由時間はほとんど無さそうではあるのは確かか。
立場上仕方ないとはいえ、さすがに少しは考慮した方が良さそうだな。
「1人で行動しないなら、お前たち2人が抜けてる間は兵士たちに人数を回してもらうから、自由時間を取っていいぞ。さすがに単独行動はナシだ。一応傭兵国の残党は洗い出して処理しているはずだが、抜けがあるとも限らないからな」
見た目は若い獣人の女の子だ。
実力的にそこらの人攫いなんぞにそう遅れは取らないと思うが、万が一という話もある。
国外でもあるので最低限2人行動を徹底させるべきだろう。
王国と違って俺の裁量ですぐに動けるとは限らないしな。
「やったー! うちらも自由行動ありなんて、ハイトってば太っ腹じゃん!」
「カトレス、あんまりはしゃがないの。ハイト、自由時間を許可してくれてありがとう。お姉ちゃんが油断しないように、ちゃんと見ておくから」
双子は見た目こそ瓜二つだが、正確は結構違う。
姉のカトレスはギャルっぽいというか、若い子って感じの性格で、私服もオシャレを積極的に取り入れる。
反対に、妹のクルスの方がしっかりとしていて、勢いで行動しがちなカトレスをフォローしており、どちらが姉なんだか、という感じ。
とはいえ、慎重な性格ゆえに一歩を踏み出す決断は苦手なようで、そういう時はカトレスが一歩を踏み出す、みたいな関係性だ。
「まずは最初の大きな街に行くぞ。そこで宿を取って数日滞在したら、東の山岳部方面へ向かう」
そこそこ緩みかけた空気に活を入れるため、目的地と方針をみんなに伝えると、返事と共にすぐに空気が真面目なものに変わる。
うん、みんないい切り替えだ。
リシアの教育の賜物だろう。
「そういや、カトレスもクルスもだいぶ強くなったみたいだし、俺もうかうかしてられないな」
忙しくて毎日訓練に参加できていたわけじゃないが、俺も時折混ざってリシアの訓練メニューをこなしていたので、兵士や騎士たち、他の幹部の実力はおおよそ知っている。
ここ最近で急激に実力を付けてきたのがカトレスとクルスだ。
個人技はさすがに幹部連中のうちの最下位になるが、一般の兵士や騎士程度は簡単にあしらえるほどの実力となった。
冒険者基準で言えば、A級下位のレベルはほぼ超えつつあるくらいだ。
リシアの教えから自分に合った武器の扱いを学び、それぞれ祈術と魔術による新たな戦術を組み込み、それを物にしつつある。
もう半年もすれば、幹部のランキングが変わるかもしれない。
現状では、トップタイが数人いる状態なので、そこに一石を投じる可能性すらあるくらい。
将来が楽しみだという思いもあれど、俺もうかうかしていると追い抜かされかねないので、より自己鍛錬に邁進しないとな。
これでもS級冒険者の看板も背負ってる事だし。
「街が見えてきたな。宿を取ったら担当以外は自由行動して良し!」
「よーし、今夜は飲むぞ!」
「飲みすぎて2日酔いになるなよ!」
あまり馴染みの無い連合国という環境で、ちょっとした旅行気分もあるのか、みんなテンションが高い。
羽を伸ばす分にはやりすぎなきゃ別にいいし、その土地ごとの銘酒だとか、そういうものもあるだろう。
何なら、俺もそういうものを探してみようと思ってうし。
前回は政治的なやり取りが多かったが、今回はそういう面倒な制約が殆ど無いので、密かに俺も羽を伸ばそうという思いもある。
ちょうど、秋の始まりくらいの時期なので、色々と名物を巡るのも悪くないだろう。
未知なる名物に思いを馳せながら、俺は街に入る手続きに入るのだった。
新たなワケありの登場もありますが、今回のワケあり13人目は登場からあまり細かい描写の出ていなかった双子の性格諸々も掘り下げていきます。
メイン目標:ワケあり13人目の加入
サブ目標:カトレスとクルスの周辺掘り下げ
といった感じで進めていく予定です。
(なおあくまで予定ですので急遽変更がかかる場合があります)




