ワケあり11人目㊲
キリのいい所まで書いたらちょっと分量多めになりました。
2026/7/28 王国地図を掲載しました。
あくまで現時点で決まってる部分なので歯抜けの所は未定です……。
「ハイトよ、此度もよくやってくれた」
報告会の時はおおよそ定番になりつつある陛下の執務室にて。
予定通り、帰還した翌日にお伺いを立ててみれば、その日中に来いと返事があったので、午後からヴァルキア代表と共に王城へ来た。
今回は来客もあるから正式謁見仕様だと思って、俺もヴァルキア代表もかっちりと正装を着込んでいるのだが、当の陛下は普段通りで、来ているものこそ上質ではあるが、その装いは幾分かラフなものだ。
「ヴァルキア殿も息災のようで何よりだ」
陛下サイドは王妃様と側妃様、そして陛下としっかり勢揃いしている。
しかし、王妃様はいつもの影仕様の服装だし、側妃様はそれなりのドレスこそ着ているが、こちらも貴族にとっては普段着のようなものなので、実質この場の全員が身内という扱いなのだろう。
「ウィズリアル陛下も直接顔を合わせるのは教国事変以来ですね。そちらもご壮健のようで何よりです」
そういえば側妃様はヴァルキア様の妹だから、ヴァルキア様も王国にとっては肉親のようなものか。
心なしか、挨拶も言葉こそ儀礼的だが、いくらか親愛の情が籠もっているようにも聞こえるな。
「イヴァキアも元気そうですね」
「おかげさまで元気にやっていますわ。お姉さまも此度はご無事に戦争を乗り切って、こちらも安堵いたしました」
姉妹同士で交わす挨拶も、お互いに気心知れた仲のものだ。
これ俺だけ場違いじゃね?
「さて、積もる話もあるだろうが、先にやる事はやってしまわねばな」
このまま陛下たち一家で和気藹々と雑談が始まるかと思えば、全員が急に為政者の顔付きに変わった。
切替早っ。
「今回の戦において、連合国が負った損害と、援軍に来て頂いたリベルヤ伯爵の活躍はこちらに纏めていますので、ご確認下さい」
為政者の顔となったヴァルキア様は、持参していた封筒を陛下に手渡し、来客用ソファに腰を下ろす。
手渡された封筒を開封し、中身に目を通していくうち、陛下の表情がみるみる曇っていく。
「此度の戦の損害は、これほどか」
「はい。単純に連合国の全兵力半分以上を失い、西の国境砦は損傷甚大。その他、傭兵国が通ってきた道にあった街や村は例外無く酷い略奪に遭い、その機能を殆ど麻痺させています。1番酷い所は、民が全員殺された集落もあるくらいですので。国土に換算すれば、おおよそ3分の1が機能停止しており、大幅な国力低下は避けようがありません」
詳細な数字等はわからないが、聞こえている会話だけでも、連合国の被害は相当なものだとわかる。
これ、下手したらタイランの反乱があった時の王国以上の損害じゃね?
「して、ハイトの活躍により、傭兵国最大の戦力、バイレンド傭兵団は壊滅。戦の趨勢が決まり、傭兵国を殆ど討ち果たした。その後、復興支援においてハイトが目覚ましい活躍を見せ、特に街道整備や西側国境砦の修繕に尽力。人的被害以外は殆ど復旧済み、か」
まあ、親族としての繋がりがあるから助けるのは当然とはいえ、一応は国同士なので、無償での救援、というわけにはいかないだろう。
ただ、損害状況からして、連合国は差し出せるものが殆ど無い。
むしろ、これからも支援が必要なくらいだ。
ゆえに、陛下は難しい顔で唸っていた。
「支援物資等につきましては、期間を定めて借金という形で返済させて頂くしかないとして、リベルヤ伯爵への返礼については、こちらからいくつか提案がございます」
俺への返礼、という言葉に、陛下は唸るのをやめてヴァルキア様を見る。
まあ、結局は俺の功績がだいぶデカいから、それで陛下は唸っていたのだろう。
「まずは南側の沿岸部で産出される、真珠や珊瑚等の特産品による金銭的なもの。次に、様々な理由で相当な高値となった特殊奴隷の譲渡。どちらかをお選びいただけますよ。加えて、リベルヤ伯爵及びその関係者には、連合国内を自由に通過・移動できる許可証を発行いたします。こちらはどちらの返礼を選んでも付属いたしますので。此度の提案につきましては、現連合国代表ネレス・ハルモニカからも正式な代理人として交渉を任されていますので、これは連合国の総意とお考え下さい」
「ふむ……悪くない。ハイト、お前はどう思う?」
陛下からしてみても、悪くない提案だったようで、目に見えて表情が明るくなる。
お前は条件に納得できるか、と水を向けられたので、少しばかり考えてみよう。
まず、真珠や珊瑚等の特産品についてだが、大抵の宝石類は買おうと思えばいくらでも買えるくらいの貯蓄がすでにあるので、あまり魅力的ではない。
というか、金は持て余し気味なんだよな。
一応、領の公共事業だとかで使う予定は無いわけじゃないけども。
それにしたって気の長い投資になるし、結局はまた手元に金がだぶつくだけなので、経済的に良くない。
逆に、特殊奴隷の譲渡、という点はかなり惹かれるものがある。
今、領内では学校や病院等の公共事業が動き出そうとしているので、教師や医者といった人材はいくらでも欲しい。
それ以外にもリベルヤ家の個人的な生産系職人も欲しいので、特殊奴隷の譲渡というのはかなり嬉しいかも。
結局は実物を見てからになるが、値段が相当に張るという事は、高い潜在能力を持つ人材がいる可能性も高いだろう。
「こちらとしては特殊奴隷の譲渡がありがたいかなと思います。これからうちの領ではいくらでも人材が必要ですし」
「ふむ、であれば概ねヴァルキア殿の提案を受け入れよう」
俺が条件に頷けば話は早いもので、あれよあれよと陛下とヴァルキア様の間で話が進んでいき、30分もしないうちに契約書を交わしていた。
うーん、ベテラン為政者だけあってみんなしごできだなあ。
「後ほどハイト本人が特殊奴隷を確認しに行くであろうし、行くのは連合国側から通行許可証が送られてからで良いな?」
「それで問題ありません」
「では、そのように。許可証の発行を急がせますので」
内容が纏まってしまえば、話が纏まるのもあっという間だ。
というか、俺が絡む話があんまり無くて、いる意味あるの?
って感じになってたりする。
「さて、連合国側との話は纏まった。さて、次は王国側の褒章だ」
話が纏まってめでたしめでたし、と思っていたら、陛下はまだ逃がさん、とばかりにこちらを見ていた。
あれー?
今ので俺の褒章云々とか纏まったんじゃないの?
「今回の功績はハッキリ言って相当なものだ。よって、お前を伯爵から侯爵に格上げする。領地もそれ相応に広げる。ここまでは決定事項だ。で、領地を広げるに当たって欲しいものはあるか? もし考え付かないのなら、こちらで適当に見繕うが」
あー、爵位上げが確定で、領地も拡大するから、どの土地が欲しい?
って聞きたかったわけね。
んで、書面だとのらりくらりと逃げるから、この場で宣告して選べと。
鬼かな?
ようやっと伯爵領が纏まって軌道に乗り始めたってのに。
急に領地増えたらまた最初からじゃんね。
「欲しい領地ですか……ちょっと待って下さいね」
この場で決めろと言われてしまっては、考える他無いので、俺は脳内に王国内の地図を思い浮かべる。
中心部にある王都。
そのすぐ近く西隣にある伯爵領だが、拡大するなら北か南か西かの3択だ。
が、西は傭兵国という目に見える地雷があるので却下。
となると、北か南のどっちかなわけで。
北に領地が伸びれば海が近くなるので、やれる事が色々と増える。
が、手を付けるべき事が非常に多くなるので一長一短か。
南に領地が伸びれば連合国が近くなるので、今後の展開としては連合国絡みで動くとなればやりやすくなる。
最初に手を入れる必要こそあるだろうが、北に比べると手はかからないだろう。
今回選ぶべきは……。
「南側に領地を下さい。これから連合国絡みの動きも増えるでしょうし」
「南側だな。いい領地を見繕っておこう」
褒章の件もある程度纏まり、南側の王家直轄領で候補を選定したら、また選んでもらう、という形になった。
やれやれ、昇爵するのはいいが、ペースがなかなかにヤバい。
去年の夏前くらいに貴族になったばかりのはずなのに、気付いたら侯爵家だ。
それだけ功績のデカさがヤベーイという話なんだろうけど、領地を任される側としては大変な話である。
まあ、それだけ陛下から期待されてるって事だし、頑張るしかないか。
将来的にハーレムが大きくなれば、それだけ大きな経済基盤も必要になるし。
というか、俺が望まなくても多分シャルが勝手に大きくするだろうしね。
だったら、好いた女の要望に応えるのが男ってものだろう。
ハイトくん侯爵家に昇爵が決定しました。
これからのハイトくんの活躍にもご期待下さい。




