ワケあり12人目⑤
「一般の奴隷商を見に行くか」
特殊奴隷は思惑が外れた形だったので、それなら一般の奴隷商に行けば人材が確保できるのではないだろうか、と思い立ったのは、アメシスを譲り受けた翌日の朝。
滞在期間は今日までなので、どのみち帰るまではヒマだったし。
どのように過ごすかは未定だったのだが、街の方に出るなら中枢統制局の方で案内を出す、とはネレス代表が言っていた。
丸1日を奴隷商で過ごす事は無いにしても、連合国の首都観光がてら、奴隷商を2~3件くらい覗いて歩くのも悪くないだろう。
「ワタシは連れてってくれるのかい?」
目覚めの1杯とばかりにワインボトルをラッパ飲みしているアメシスが、こちらに声をかけてくる。
「1人で呑みたいなら呑んでくれててもいいぞ。一緒に来たいなら連れてくけど」
まあ、仮にアメシスが残るのなら、誰かしら見張りというか安否確認者を付けておく必要はありそうだが。
一緒に来たいというのなら、その手間も省ける。
「じゃあ一緒に連れてってもらおうかな。お酒は控えた方がいいかい?」
既に呑んでるヤツが何を言ってるんだ、とアメシスの謎の気遣いを聞きながら思ったが、移動中も酒をラッパ飲みしている同行者がいるというのも絵面としては結構ヤバい。
とはいえ、アメシスの場合、変に注意しないで自主性に任せた方が良さそうな気さえする。
「好きにしろ。どうせ止めたって呑む時は呑むだろ」
「おや、ワタシの事を良くわかってるじゃないか」
ジト目でアメシスを見ながら混ぜっ返してみれば、彼女は上機嫌そうにケタケタと笑う。
相変わらず、掴み所が無いというか、考えてる事がわかりにくいというか。
「好きにしてもいいけど、周りに迷惑をかけるなよ」
「りょ~かい」
そんなこんなで、朝食を終えてから、俺たちは中枢統制局に案内人を付けてもらい、連合国観光に出た。
やはり名物は工芸品の店で、その他には豊かな自然を生かした牧場なんかもある。
馬や牛、羊や豚といったメジャーな畜産動物の他に、魔物系統の飼育も行われているようだ。
水棲馬や二角馬辺りから始まり、小型~中型くらいまでの飛竜なんかもいて、多種多様な生物が多い。
「それでは、こちらが首都で1番大きな奴隷商でございます」
案内人に連れられて、首都で最大規模という奴隷商館へと足を踏み入れる。
首都最大、というだけあって、建物の大きさは王国で言う伯爵の屋敷クラスだ。
中に入れば、案内人が店のスタッフに声をかけているのが見えた。
恐らくは、大事な客人がから丁重に扱え、とでも言っているのだろう。
「それでは、ご案内いたします。ある程度こちらで希望をお聞きしてから絞り込んで連れて来ますか? それとも直接奴隷をご覧になりますか?」
店のスタッフから、検索して連れて来るか、自分で直接見るかを問われ、俺は直接見る事を選択。
奴隷のいる場所を案内されながら、奴隷たちを鑑定し、見どころのある者は後で面談させてもらえるよう、スタッフに控えておいてもらう。
さすがに首都最大規模と謳うだけあって、その人数もさる事ながら、人種も様々だ。
エルフを始め、ドワーフ、獣人、人間といった種類から、半人種、と呼ばれる種族たちもいる。
半人族、というのは身体のおおよそ半分が人間ではない種族の事を示す。
有名なのは人魚族だろうか。
それ以外だと女蜘蛛族や蛇女族なんかが有名どころだな。
…
……
………
「いやー、中々に豊作だったな」
「そうですね。思いの他、薬師や医学の経験を持つ者が多かったのは嬉しい誤算でした」
結果的に、この奴隷商に来たのは正解だったと言っていい。
農民から文官、使用人、兵士など、ありとあらゆる人材が広く大量に集まった。
あまりに豊作だったものだから、購入金額は相当になり、連合国から貰う予定だった宝飾品の分を支払いに回し、それでも足りなくなって持参してきた金に手を付けたほどだ。
人数にして、250人を購入。
かなり大口の取引になったのだが、連合国側が俺たちの身元を保証してくれた事、それから殆どを即金で出した事から、奴隷商の店主はホクホク顔である。
俺たちも探していた人材が多く補充できて、ホクホク顔だ。
これでかなり色々なプロジェクトの目途が立つ。
人材不足で足踏みしていた病院や学校も、とりあえず試験的にラウンズだけでも動かしていけるだろう。
あとは実際に動かした結果で、改善点を洗い出していけばいい。
「あとは帰りの馬車を用意しておかないとな」
唐突に奴隷が増えたので、250人を乗せる馬車の手配もしなくてはいけなくなった。
最初は馬車と馬を買っていくつもりだったのだが、案内人に貸し馬車のを案内されて、そこに頼む事に。
貸し馬車というのは、御者と馬車のセットで遠方に人や物を運ぶサービスだ。
配送が終われば、馬車と御者は帰っていく。
便利だが、御者と馬車の帰り道分の料金も必要なので、なかなかに高価である。
それでも、1から馬車と馬を買い揃えるよりは安かったので、最終的に紹介された業者に頼む事に。
10人乗りの馬車を25台の契約だったので、結構な額になったが、必要経費だ。
一応、もっと大型の馬車を使えば台数は減らせたのだが、それはそれで街道とかで面倒が起きやすくなったりする。
あとは単純に大型の方が乗り心地が最悪なので、取り回しの良さと乗り心地を取った形とも言えるな。
これだけの規模になると護衛なんかも必要なので、リシアに王国へ向けて急ぎの手紙を出してもらい、国境にリベルヤ家の軍を迎えに寄越すよう要請しておく。
今日出発で、国境までは1週間程度かかるから、準備は余裕で間に合うだろう。
連合国内は中枢統制局の方から護衛を出してくれるという事で、至れり尽くせりである。
「よし、あとは帰るだけだな」
昼食を終えてからは、王国に向けて出発なのだが、準備で色々と時間がかかるかと思いきや、スーパーメイドのリリスさんのおかげで、昼食後1時間もせずに出発できた。
本当に周囲がしごできな人ばかりである。
人に恵まれたなあ、と思いつつも、俺はみんなに愛想を尽かされないように頑張ろう、と内心で密かに決心し直すのだった。




