ワケあり11.6人目
「さて、敵さんはどこにいるかね」
左手の手綱で馬を駆りながら、右手で特大剣を振り回し、進路上にいる敵兵を排除しつつ移動するジェーンは、目標となる相手を探して敵陣を進んでいく。
「……ちっ!」
事前に聞いた情報だとこの辺りだろう、という場所に到達した所で、ジェーンは殺気を感じ取り、舌打ちしながら馬の背から飛び退いた。
直後、無数の矢が射放たれ、先ほどまでジェーンのいた場所に突き刺さる。
当然、何の対策もしていないジェーンの騎馬は、無数の矢を浴びてハリネズミのようになってしまい、そのまま絶命。
どうにか危機を脱したジェーンは、無事に地面に着地して、忌々しそうに矢の飛んできた方向を睨む。
「姿を見せる気は無えってか。まあいい。そっちがそのつもりなら、こっちも相応にやるだけだ」
先ほど矢が飛んできた方向に、特大剣の先を向けてジェーンが構えると、その剣先が開く。
それは、魔力を撃ち出す事のできる砲口だ。
「焦熱爆裂砲・フレアブラスト!」
圧縮された火の魔力が砲口に集まり、球状の弾丸となって撃ち出される。
撃ち出した際のノックバックでジェーンが地面を後ろに滑っていく辺り、その威力の程が窺えた。
「これで死んでくれてりゃ楽なんだが……ま、そうはいかねーわな」
撃ち出された火の弾丸は、着弾して大爆発を引き起こす。
それでターゲットを仕留められていれば、手間取る事も無いのだが、そうは問屋が卸さない。
反撃とばかりに数本の矢が飛んできたが、最初の掃射と比べると、恐ろしく散発的で、躱す事も容易なものだ。
反撃の矢が先ほどと違う方向から飛んできているので、ある程度は敵を倒したものの、本命は倒せていない、と判断したジェーンは、特大剣を肩に担いで駆け出す。
装備の効果で稲妻の如き速度で加速し、先ほどの射撃の方向へと移動すれば、そこには弓矢を構えて驚いた表情の男がいた。
男の顔を見て、自分の倒すべきターゲットである事を確認し、ジェーンは特大剣を振り下ろす。
「得意の弓は壊れた。もう終わりだ」
直撃こそしなかったものの、ジェーンの振り下ろした特大剣は、男の弓を破壊。
何とか振り下ろしの一撃を躱した男は、粗い呼吸で予備武器であろう剣を抜く。
「くそ、何なんだよお前……無茶苦茶だ……」
剣を抜きはしたものの、男には殆ど戦意が残っていない。
不安げに視線をあちこちに動かすのは、恐らく逃走の機会を窺っているのだろう。
「ま、あたしの馬をやった事だけは褒めてやんよ。けど、それだけだ」
「油断したな! 撃て!」
殆ど戦意が無いように見えた男の態度だったが、どうやら演技だったらしい。
男が合図を出すと同時に、ジェーンの周囲から無数の矢が放たれる。
どう頑張っても多方向からの攻撃ゆえに防御は不可能、躱す事も困難な攻撃だが、ジェーンはニッと笑みを浮かべた。
「龍翼旋空!」
特大剣を翼に見立て、ジェーンはその場で回転しながら横薙ぎに特大剣を振るう。
その一撃は小さな竜巻のような風圧を発生させ、飛んできた矢を全て巻き上げた。
真上に巻き上げられ、勢いを失った矢が、ボトボトと地面に落ちていく。
「終わりだって言ったろ。姿を捉えられた時点で、お前に逃げ場は無え」
かくして、ジェーンにその命を狙われたバイレンド傭兵団第二部隊長は、儚くもその命を散らした。
カナエが相手取っていた第一部隊長よりは抵抗したものの、彼女の馬を失わせた以外の損害を与えられず、部下諸共蹂躙されたのである。
「ったく……逃げ回るせいで余計な時間を食ったな」
しっかりと標的を仕留めた事を確認してから、ジェーンは小さく溜息を吐く。
第二部隊長は散々に抵抗した挙句、あの手この手で逃走を図ったため、仕留めるまでに結構な時間がかかった。
あまり時間をかけすぎるとハイトが危ないかもしれない。
そんな焦りもあり、ハイトの魔力を辿って駆け出す。
行く手にいるバイレンド傭兵団は、特大剣を振るって薙ぎ払う。
焦燥感に駆られながらも、ハイトの魔力を辿って駆け付けてみれば、総団長の大剣を受け止めるカナエの姿が目に入った。
「お前だけいいトコ持ってくんじゃねーよ!」
ジャンプで一気に距離を詰めつつ、空中から魔力の弾丸を放って牽制。
相手の動きを止めつつ、味方と合流するのだった。
ちょっと短めです。




