ワケあり11人目⑱
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申し訳ありません。
「そういうわけで、戦になる。ついては、人選を決めたいと思う。滅多な事は無いと思うけど、王都にもある程度の戦力は残したい。あとは万が一に備えて領軍も動かせるようにしておきたいから、留守番はリシアに頼もうと思ってる」
屋敷に戻り、シャルを始めとしたリベルヤ家の主要メンバーを集めて、王城でしてきた会議の内容を共有して、俺の考えを話す。
戦場で動くに当たって、リシアの指揮能力は替えが効かないものだが、ある程度兵数を絞れば俺でも運用は可能だ。
まして、今回は俺たちが攻撃の主軸であり、あちこちを転戦する事が予想されるため、身軽な方がいいだろう。
なので、教国に行った時のように少数精鋭の形がいいはず。
とはいえ、あくまで俺の考えなので、念のためみんなに確認を取っている。
「……仕方ないな。有事に備えるという事であれば、確かに私が留守居をすべきだろう」
若干ながら含む所はありそうなものの、リシアは意外にも留守番に反対意見を出さない。
周囲を確認してみれば、シャルや他のみんなも反対意見は無さそうだ。
「補佐には双子を使ってくれ。今回はガチの戦場だ。言っちゃ悪いが、刺激が強すぎるだろうしな」
さすがに13歳の子供に国同士の戦争を行う場を見せるのはどうかと思うし。
俺?
俺は精神年齢が既におっさんだからヘーキヘーキ。
「そうだな。それがいいだろう。オルフェも連れていくのか?」
「そのつもりだ。戦場に絶対は無いから、もしもの備えはしておきたい」
「纏めましょうか。戦場に向かうのはハイトさん、カナエさん、ジェーンさん、オルフェさん、フリスさん、王都に残るのは私、リシアさん、リリスさん、カトレスさん、クルスさん。エスメラルダさんは、先行してもう戦地にいるんでしたよね?」
俺の意見に否定が出なかったため、現状の人員配置をシャルが纏めてくれた。
相変わらず、そつがない。
「だな。現地でエスメラルダとは合流予定だけど、状況によってはエスメラルダを王都に戻す。あいつなら、守りもできるだろうからな。リシアとシャルは何かあったらすぐに早馬を飛ばしてくれ」
「ハイトも戦力の追加が必要なら、遠慮せずに連絡をするようにな。こちらもすぐに動けるよう備えておく」
「そうならないのが一番ではあるけどな」
不測の事態が常に起こり得るのが戦争というものだが、アーミル将軍を始めとした軍閥の貴族たちや、俺という戦力が集うのだ。
一方的に負けるという事態は考えにくい。
とはいえ、不確定要素も多くあるし、結局はその場その場で最適解を出すしかないのであるが。
「戦場に出す兵士の選出はリシアに任せる。動きが重くなるのも困るから、やっぱり100人くらいがちょうどいいだろうな。全員騎兵で頼むぞ」
「うむ、心得た」
今後の勢力強化の予定はあるけども、今の所は一般的な貴族家程度の域を出ない。
装備は密かにアーミル侯爵の所から質のいいものを仕入れたり、特に優秀な人には個別にレイネスタに打たせたりしているので、兵士1人辺りの戦力は間違いなく高いのだが。
「レイジュ様は、しばらく王城の方に避難を……」
「えー、嫌ですよー?」
万が一にも、うちの屋敷に賊が入る事などあり得ないし、入ったとて使用人たちの個人戦力がバグってるので、危険などあろうはずもないが、億が一、という可能性を考えた場合、レイジュ様には王城に避難してもらうのが最も安全だった。
しかし、ゆっくりとした口調とは裏腹に、レイジュ様は俺が全てを言い切る前に拒否の姿勢を示してきたのだ。
「しかし、安全を考えると……」
「わたしは精霊さんの守りがありますからー。むしろー、わたしが戦地に赴けばー、王国兵たちの戦意も増すと思いますよー?」
レイジュ様の主張は、確かに頷くべきもので、兵士たちを鼓舞して士気を上げるという意味では、この上ない効果を持つだろう。
だが、それ以上にリスクが大きい。
もちろん、俺は万難を排す努力をするが、戦場に絶対は存在しないので、何が起こるかわからないのだ。
極論、俺を妬む貴族なんかがいた場合、それ絡みでレイジュ様に危険が及ぶ可能性だって大いにある。
それどころか、敵にレイジュ様がいると情報が洩れれば、真っ先に狙われる対象になってしまう。
それでレイジュ様が捕虜にでもされれば、王国側は不利な交渉を強いられる事になってしまうし、場合によってはやむを得ずに彼女を見捨てる選択を取る事にもなりかねないし。
「……確かにレイジュ様の言う事にも一理あります。ですが、それでも連れて行くわけにはいきません」
最悪、気絶させてでも置いて行くぞと思っていると、レイジュ様は悪戯っ子のような悪い笑みを浮かべる。
「ハイト様がそのつもりならー、わたしにも考えがありますよー?」
まさかの脅しをかけられて、俺は答えに窮した。
何せ、馬車の荷物に紛れ込んでくるくらいのアグレッシブさを持つお方だ。
俺が強制的に留守番させようとするのを察知して、裏をかかれないとも限らない。
助けを求めてシャルの方に視線を送れば、彼女はにっこりと微笑むのみ。
アイコンタクトの返答は、自分で何とかしろ(要約)、である。
嗚呼、無情なり。
「……絶対に俺の指示に従う事、勝手に行動しない事。この2つが守れるなら連れて行きます」
しばらく睨み合った結果、レイジュ様を説得して王城に避難してもらう言葉を捻り出す事ができなかったので、条件を付けて同行を許可するしかなかった。
俺の返答に満足したのか、レイジュ様は悪戯っぽい笑みから、年相応のにぱーっとした笑みに変わり、こちらに飛びついてくる。
「ちょ、レイジュ様!?」
「ありがとうございますー!」
俺は万が一にもレイジュ様を落とさないようしっかりと受け止めると、彼女は甘えるように俺の胸板にぐりぐりと頭を擦り付けてきた。
甘えてる猫かな?
「それじゃ、準備が済み次第、西の国境に向けて出発する。みんな、よろしく頼む」
集まりを解散させてから、俺もすぐに戦場に出られるように準備をする必要があったのだが……なかなかレイジュ様が離れてくれない。
執務室内で書類を捌きながらも、こちらの様子を伺っているシャルの表情は穏やかで、微笑ましい光景を眺めているような感じ。
普通なら嫉妬とかされるんじゃないかって思うけど、この世界は割かしハーレムの土壌が整っているからか、変な特別扱いをしなければ割と許されるっぽいんだよな。
前に陛下も精神的に疲弊して、幼児退行した側妃様を甘やかしてた事あったし。
というか、レイジュ様の年齢を考えたら、こういう風に甘えるのだって、普通なんだよな。
6歳の子供なんて、まだまだ誰かに甘えたい盛りだろう。
そんな事を考えながら、レイジュ様の甘えを受け止めていると、気付けばいつの間にか動きが止まっていた。
そんな状態に気付いて視線を下に向けると、そこには安心しきった表情で、俺に寄りかかってすやすやお昼寝タイムに入っているレイジュ様が。
うーん、猫かな?
とりあえず、一旦ソファーにでも寝かそう、と思って彼女の身体を抱えると、まるで離さないで、というようにぎゅっと抱き着かれてしまう。
「シャル」
「そのままでいてあげて下さい。きっと、王城での暮らしは子供には窮屈なものだったでしょうから」
シャルに再度助けを求めるも、そのままで、と慈母のように優しい笑みを浮かべたシャルに言われてしまっては、俺もそうせざるを得ない。
やれやれ、とソファに座り直してレイジュ様を受け入れていると、俺も知らないうちに疲れていたのか、気付けばそのまま眠りに落ちていたのは、後になって知る事だった。




