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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり12.1人目

今回はアメシス視点です。

「おや、思ったよりも早く来ましたね」


 ハイトとの面談を終えた日の夜。

 ワタシは彼の正妻ちゃん、シャルロットの元を訪れていた。

 夕食を終えてから彼女の居室を訪ねてみれば、まるで予想していたかのように部屋に招き入れてくれる。


「お邪魔するよ、っと」


 彼女の部屋の中は、全体的に質素というか、殺風景なものだ。

 ベッドに、書き物をする用の机と椅子、小さなソファーといった最低限の家具。

 窓際に花が飾られている以外、女の子らしい部分は無い。

 

「ずいぶんとすんなり部屋に招き入れるものだね。ワタシがその気なら、この場で君を殺しにかかるかもしれないのに」


 手近なソファーに座りつつ、警戒心が薄すぎないか、と問いかけてみれば、彼女は淑女の笑みを浮かべて返してくる。


「奴隷契約者に、そんな大それた事はできないですよ。契約者に連なる者に手出しをしようとした時点で、奴隷魔術の強制力が働きます。それに、これでも私、結構人を見る目はあるんですよ。詳しい事情は知りませんが、あなたが何らかの理由あって、普段から酔っ払いのフリをしているのも、その態度がハイトさんを試しているものなのも、全部知っています」


 全部バレている。

 ハイトには確かに全てを打ち明けたけれど、事細かに彼女に話す時間は無かったはず。

 つまり、本当に彼女は私の言動の真実を見抜いていた、と。


「……そりゃ参ったね。じゃあワタシがこうして君に会いに来た理由もお見通し、って事かい?」


「ええ。ほぼ正確に理解しているはずです」


 会いにきた理由もわかるか、と問えば、彼女は迷わずほぼ間違い無いだろう、と返して見せる。

 なるほど、これは相当な傑物だね。

 ハイトが全幅の信頼を置く理由がよくわかった。

 というか、彼の女性関係を一手に引き受けるには、これくらいの能力が無いとやっていられないのかも。

 逆に言えば、彼女が統率を取るのなら、そうそう問題が起きる事も無さそうなので、逆に安心できるというもの。


「じゃあ、当ててみてもらおうかな」


「ふふ、あなたもハイトさんに惹かれたのでしょう? そういう顔をしています」


「なるほど、顔に出てたか……こりゃワタシも焼きが回ったね」


「いえ、顔には出ていませんよ。あくまでほぼ人にわからない程度には。ただ、私は人の微細な変化がすぐにわかるので」


 結構擬態能力には自信があったんだけどね……。

 彼女曰く、ほぼ人にわからない程度らしいけれど。

 逆に言うのなら、私の擬態を見抜けるほど、観察力が高いという裏付けにもなる。


「どちらにせよ、ワタシ如きでは君の潜在能力は測れない、って事はわかったよ」


「うふふ、お褒めいただき光栄です」


 うん、強かな人だ。

 強い精神に、相手の隙を見逃さない狡猾さもある。

 人の上に立つ才覚も充分すぎるくらいあるし、さすがは侯爵家を纏める裏の主人といったところか。


「そういえば、ハイトさんからあなたの研究室を作るという話は聞きましたか?」


「聞いたよ。必要な設備なんかも伝えてある」


 昼間の面談の時に聞いた話だ。

 もっとも、彼女から予算許可が下りなければ机上の空論なのだけど。


「なるべく早く施設の建設をさせますから、頑張って投資の元を取らせて下さいね。あなたの魔道具開発には期待していますよ」


 にっこりと笑みを浮かべた彼女の顔は、貴族家としての利益を追求するもの。

 年齢に似合わぬ凄みを感じて、思わず表情が引き攣る。

 おかしい。

 ワタシだって200年以上生きているというのに。

 それなりに理不尽な経験もしてきたはずなのに、それよりも彼女の笑顔の方が怖く感じる。


「もちろん。ハイトには拾ってもらった恩もあるしね。それに、将来的な事を考えても資金はあるに越した事は無いだろう?」


「その通りです。きっと、将来的にはたくさんの資金が必要になりますから。その辺りの事を理解して頂けているのはありがたいですね」


 彼女の言う将来、というのがどこまでを見据えているのかはわからない。

 もしかすると、ワタシにも及びの付かない深謀深慮があるのかもしれないし、比較的近い未来の事かもしれない。

 けれど、この短い時間でリベルヤ侯爵家の要は彼女だとわかった。

 もちろん、中心はハイトだ。

 けれど、多くを支えているのは彼女、シャルロットだ。

 ここが崩れれば、リベルヤ家は容易く崩壊する。

 うん、今の開発品と平行して、彼女を守るための備えもしておくべきだろう。

 今のままでは、彼女に何かあった時に色々とまずい。

 ハイトもその辺りは色々と手配しているだろうけど、ワタシは魔道具師としての視点から、彼女を守らないといけないね。


「それじゃ、用事も済んだし、そろそろ失礼するよ。君と話して、新しい魔道具の構想も浮かんだしね」


「それは光栄です。では、おやすみなさいませ」


「ああ、おやすみ」


 シャルロットの部屋を出て、自分の部屋に戻りつつ、私は彼女を守るための魔道具の構想を纏めていく。

 レイネスタの協力もそうだし、できれば腕のいい細工師、宝石職人の協力も欲しい。

 魔術式を刻む事そのもの、あるいは設計図面を引く事はできても、ワタシは全ての加工を自分でできるわけじゃない。

 むしろ、魔道具師としてはかなり自分でできる部類だと自負してはいるけど、やはり細かい部分では専門の職人に協力してもらった方が最終的な品質は上がる。

 金属だけならレイネスタがいれば事足りるだろうけど、彼女も自分の専門以外はそれなりだ。

 ハイトには、今度シャルロットの身の安全を守りたいなら早急に宝石職人と細工師、服飾職人は揃えるべきだと進言しておこう。


「とはいえ、最終的な備えよりも今の備えだね」


 部屋に戻ってから、ワタシは設計図面を引き始めるのだった。

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