ワケあり11.7人目
今回はエスメラルダ視点です。
割とグロめ描写ありなのでご注意下さい
「あっちの方は無事に作戦通りみたいね」
部下が持ってきた情報から、ハイトたちは無事に部隊長を始末して、総団長との決戦に入ったとわかって、とりあえずは安心ね。
さすがにあの4人がかりで勝てないなんて事は無いでしょうし。
あとは……私の方の仕事ね。
ハイトの予想が外れていればいいけれど……まあ、それは無いでしょう。
「……いらっしゃい。ここがあなたたち2人の死に場所よ。お相手は、このエスメラルダ・ブラッドローズが務めるわ」
この戦争の総大将である、連合国代表とその娘を暗殺するには、絶対に避けて通れない場所。
そこに陣取っていた私の前に、ハイトの予想通り、バイレンド傭兵団の双子暗殺者がやってきた。
血染めの月の情報網を持ってしても、その存在以外は不明。
だからこそ、私の正体を明かす事で、功名心を刺激して釘付けにできれば、と思ったのだけれど。
「へぇ、有名な血染めの月の首領がこんな所にいるなんてね」
「てっきり、帝国で引き篭もっているのかと思っていたぜ」
フードを被っていて、顔はよくわからないけれど、男女の双子から発された声色から、私に興味を持った事は伝わってくるわね。
体格も似ていて、どっちがどっちかは見ただけじゃわからないけれど……些末な事か。
「風のウワサじゃ王国のガキに降ったと聞いていたけど、本当だったらしいな」
「まあいいじゃない。ここでこの女を殺せば、私たちは名実共にこの大陸最強の暗殺者よ」
声の若さからして、まだ10代の子供かしら。
まあ、敵対する以上は容赦はしないけれど。
「簡単に言ってくれるじゃない。あなたたちみたいなお子様に殺されるほど、私はヤワじゃないわ」
あえて挑発してみれば、2人から殺気が漏れ始めたわね。
感情を表に出してるようじゃ、暗殺者としては三流よ?
まあ、これから始末する相手に教える義理は無いけれど。
「僕たちを子供扱いするな!」
「ブッ殺す!」
即座に短剣を抜いて、襲い掛かってくる双子。
軽くあしらって終わり、といけばいいけれど、暗殺者同士の戦いは、裏のかき合い。
ちょっとした油断が死に繋がる。
だからこそ、常に最大限の警戒を以って殺す。
「来なさい。本物の暗殺者というものを教えてあげるわ」
右手で鞘を掴んで、人差し指の付け根辺りをわざと軽めに傷付けつつ、左手でブラッドローズを抜く。
最初から血を吸わせた私の得物は、準備は万端とばかりに輝きを放つ。
「クレオ、合わせろ!」
「レオ、いちいち指図しないで!」
お互いに反目するような言動をしていても、その動きは洗練された連携で、恐らくは男の子の方が先制攻撃をかけてきたかと思えば、その攻撃を躱した後隙を狩るようにもう1人が詰めてくる。
「血の棘」
右手の血を用いた血魔術で、地面から大きな棘を1直線に生やし、双子を分断。
連携が得意な相手なら、連携はさせないわ。
「ちっ、小細工を」
「レオ、避けて!」
そのままレオと呼ばれた片割れの男の子の方に襲い掛かれば、私のレイピアの一撃をするりと躱す。
さすがにすんなりと当たってはくれないわね。
掠りでもすればすぐに勝負は付くのだけれど。
「いけっ!」
クレオと呼ばれていた女の子の方から、分断していた棘の隙間を縫って短剣の投擲。
少し身体を傾ければ避けられるから、大袈裟に避ける必要は無いわね。
「包囲短剣の空間」
投擲された短剣を最低限の動きで躱した瞬間、私の周囲を全て囲むように短剣が出現。
クレオが右手を握る動作に連動して、私を滅多刺しにしようと短剣が迫る。
「……今のはちょっとばかり危なかったわね」
あわや全身を滅多刺しにされるという所で、私は身体を血の霧に変えて躱し、少し離れた場所で身体を再構築。
さすがに普通の短剣程度なら、多少刺さった所で吸血鬼の身体は殆ど損傷しないけれど、暗殺者の武器は原則当たってはいけない。
だからこそ、少し大袈裟でも私は全てを躱した。
大概の毒は私に効かないけれど、万が一にも私が耐性を持たない毒だった場合、それだけで勝負は付いてしまう。
「クレオの攻撃を初見で避けた、だと?」
ともあれ、今の攻撃は双子の暗殺者にとって必殺の一撃だったようで、無傷で躱して見せた私に驚きを隠せない様子ね。
もっとも、あんな攻撃があるのなら、私はより油断できない相手だと再認識しないといけなくなったのだけれど。
「ちょっとビックリしたけれど、私を獲るには足りないわね」
油断をしているつもりではなかったけれど、この2人は受け身で勝てる相手じゃない。
そう確信する程度には強い暗殺者だわ。
だからこそ、ここからは私が攻める番。
「血の狩人」
右手の血から、ある程度自立して相手を襲う獣を複数体生み出し、クレオの方にけしかける。
彼女が獣に対応している間に、もう1人を仕留めるわ。
「クレオ!」
レオの方の注意が逸れた瞬間、私は彼に向って距離を詰める。
「こっちは何とかするから! レオは目の前の相手に集中して!」
彼女が援護できないよう、獣たちを激しく襲い掛からせておく。
仮に倒されても、少しの時間が稼げればいいわ。
「私の本気で死ねる事を光栄に思いなさい!」
全力で距離を詰めながら、スピードに乗ったレイピアを突き込むべく、私は左手を引く。
「僕が何もできないと思ったか!?」
もうすぐ攻撃する、という瞬間に、レオの身体が漆黒に染まった。
どういう能力かはわからないけれど、恐らくはカウンター特化の能力。
あまりにも私の思い通りに運ぶ状況に、思わず笑みを浮かべてしまったわ。
一瞬後には、もうレオに攻撃が届く。
その瞬間に、己の身体を血の霧と化して姿を消せば、眼前でいきなり姿を消した私に、レオは慌てて周囲を見回す。
ふふ、その反応は対応できないと言っているようなものよ?
「レオ! 後ろ!」
血の獣たちに対応しながらも、クレオは私がわざと見えるように設置した血の霧に反応。
クレオの声を聞いて、レオは振り返りながら短剣を薙ぐ。
「血華・霧隠。ごめんなさいね。狙いは最初からあなたなの」
私は身体を血の霧に変えて移動したりできるけれど、その色を変えられないとは言っていないし、複数個所に霧を設置できないとも言っていない。
目立つようにレオの後ろに赤い霧を設置し、私自身は透明な霧状になってクレオの背後に回り込んだのよね。
2人の意識がレオの背後に向かった所で、私は身体を実態化させてクレオの心臓を得物で貫いた。
「あ、が……」
心臓から急速に回る劇毒。
瞬く間に全身を青白くして、クレオは動きを止めた。
普通なら、とっくに絶命しているけれど、暗殺者の死んだフリなんて日常茶飯事だから、念には念を入れて、彼女の全身の血を抜き出しておく。
瞬く間に干からびた死体と化したクレオを見て、さすがにこれは殺せたと確信。
むしろ、これで生きてたら人間じゃないわ。
「よくもクレオを!」
「血の監獄」
片割れを失ったレオが激昂してこちらに向かってくるけれど、こちらにはクレオから抜き出した豊富な血液がある。
その血液を全て使って、レオを四角い血液の箱に捕らえた。
激昂して動きが単調になった彼の動きは、いかに素早くとも捕らえるのは簡単だったわ。
「せめて家族の血で逝きなさい」
右手を握る動作に合わせて、血液の箱が圧縮され、最後は破裂。
血の雨となって地面へと降り注いていく。
圧縮され、手のひら大くらいの四角形になったレオの死体が、遅れて地面に落ちる。
さすがに、もう人間としての原型は保ってないし、レオの方も死んだでしょう。
「……久しぶりに骨のある同業者だったわ。血炎」
干からびたクレオの死体も、四角いキューブ状に圧縮されたレオの死体も、血の雨をたっぷりと浴びたから、それを燃料に、血魔術の炎を灯す。
肉の焼け焦げる嫌な臭いが一帯に充満したけれど、5分もすれば全てが燃え尽きたわね。
本当に念のため、死体も灰になるまで処理したし、これで完全勝利でしょう。
ハイト、こっちは守り切ったから、あとは勝ちなさい。
そういえばエスメラルダの本気は見せる前にハイトに蹂躙されていたなと思い、本気モードのエスメラルダさん降臨。
元から暗殺者なので、リベルヤ家で一番容赦無く徹底的に人を殺します。
フリスの戦闘?
瞬殺して終わりなのでありません。
合流に手間取ったのは、ハイトが総団長を引きつけながら移動してたせいで一番位置が遠かったからです。
逆にカナエが一番近かったという話。




