ワケあり11人目㉕
鳴潮アプデ、ゼンゼロアプデ、NTEと、ゲームにのめり込んで更新を滞らせたのは私です。
申し訳ありませんでした(土下座)。
そのお詫びといってはなんですが、分量はいつもより多めです。
単純に区切りのいい所まで持っていこうとしたら長くなっただけとも言う。
内容としては、ハイトとジェーンの時系列が合流します。
「よう、戻ったな」
念のために決めていた、連合国首都近郊の集合地点に向かったら、元気そうな様子でジェーンが出迎えてくれた。
うん、とりあえず五体満足どころか無傷っぽいから良かったと思う。
彼女に預けた兵士たちも全員無事みたいだし。
「無事で良かった。その様子だと、それなりに攪乱できたんだろ?」
「おう。包囲自体が解けたわけじゃねーけど、攻勢を鈍らせる事はできたと思うぜ。追手も巻いてきたし、足は付いてねえ」
やる事はやった、とジェーンは腕を組む。
「こっちもヴァルキア代表の娘さんは救出できた。向こうはとりあえず250人程度の軍勢になったから、そこまで手をかけなくていいだろうと思って、合流に来た形だな」
俺たちの方も作戦は上手くいった、と状況を共有すれば、ジェーンは満足そうに頷く。
「そうだ。明日、今日戦場で戦った傭兵団が、あたしらに合流してくるぞ。知り合いに声かけるとか言ってから、もしかしたら結構いい数になるかもな」
そういえば、と思い出したようにジェーンが言い出したのは、なかなかにとんでもない話だった。
「……んん? 戦った傭兵団が、合流してくるって?」
聞き間違いであってくれ、と願いながら聞き直してみるも、ジェーンは小さく頷いたので、どうやら現実のようだ。
どうしてそうなった……?
「鉄火傭兵団っつったか? そこの団長と戦ったんだが、あたしと打ち合って死なねえ程度には強かったし、自分の首を差し出して部下を助けようとする程度には男気のあるヤツだったぜ。そんなヤツが率いる傭兵団ってんなら、結構信頼できると思ってな。リベルヤ家としちゃ人手不足だし、ちょうどいいかと思ったんだ。まあ、どうして信用したかって言われると、勘としか言いようがねーけどな」
あっけらかんとして、何ならいい事しただろ、という雰囲気のジェーンを見て、俺は内心で頭を抱えた。
俺も自分の勘に従って動く事が結構多いし、人の事は言えないのだが……。
はいそうですかと、それを認めるのは上の立場としてどうなんだという話にもなってくる。
かと言って、難しい攪乱の役割を存分に果たしてくれた彼女に、文句を言うのも申し訳ないという。
とても反応に困る状態になってしまったな。
「多少アレでも責任持ってあたしが教育すっから。頼むわ」
勘とはいえ、ジェーンがここまで食い下がるのも珍しい。
普段は俺の言う事は割かしすぐに聞く方だけど、それだけ期待できる何かがあった、という事なんだろうか。
「……とりあえず、明日会ってから考えるよ」
「おう、頼んだ!」
とりあえず、俺は明日の自分に面倒を丸投げする事にした。
色々と頑張ってきたので疲れたのもあるだろうけど、ここで頭ごなしに否定するのも違うと思うし。
というか、仮に相手の戦力を離反させられるのなら、成果としては相当だ。
俺の感情は二の次としても。
まあ、明日だ。
明日実物を見てから全てを考えよう。
ジェーンが自分で教育するって言ってるしな。
……教育(物理)のような気もするが。
うん、もう細かい事を考えるのはやめよう。
若くして禿げそうだ。
きっと明日の俺が最適な判断を下す事だろう。
……多分な。
…
……
………
「結局、名案は浮かばずだな」
周囲を警戒しながら野営し、翌日の朝。
俺は身支度を整えてから、昨日のジェーンの話を思い出して、投降してくると思われる傭兵団とどこで落ち合うのか、聞いていなかった事に気付く。
場合によってはマズくないか、と焦ってジェーンを呼び出そうとしたのも束の間。
馬蹄がこちらへ向かってくる音が微かに聞こえてくる。
音の感じからして、結構な規模だ。
「伝令です! およそ500の軍勢がこちらに向かってきます! 構成は騎兵と歩兵が半々という所です!」
500の軍勢。
こちらの手勢は騎兵のみとはいえ100人しかいない。
なりふり構わずに撃滅するのなら、どうにかならん事も無いだろうが、確実に俺たちの存在が敵にバレるだろう。
まあ、もしかしたら昨日の戦闘でとうに露見している可能性もあるが、その確率は低い方がいいのは確かだ。
とにかく呼び出す時間も惜しくなり、俺は急ぎ足でジェーンの元へ走った。
「おー、こりゃまた随分と大勢連れて来たもんだ。アイツ、なかなかやるじゃねえの」
ジェーンの元へと到着してみれば、彼女は目庇を作って楽しげにその様子を見ていた。
彼女の反応を見る限り、あの500の軍勢は昨日の話に出ていた降ってきた連中という事らしい。
周囲は迎撃準備やらで大わらわだというのに、呑気な事である。
「ジェーン、昨日聞きそびれてたが、この様子を見ると、連中にここを教えたな?」
「おう。その方が確実に合流できるからな」
全くの考え無しだったようだ。
確実に合流できる、じゃねえ!
「……とりあえず一緒に来い。あと、3ヵ月の減給な」
「はあ!? なんでだよ! そこは特別ボーナス出るトコだろ!?」
色々と説教の言葉を考えたが、あまりジェーンには響かなそうに思えたので、とりあえず減給処分を言い渡す事にした。
ジェーンは不満たらたらで文句を垂れていたが、問答無用で彼女を連れて500集団へと向かう。
兵士たちにはとりあえず待機しておくよう言い含め、ぬるっとついてきたカナエも伴って、3人での出迎えだ。
「アンタがこのねーちゃんの主か?」
先頭に立って、両手持ちの大型戦鎚を肩に担いだ男が乗っていた馬から降り、こちらに歩いてくる。
多分、この男が昨日ジェーンが言っていた男だろう。
「よう、オーガスタ。随分と大所帯じゃねえの」
さっきまで減給に対してぐちぐちと文句を言っていたジェーンだったが、見知った顔を見てすぐに気安く話しかけに行った。
うーん、コミュ力あるのはいいけど、身の安全とか、色々とおざなりすぎん?
「知り合いにも声をかけてな。俺たち鉄火傭兵団200人と涼風傭兵団200人、そんで戦乙女傭兵団の150人を合わせて550人、戦力としちゃあ大したモンだろ?」
ジェーンにオーガスタ、と呼ばれた男は傭兵らしく、威勢のいい態度だが、気風のいい兄貴分といった様相で、第一印象は悪くない。
「本当にこいつら全員、こっちに降る気なのか?」
「おうともよ。一緒に戦うかは別にして、少なくともアンタたちと事を構える気は無いな」
まあ、うちの戦力になるかは置いておいて、550人でも敵が減るのであれば、それに越した事は無い。
そんなオーガスタとジェーンのやり取りを見ながら、俺たちの方に進み出てくる男と女が1人ずつ。
恐らく、オーガスタ以外の傭兵団の団長だろう。
値踏みするような視線が、俺たちを舐める。
「一番偉いのは、そこの子供か?」
あまり背は高くなく、どちらかと言えばひょろりとした体格の男が、真っ直ぐに俺を見据えながら声をかけてきた。
腰の左右に剣を吊っている辺り、双剣使いだろうか?
「ああ。俺はリアムルド王国のハイト・リベルヤだ。爵位は伯爵。連合国が窮地と聞いて救援に来た」
普段なら、もっと丁寧に接するのだが、生憎と相手は傭兵。
だからこそ、舐められないよう強気に名乗っておく。
男と俺の視線が真っ直ぐにぶつかり、睨みあう事しばし。
男の方が先に目を逸らす。
「涼風傭兵団250人、どう使う?」
端的な問い掛けと同時に、眼前の男が涼風傭兵団の団長だと判明したので、女性の方が戦乙女傭兵団の団長か。
まあ、女性の方は字面通りだ。
「どう使うも何も、適正も何も知らないからな。そもそも、傭兵団単位で運用するかどうかもわからない。その代わり、働きに見合った給金は出すぞ」
嘘を言ってもしょうがないので、男の問い掛けに対しては素直な答えを返しておく。
俺の言葉をどう受け取るかはわからないが、果たしてどう判断を下すのか。
「……なるほど。己はコルドス。今回の戦、そっちの指揮下に入ろう。結果次第では士官を申し出る」
あまり感情を感じさせない物言いだが、男はコルドス、という名乗りを上げ、俺たちの指揮下に入ると告げて引き下がっていく。
どうやら、必要以上の会話は好まないらしい。
「へっ、コルドスの野郎、相変わらず愛想が悪いな。ああ、俺もそっちの指揮下に入るからよろしくな」
先ほどのコルドスと比べると、幾分軽いノリで俺たちの指揮下に入るというオーガスタ。
うん、戦力が増えるのはありがたいけど、いきなり初期兵数の5倍が追加されるのは聞いてないんだよなあ。
「あんさん、見た目の割にはしっかりしてんねんな」
残っていた戦乙女傭兵団の団長であろう女性は、日本で言う関西弁チックな話し方だ。
それなりに背は伸びたが、見た目が子供なのは否定できないので、彼女の言う事はごもっともである。
「せやけど、オーガスタはんが言うとった事がホントなら、敵対するんは愚の骨頂。ウチらはあんさんの戦運びをじっくり見さしてもらうさかい、前線には参加せえへんで。ま、援護攻撃くらいは受け持ったるけえ、せいぜい気張りや。ウチはヘレン。戦乙女傭兵団の団長や。ウチらが惚れるような戦運びを期待しとるで?」
挨拶は終えた、とばかりにヘレンは後ろ手にヒラヒラと手を振りながら、仲間の方へ戻って行く。
3つの傭兵団という戦力が加わったわけだが、みんなクセ強そうだなあ……。
ともあれ、戦力が増えたのなら、やれる事も増えるというもの。
まずはバイレンド傭兵団の主力が到着する前に、首都の包囲を崩さないとな。




