ワケあり12人目⑬
「……またすごい量の素材要求だな」
シャルにあれこれ根回しをして、連合国へ遠征に行く計画を進めていく中、いつも通りに決裁していた書類の中から、アメシスが今後の魔道具作成のために申請してきた素材の一覧表を見て顔をしかめる。
入手が不可能という事も無いが、結構な手間がかかる上に量が多い。
金に物を言わせて購入するにも市場にそこまで数が出ない物もあるので、結局は自分たちで狩りに行く必要がある。
とはいえ、前倒しで仕事を進めておく必要がある以上、俺は屋敷から離れられない。
とりあえず、リシアを呼んで考えるとするか。
俺は使用人を呼ぶ鈴を鳴らし、来てくれた使用人にリシアを呼び出すよう伝えて書類の続きを捌いていく。
すると、程なくしてリシアが執務室の方に来てくれた。
「呼んでいると聞いたが、何か緊急事態でもあったか?」
つい先ほどまで訓練に勤しんでいたのだろう。
訓練用の動きやすい服装で、顔にうっすら汗を浮かべている。
「魔物素材が入り用なんだけど、買い揃えるよりも自分たちで狩った方が早いものが結構あってな。俺はちょっと執務から手を放せそうにないから、騎士団の訓練がてら、このリストにある魔物の素材を必要量集めてきてほしい。国内の通行権限とかはこっちで申請しとく」
「なるほど、心得た。戦力としてカナエとジェーンは数えても?」
「数えていいけど、なるべく使わない方がいいだろうな。あいつらが出ると他の訓練にならないだろ」
「無論だ。だが、あの2人がいるといないでは不測の事態をどこまで考慮するかにかなり差が出るからな」
「確かに、それはある」
打ち合わせをしてから、リシアは準備のために執務室を後にした。
これから準備に入って、明日には出発する事だろう。
これでアメシスの素材申請に関してはOK、と。
「ハイトさん。抜き打ち視察の件ですが」
リシアとの打ち合わせを終えたタイミングを見計らって、今度はシャルが声をかけてくる。
何か不備でもあっただろうか?
「最終的にそのまま連合国まで行かれるとの事でしたが、同行者は誰を連れていくおつもりですか?」
ああ、俺の身辺回りの心配ね。
言うても俺は自分で全部の事は一通りできるし、あんま大掛かりに人を連れて行く意味も薄いんだよな。
さすがに護衛の兵士すら連れて行かないっていうのは、形式的にも恰好が付かないけど。
兵士20人くらいと直属の護衛にカトレスとクルス、くらいで良さそうな気がする。
情報関連は各地に暗部のエージェントがいるから、コンタクトはいくらでも取れるし。
わざわざエスメラルダ本人を連れて行くほどじゃないだろ。
「カトレスとクルスは連れてく。あとはフリスが自動的について来るし、護衛は追加で兵士を少し連れて行けば充分だろ。別に威圧したり荒事をしに行くわけじゃないしな。念には念を入れるなら、追加でカナエでも連れて行けば解決だろ」
まあ、そのカナエはこれから魔物討伐に向かうんだけども。
実際に必要であれば、明日の出発までにリシアに話を通しておけばいくらでも融通は効くし。
「そこまでお考えでしたら私からは何も言う事は無いですね。エスメラルダさんを連れていかないのでしたら、私の方で動かしても?」
「ああ、自由にしていいぞ」
シャルがエスメラルダを借りたいという事は、彼女なりに何かしらの優先タスクがあるんだろう。
必要があれば俺に細かい話を上げてくるだろうから、わざわざ俺に細かい話を上げるほどじゃない、っていう程度の案件なんだろうな。
「……レイネスタの鍛冶方面は新設の鍛冶場で効率大幅上昇、と。農具関連は弟子とかに打たせて、本人は王城に卸す装備に取り掛かって、年内には規定数を納品予定。となると、防具関連は早めにサイズ表を提出してもらう必要があるから、陛下に連絡しておかないと」
執務に戻るとレイネスタからの報告書があり、鍛冶関連の体制が大きく動き、効率が良くなったおかげでかなり現状のタスクを前倒しできたとのもの。
この辺りは陛下に連絡を取って、向こうの予算状況とかの確認をしておこう。
陛下は当初の予定では、少しずつ装備の更新をかけていく予定でいたっぽいし、予算回りの状況確認を取っておこう。
レイネスタの打つ装備は、数打ちでもそこそこいいお値段になる。
いくら王家といえども、税金から財源を取っている以上、無限の資金があるわけでもない。
「……商会がいるな」
あれこれと書類を見ていると、結構無駄がある事に気付く。
支出と収入、それそのものは別に間違ってもいないし、変な所も無い。
だが、領収書関連が個人だったり部門だったりで、バラバラになるのもそうだが、仕入れ先もそれぞれ違う。
中間に商会を挟んで、一括化した方が決裁の手間も減るだろうし、これから諸々の事業がスタートしていく事を考えると、貴族家直販だと手間がかかりすぎる。
「シャル、うちと提携してくれそうな商会はあるか?」
「声をかければ有象無象から有名所まで、いくらでも集まりますよ。ですが、リベルヤ家の御用商会となると、それなりの規模と品位が求められます」
話をしている感じ、シャルとしては商会を間に挟む必要は感じていなかったらしい。
いつも未来を見通しているような采配をしている彼女からすると、少し珍しい気がする。
「とはいえ、今後の展開を考えると、侯爵家と継続的に取引ができるような大きな商会は、既に他の貴族家と提携している所ばかりですので、少々難しいですね。かといって資金力や実力の無い中小の商会では……」
現状の商会でリベルヤ家の要望を叶えられる所は、無いわけではないが、既に他の貴族と組んでいる所ばかり。
とはいえ、中小の商会だと諸々の事情で難しい、と。
これ、もしかして商会の必要性を感じてなかったわけじゃなくて、シャルでも条件に合う商会を見つけられていなかったという事では?
「資金力に関しちゃ融資でどうとでもなるけど、信用とか実力を考えて任せられるやつがいないな……」
在野の個人商人とかを探した方が可能性があるかもしれない。
いっそ、国外にも伝手があるような商人だと、今後の話が大いに進みやすいだろう。
これはじっくり育てるという事も考えると、最優先で進めるべきだ。
これに目途を付けないと、いつまでも俺の仕事が減らない。
「シャル、明日から少しずつ個人の商人を探し回る」
「それで見つけられるといいですが」
「見つけるんだよ。じゃないと、俺とシャルの仕事が一生減らない」
多分、この諦め気味の反応からしても、シャルはこれまで商会や商人を探したのだろう。
シャルで見つけられなかった人材を、俺が見つけられるのか、と問われれば、必ずとは言えない。
だが、俺には鑑定という武器がある。
俺にしか見つけられない人材は、絶対にいるはずだ。
そう信じつつ、とりあえず明日の行動時間を得るために、俺は目の前の仕事に邁進するのだった。
アメシスの信用を得る→完了
今後の取引回りを円滑化するために商会か商人を見つけよう→NEW!
タスクは消化しても後から後からやってくる(白目)。




