ワケあり11人目㊴
長かった……ここまで長かったぞ!
「とりあえず、首は繋がったな」
レイジュ様の事を陛下たちに打ち明けて、無事に事なきを得た夜。
俺は執務室で簡単な書類を片付けながら1人ごちた。
とりあえずは、問題が起きない限りゆっくりできそうなのは救いか。
差し当って急ぎの案件は、直近で編入されるであろう領地に、うちのやり方を馴染ませていく事。
とはいえ、まだどの領地を与えられるかは完全に決定はされていない。
南方面、という事だけは決定しているので、先行して暗部を調査に出している。
正式に決定次第、細かい調査を入れて不正役人なんかを炙り出す事になるだろう。
あとは、連合国から通行証が届いたら、一度特殊奴隷の選定に行くのが決まっている予定か。
こっちは連合国次第だから、臨機応変に対応する事になるな。
選定の時、俺が行くのは当然として、人事関係を取り仕切ってるシャル、各部門の長であるエスメラルダ、リシア、リリスさん、オルフェさん、レイネスタは同行させるべきだ。
それに、学校や病院関係の人員集めもしたいから、とにかく欲しい人材はたくさんいる。
「そういえば、向こうで拾ってきた傭兵団は上手くやれるのかね」
ジェーンが拾ってきた、500人程度の傭兵団。
とりあえず聞いている話では、リシアによる調きょ、もとい訓練を行ってから、人員の振り分けやら役職の割り振りを考えるって言ってたな。
まあ、リシアなら上手くやるだろう。
戦乙女傭兵団の非戦闘員の方は、メイドとして半分くらいをリリスさんが、もう半分は医務官兼病院スタッフとしてオルフェさんが引き取った。
こちらもそれぞれ基礎的な教育の後、適正を見て配属を決める。
うーん、領地が広がる事も考えると、教師と病院スタッフはまだまだ足りないな。
孤児院方面も色々手出ししてるから、そっち方面も人がいるし。
求人も出してはいるけど、結構求める物が多いから、なかなか頭数が揃わない。
見込みがあって育成に回してる人はたくさんいるけど、即戦力はやっぱり少なくて困る。
「……おっと。いかんいかん。思考が脇に逸れたな」
色々と領主として手を出している事業をあれこれと考えていたら、手元の書類を捌く手が止まってしまっていた。
普段は色々喋りながらも、適度な所でシャルが意識を戻してくれるから、ちょっと油断してたな。
本当は、今日はもう休むだけなんだけど、何となく眠れそうになくて、簡単でも書類仕事で頭を使えば眠くなるかなと思ったけど。
結局、あれこれと真面目に考えて、頭がより冴えたような感じがするな。
とはいえ、今からベッドに行ってもギンギンに目が冴えてるから、眠れるはずもない。
「……ん? 開いてるぞー」
とりあえず、疲れるまで書類仕事と格闘するか、と考えていたら、控えめに執務室の扉をノックする音が。
声をかけてくるわけでもなかったので、とりあえず入室を許可すると、ゆっくりと扉が開く。
姿を現したのは、レイジュ様だった。
「こんな時間までお仕事なんて、ハイト様も頑張りますねー」
恐らく、あとは寝るだけなのであろうレイジュ様は、薄手のワンピースを纏っているだけのシンプルな姿だ。
シンプルな姿だけに、その身体が6歳からどれだけ成長したのかがよくわかる。
王妃様に良く似た顔立ちに、抜群のプロポーションの身体。
色濃く王妃様の血筋が出ているな、という感じ。
とはいえ、武闘派な王妃様は鍛え上げられた肉体に、女性としての柔らかさが追加された感じの身体つきだったが、レイジュ様は精霊魔術師という事もあって、女性としての柔らかさが前面に押し出された感じの身体だ。
16歳という年齢にして、恐ろしいまでの色香を誇っている辺り、さすが王妃様の子だと思う。
「何だか寝つけそうになくてな。いっそ仕事でもして疲れれば寝れるかと思ったけど、逆に頭が冴えて完全に仕事モードだ」
自嘲しながら手元の書類を捌いていると、ジーっとレイジュ様がこちらを見ているのに気付く。
何かを訴えたそうな、そんな感じの目線だ。
「……何か俺に用事か?」
わざわざ夜中に俺の部屋を訪れた辺り、他人がいると話しにくい内容の相談でもあるのだろうか。
そんな感じで問い掛けてみれば、レイジュ様は困った表情を浮かべた。
「……やっぱり、わたしはまだ子供だと思いますかー? 自分で言うのもなんですけど、結構男性が好む身体つきだと思うんですよー」
さすがに言葉にされれば、俺でもレイジュ様がどういう意図で夜に俺の元を訪れたのかは理解できてしまう。
いや、考えなかったわけじゃないんだ。
けど、わざと意識から排除してたんだよな。
あ、こら!
自分で胸を持ち上げるんじゃない!
とても眼福……じゃなくてはしたないでしょ!
「……なるほど。そっちの意味だったか。それなら勘違いしないように言っておくけど、わざと仕事に思考を集中して、襲い掛からないように理性を保たないといけない程度には、魅力的だと思うぞ。けど、シャルともまだそっちの関係は持ってないし、成人してから正式に式を挙げた後にって決めてるんだ。他の嫁たちも同じだから、今は我慢してくれ」
まあ、リリスさんという例外はいるけど、彼女とも契約の1件以降は交わっていない。
あれは色々とのっぴきならない事情があったから例外だが、それ以外はみんな平等だ。
それは他のみんなにも話してある。
だから、ここでレイジュ様を特別扱いするわけにもいかない。
「……なるほどー。他の皆さんがハイト様を好きになるはずですー。せっかく姉様たちを出し抜けたと思いましたけど、結局スタートラインは変わらないんですねー」
残念そうではあれど、レイジュ様は自ら胸を強調したりするのをやめてくれた。
ふう、何とか俺の理性は耐え切ったぜ。
「悪いな。それと、俺の事を様付けで呼ばなくていい。どうせ結婚して一緒になるんだから、変な気は遣わなくていい。まあ、公式の場だけ整えてくれればいいさ。俺も、今日からレイジュって呼ぶから」
ちょっと気持ちが先走った感はあるけど、レイジュも俺の事を好いているからこそ、こういう行動に出たんだろうし。
お互いに気楽に話そう、と言った途端に、彼女はポカンとした表情を浮かべた後、苦笑いを浮かべた。
「ハイト、だとしっくりきませんのでー、ハイトさん、って呼びますねー。わたしの敬語はもう小さい頃から慣らされてしまったので、このままでー」
「それが気楽ならそれでいい。まあ、シャルが俺の嫁はたくさん増やすって公言してるから、きっとこれからも増える。けど、俺は極力全員を平等に愛そうと思ってるから、色々我慢してもらう事も増えるかもしれない。でも、そこはみんな平等だから頼むわ」
「わかりましたー。それじゃ、このまま色仕掛けをしてもハイトさんはオチそうもないので、今日は部屋に戻りますねー。もうちょっと先みたいですけど、その時を楽しみにしてますよー」
本来の目的は果たせない、と判断したレイジュは、潔く部屋に戻って行った。
しかし、去り際の言葉が、俺の思春期の心を搔き乱す。
その時を楽しみにしてる、って事は……。
誰もいなくなった執務室の中で、ごくりと唾を飲む。
くそ、想像しちまったじゃねえか!
当然、俺の俺がすっかり元気になってしまっている。
結局、この日は別の意味で夜眠れなくなるのであった。
これで長かったワケあり11人目は終了です。
ちょっと長いエピソードになってしまいましたが、実験的にちょっとした戦争っぽい内容を扱ってみました。
色々と作者的にも学びと挑戦のエピソードでしたね。
次回からのリベルヤ家はある程度平常運転に戻ります。
こんどはどんなワケありがやってくるのか、どうぞお楽しみに。




