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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり11.2人目

「これから、あたしたちは傭兵国の連中を引っ掻き回す。まず、第一に守るべきは、死なない事だ。あたしらが瓦解すれば、ハイトたちに危険が及ぶ。第二に、敵をあたしらに釘付けにする事。あたしらが注意を惹けば惹くほど、ハイトたちが動きやすくなる。ここまでいいか?」


 連合国に入って2日目の朝。

 あたしはハイトから預けられた20人の兵士を並べて、出撃前の最終確認中。

 陽動であり、身軽に動いて敵を攪乱する。

 ホントはあたし1人の方が身軽なんだが、人手がいた方ができる事もあるから、まあ一長一短か。

 特に質問も上がって来ないので、そのまま打ち合わせを継続。


「戦闘に入ったら、あまりあたしの近くには寄るんじゃねーぞ。気を付けはするが、巻き込まない自信は無えからな。質問が無いなら出撃だ」


 ありません、と兵士たちから返事が来たので、あたしたちは馬を駆って動き出す。

 先制攻撃はこちらから仕掛けられるとはいっても、規模からして敵に被害を与える、というよりは機動力を生かして引っ掻き回す形だ。

 強襲はあたしの得意とする所だが、こいつらはどれくらいついて来れるかね。


「絶対に足を止めんなよ! 突撃開始!」


 包囲の内へと注意が向いているタイミングで、あたしたちは背後から傭兵国の連中に襲い掛かる。

 馬上から特大剣の一撃で、あたしが初撃を加えて走り去れば、後続の兵士たちがその後に続いて一撃を加え、そのまま離脱していく。

 当然、敵もこちらの存在に気付いた。


「敵襲! 背後からきたぞ!」


「所属は!? 連合国か!?」


「わからん! だが敵だ!」


 敵陣が騒がしくなり、追撃に騎兵が出てくる。

 とはいえ、数はあまり多くなく、10騎程度だ。

 これなら倒す事も容易い。


「少し引き離したら騎兵の追手を仕留めるぞ!」


 あたしの号令に対し、応、と返事があったので、5分程度逃げてから馬首を返して反転。

 突出させた10騎の追手に逆襲をかける。


「雑魚であたしを止められると思うな!」


 一撃目、振り下ろしで一番手前の騎兵を馬ごと縦に両断。

 二撃目、返す斬り上げで馬の首を落とし、その先にある騎乗者の胸を深く斬る。

 ほぼ2人を無力化して、そのまま駆け抜けた後、再度反転。

 取りこぼしがあれば仕留めよう、と思ったが、兵士たちは上手く連携して残りの8騎を仕留めていたので、一度合流。


「被害は?」


「ありません!」


 全員が無傷だったので、包囲されないようその場を離脱し、一度戦場から離れて小休止。

 あまり連続で動くと、馬が潰れちまうからな。

 かなり訓練された馬とはいえ、最初っから使い潰すような真似は良くねえ。


「あとはこれを繰り返すだけだ。馬を休ませてる間にお前たちも休んどけ」


 携行していた水筒から軽く水を含み、水分を摂取しておく。

 今はまだ、それほど消耗していないが、この工程を繰り返せば繰り返すほど、汗もかくだろうし、疲労も溜まる。

 実際の所、勝負は後半戦に入ってからだ。

 あたしもこいつらも、生半可な訓練は受けてねえから、すぐにへばりはしねえだろうが、引き際だけは見誤らないようにしねえと。

 正直、あたしはハイトのためなら命を懸けられるし、いつ死んだって惜しくねえ。

 けど、あいつは絶対に気に病むからな。

 もうどうしようもないって時まで、極力死なねえようにしとく必要がある。


「さて、もう一度行くぞ!」


 小休止を終えて、あたしたちは、再度戦場に身を投じていく。




……

………




「……よし、こんなトコだろ。そろそろ引き揚げだ。合流地点に急ぐぞ」


 首都の周辺を転戦しながら傭兵国の連中を引っ掻き回してしばらく経った。

 空が夕焼けに染まりだしたし、そろそろ潮時ってヤツだろう。

 タイミングを変え、場所を変え、あちこちを引っ掻き回したおかげで、傭兵国の連中は殺気立った様子で周辺の警戒をしている。

 その警戒、もう無駄なんだがな。

 ま、やるべき事はやったし、もう充分だろ。


「負傷者はいるか?」


「掠り傷程度なら何名か。ですが、唾でも付けときゃ治ります」


 20名の兵士の纏め役が、全員の損傷軽微と教えてくれたので、これでとりあえず今日の役目は果たせた事だろう。

 そんなわけで、それなりの速度で馬を走らせつつ、あたしたちは集合場所へ向かって走る。

 思ったよりも、楽な仕事だった。

 そう考えた時、背後から何か強い気配が迫って来るのがが感じ取れた。

 この感覚は、間違い無く強者のそれだ。

 うちの兵士たちは、そこらの一般兵なんざ目じゃねえくらい強いが、少なくとも兵士たちに太刀打ちできる相手じゃねえ事は間違いねえ。


「先に行け。ちっとばかし手強い追手がかかったみてえだ。あたしが適当に追い返しとくから、お前たちはハイトに情報を伝えてくれ」


 さすがに援軍まではいらねえと思うが……まあ、ハイトの事だ。

 心配してカナエかオルフェ辺りを寄越すかもしれねえな。

 ま、そうならないように、サッと蹴散らすとすっか。


「貴様1人か?」


 気配は真っ直ぐにあたしたちを追っていたので、待っていれば来るだろうと予測し、あたしは馬を降りた状態で追手を待ち構えていた。

 案の定、追手はあたしの目の前に姿を現す。

 顔に傷のある、厳つい男だ。

 部下を数名伴ってるが、部下の方はうちの兵士1人とどっこいくらいか。

 最悪、顔に傷のある男だけ止めときゃどうとでもなりそうだな。


「いざって時は、ボスが残って子分を逃がすモンだろ? 中には我先にと逃げる腰ヌケもいるだろうがな」


 お前はどうだ、と顔に傷の男に視線で問い掛ければ、男は嫌そうに顔をしかめる。


「……お前たちは下がっていろ。残念ながら、俺以外にこの女の相手は務まらんだろう」


 おおよそ、実力を正確に見抜くだけの目はあるようだな。

 ま、大方どこぞの傭兵団の幹部か長か、ってトコだろ。


「俺は鉄火傭兵団の団長、オーガスタ・イーツカ。俺が勝ったら、お前は俺のものだ」


 名乗りを上げ、大人の男くらいの長さを持つ巨大な鉄棍(メイス)を構える男、オーガスタ。

 見る感じ、それなりにデキそうではある。

 少なくとも、油断していい相手じゃねえ。


「ハッ、あたしを自分の物にしたきゃ、心から従わせて見せろってんだ。もっとも、あたしよりも弱い男に興味なんざねえけどな」


 地面に刺していた特大剣を抜き、腰を落として構えを取る。

 様子見に徹する気は無え。

 とっととケリを付けて集合地点に戻りてえからな。

 名乗る必要も感じないし、手早く潰すとしよう。

 初撃で仕留めるつもりでもって、あたしは地面を蹴るのだった。

次回もジェーン視点が続きます。

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