ワケあり12人目③
「では、本日は特殊奴隷をご案内させて頂きます。多くは貴族出身で、何かしらの理由で奴隷となった者たちです。そのため、元々の値段が高く、事情によっては信用できる方にしか販売できないので、特殊奴隷とされています」
恙無く歓待の晩餐を終えた翌日。
特殊奴隷の確認に行くという事で、ネレス代表が付けてくれた担当の局員が俺たちを案内してくれている。
概要を聞きながら、中枢統制局内の特殊奴隷たちの暮らしているという区画に向かった。
「こちらが中枢統制局内の特殊奴隷生活区画になります」
俺たちが案内されたのは、中枢統制局の屋上。
地上からでは全く様子が見えなかったのだが、屋上には大きな屋敷と生活スペースがあり、特殊奴隷たちが貴族に近い暮らしをしている事が見て取れる。
さすがに1人1部屋とかだとは思うけど、奴隷の待遇としては相当なものだろう。
「特殊奴隷の方々はこちらの屋敷で共同生活を送っています。とはいえ、貴族出身がほとんどゆえに自活能力が無い方々なので、ある程度身の回りの世話をする人員も置いています。一応監視も兼ねていますが、物理的に逃走できる場所ではないので、ほとんど形骸化していますね。では、こちらへ」
案内に従い、屋敷の中へと入る。
すると、大広間の中央に面談用のスペースが作られているのが目に入った。
「現在、ご紹介できる特殊奴隷は10人です。さすがに全員をお渡しする事はできませんが、気に入った方がいれば仰って下さい。予定褒賞内であれば何人でもお連れ頂いて構いませんので。では、順番にご紹介しますので、少々お待ち下さいませ」
順番に連れてきてくれるようなので、メインで面談を行う俺が面談席につき、シャルたちは後ろに控える形に。
程なくして、担当局員は1人のエルフの女性を連れてきた。
見た目は結構長身で、肉付きが良く、眼鏡をしている。
あまり見た目には気を遣っていなさそうで、背中くらいまでの淡い金髪を雑に束ね、飾り気の無い麻のシャツとパンツに奴隷の首輪が良く目立つ。
あと、エルフらしく色白だが、なぜか赤ら顔で目の焦点が微妙に合っていない。
「まずは1人目。貴族ではありませんが、連合国でも有名な魔道具師のエルフでございます。幸いにも死人は出ていませえんが、実験にて多大な被害を出し、その補填ができずに奴隷となりました」
「うぃっく。ワタシの事買う物好きなんていないだろう? 時間の無駄だと、ヒック、思うけどね~」
簡単な紹介で、このエルフが生産部向けなのはわかった。
あと、酔っ払いなのもわかった。
これ、トップバッターにしては随分と個性的だな?
「こら、自己紹介くらいしろ」
さすがに目に余ったのか、少し強めの口調で局員さんがエルフの女性を窘める。
「しょうがないな~、うぃっく。ワタシはアメシス・アコルニア。自他共に認める、酒呑み魔道具師さ。ワタシのようなしょうもない奴隷に払うお金はもったいないよ~?」
酔っ払い特有のとろんとした目で、眼鏡の奥から俺を見るエルフの女性――アメシスは、酔っ払いでありながらも、目の奥は理知的な光がある……ように感じた。
どこか、わざと買われないように振舞っている、そんな気配だ。
何かを感じて、俺は酔っ払いエルフの女性、アメシスを鑑定。
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アメシス・アコルニア
244歳
種族:エルフ
身長:172センチ
体重:63キロ
状態:ほろ酔い
生命力:18
精神力:20
持久力:15
体力:10
筋力:6
技術:16
信念:20
魔力:20
神秘:20
運:8
特殊技能
・知識蒐集
・並列思考
・高速計算
・素材鑑定
・魔道具発明
・高速作業
・製作熟練(魔道具)
・アルコール耐性(弱)
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うん、普通に有能。
戦闘系の技能は無いけど、多分それなりにやれる方だろうし。
俺の中ではだいぶ採用寄りだ。
「少し2人で話さないか?」
後ろのみんなに目配せをして、許可を得てから俺はアメシスに切り出す。
局員さんが許可してくれるかどうかはわからないが、多分2人きりになれれば自分の考えに確証が得られるだろう。
「2人きり、ですか」
「5分くらいでいいんですが」
2人きりで話そう、という俺の提案に、局員さんは少し困った顔に。
とはいえ、立場的にこちらの方が少し強いので、少しの逡巡の後、局員さんは別室ではなく他の人が離れる形でなら良しと許可を出してくれた。
他の人たちが離れたのを確認してから、俺は魔術で自分とアメシスを風の薄膜で覆い、音を遮断。
アメシスは、恐らく俺が魔術を使った事に気付いたのだろう。
眼鏡の奥の目が僅かに動く。
「さて、これで2人きりだ。お互いに隠し事は無しといこう」
「こんな酔っ払いを口説きたいのかい? 君も物好きだね~」
見るからに酔っ払いのテンションでこちらを見るアメシスだが、眼鏡の奥の目は笑っていない。
「あまり時間も無いし、こっちのメリットを提示しようか。俺の頭の中には今、この世界に無い魔道具の構想がいくつかある。まあ、いずれは誰かが開発するかもしれないが、現時点では誰も知らないだろう。この提案に魅力を感じるのなら、そっちも本気で語れ」
「……どこまでが計算で、どこまでが天然だ? 全く、随分とワタシの欲しがりそうなものを把握してるじゃないか」
先ほどまでの酔っ払い状態はどこへやら、アメシスは表情はそのままに、声だけ低くして素の状態っぽい声を出す。
普通よりは少し低めの声で、ともすれば冷たい印象すら覚える。
「自分から悪しざまな態度を取る理由はわからないけど、うちに来たら予算も潤沢に出すぞ。何せ、使いきれない資産が金庫にたくさん溜まってるからな」
「……そこまでして、ワタシを欲しがるなんて、君は相当な変わり者だね」
まあ、変わり者という自覚はある。
そもそもうちのクセつよ家臣団も俺が集めたわけだし。
「自覚はある。で、どうする? 千載一遇のチャンスを物にしないで無駄にするのか?」
対話を始めてそろそろ5分が経つ頃だと思ったので、俺は少し強めにアメシスに問いかけた。
「……負けたよ。ワタシの事、随分とわかってるね」
とりあえず、口説き落とせたかは微妙だが、俺には興味を持ってもらえたっぽい。
ちょうど、視界の端で局員が動き出すのが見えたので、俺は即座に風の薄膜を解除。
「ワタシを選んだからには~、うぃっく。い~っぱいお酒を吞ませてもらうよ」
先ほどの真面目な雰囲気はどこへやら。
アメシスはまたただの酔っ払いムーブを開始。
とりあえず、うちに来てもいいとは思ってもらえたようなので、ひとまずは良しとすべきだろう。
彼女が生産部に入ってくれれば、リベルヤ家の経済力は更に上がる事間違い無しだ。
色々と実用化したい日本製品もあるし、最初に何を作ってもらおうか悩むな。
エアコンも欲しいし、電子レンジとかエンジン関係も欲しい。
1番最初っから大当たりを引いた気がして、俺は内心ホクホクで次の人が案内されてくるのを待つのだった。




