ワケあり11人目⑰
「宣戦布告、か」
陛下と話し合った翌日。
俺は午前中から王城に呼び出され、状況を説明されたのだが、小国家群はアゲイト傭兵国と名を変え、事実上の国家として独立を宣言した。
同時に、王国と連合国に向けて宣戦布告。
西の国境方面が騒がしくなってきたところだ。
「兵数だけで考えるなら、全軍を向けられていたら不利を強いられる所でした。ですが、連合国と同時の2方面作戦を行うとなれば、そこまで兵数不利は付かないでしょう」
「問題は、各傭兵団の戦力よな。バイレンド傭兵団を始めとした、屈強な戦力は数を覆す事も容易い」
軍部の責任者であるアーミル侯爵も交え、俺と陛下を合わせて3人での会議である。
本来ならばもっと国内の主要人物を集める所だが、現状の王国の国力では、俺たちだけで足りてしまう。
悲しいね。
「現状、連中の動きとしてはうちと連合国を同時に攻める格好だ。特に策を弄している様子は無いが、兵力の偏りも無い。ほぼほぼ半数を分けて同時に攻めてくる形だな。今は物資を国境方面に運び込み、準備を整えている所だ。早ければ数日中には攻めてくるだろう」
眼の方で事前の情報収集をしていたのか、陛下から敵軍の動きが共有される。
俺も早朝にエスメラルダの部下から報告を受けた。
エスメラルダ本人は先んじて現地入りしており、色々と暗躍してくれているので、後で俺たちも国境に向かう事になるだろう。
何せ、今の王国に俺という戦力を遊ばせておく余裕は無いからな。
「アーミル侯爵、戦の支度は?」
「既に部隊の編制も済んでおります。今は守備隊を国境の砦に置いておりますので、これから後詰めの兵力を送る事になるでしょう。私も出ます」
アーミル侯爵はさすがと言うべきか、既に諸々の支度を終えており、あとはご本人が後詰めの軍を率いて国境に向かうだけという。
相変わらずのしごできぶりである。
「基本的な兵の運用は侯爵に一任する。ハイトよ、お前は遊撃として自由に動け。変に役割を決めるよりも臨機応変に動けた方が力を発揮できるだろう」
「はい。全力を尽くします」
やはり、陛下は俺の強みをわかっているな。
変に役割を固定するよりも、自由に臨機応変な動きをさせた方がいいと理解している。
こちらとしてもやりやすいので、ありがたい限りだ。
「現在、西の国境砦にはタッキンズ伯爵を置いております。彼ならば堅実に守りを固めてくれるでしょう。砦には既に備蓄を移送しており、向こう半年は籠城できます」
物資も充分に蓄えている、というわけで、守備部隊については心配はいらなさそうだ。
タッキンズ伯爵ならば1度戦場を共にした事もあるが、堅実で確実な兵の運用をするタイプだし。
よほど裏をかかれなければ、そうそう敗走する事もないだろう。
それにアーミル侯爵率いる本隊が合流するとなれば、ほぼほぼ心配はいらない。
王都の守りと国内の治安維持の軍はさすがに残すだろうが、それ以外の動員可能な兵は西に全ツッパだな。
東の帝国が攻めてこないからこその大胆な運用だが、逆に言えば余剰兵力が国内に殆ど残らないので、万が一にも手痛い敗北を喫してしまうと、相当にマズイのだが。
逆に言えば、ここが正念場だという話でもある。
「ハイトくんは状況を見て動いてくれたまえ。守りは私に任せ、思う存分に暴れてきなさい」
「わかりました」
基本的に、攻撃面は俺たちが、守りをアーミル侯爵が担う事になるか。
侯爵は元より守りの戦いが得意みたいだし、うちはカナエやジェーンを攻撃に回した方がやはり強い。
守る戦いもできなくはないけど、いかんせん味方が周囲に多いと色々制限かかるし。
特にカナエは全力戦闘だと、周辺をそれはもう盛大に破壊しまくるから。
逆に言えば味方を巻き込まない状況でないと、全力を出せないとも言い換えられる。
「では、国を頼む。余は王都で他の貴族たちを抑えよう」
王都に残る陛下の役目は、国内の貴族たちを纏めておく事だ。
今の状況から、敵を内通して利益を上げようとする輩もいないとは言い切れない。
そういった足を引っ張るような連中を牽制し、動きを止めるのが主な目的だ。
「王妃様を始めとした影と近衛隊がいるので心配はいらないと思いますが、陛下も身の回りには気を付けて下さい。御身に何かあれば国内は間違い無く混乱いたします」
「わかっておる。身辺は入念に固めておくとしよう」
打ち合わせを終えて、俺とアーミル侯爵は陛下の執務室を後にした。
一緒に王城の廊下を歩きながら、俺は今回の戦において連れて行くメンバーを考えていく。
戦力的な面では、カナエとジェーンの2人は確定で連れて行くとして、俺が行けば自動的にくっついてくるフリスまでは固定メンバーと考えていいだろう。
あとはオルフェさんとか双子辺りだが、本格的な戦ともなれば、オルフェさんの祈術による回復はぜひ欲しいか。
とはいえ、王都にもいくらか戦力は残しておきたい。
陛下の事だから滅多な事は無いだろうが、王都の兵力が手薄になった際に悪さを企む輩は一定数いるだろう。
そういった際に自由に動かせる人員が欲しいのだ。
とはいえ、そうなると指揮能力から考えてリシアを王都に残すべきか。
彼女ならどんな状況にもシャルと合わせて的確な動きを取ってくれるはず。
あとは双子とかを補佐に置いておけば割とどうにでもなるだろう。
「ハイトくん、時にバイレンド傭兵団はうちと連合国、どっちに来ると思う?」
今回、最も大きな戦力となるバイレンド傭兵団が、王国と連合国のどちらに向かうか。
こればっかりは相手次第と言わざるを得ない。
慎重な相手なら防衛手段として手元に置くだろうし、攻めっ気が強いなら、攻勢に加えるだろう。
まあ、俺なら連合国攻めにバイレンド傭兵団を回すかな。
王国側は適当に時間稼ぎだけして、本命であるバイレンド傭兵団が連合国を抑える、あるいは獲るのを待つ。
最低限抑えに成功さえすれば、追加の戦力を王国に全て回せるからだ。
「俺なら連合国に回しますかね。考えられる線としては、バイレンド傭兵団を半分に分けてくる、というのも無くはないと思いますが」
言ってはみたものの、何ならそれが一番俺たちにとっていいと言える。
ただでさえ強力な戦力をセットで運用せず、分けるというのはいかがなものだろうかという話。
俺やカナエ、ジェーンという特記戦力がいるのだから、真面目に勝とうと思うと、バイレンド傭兵団を差し向けるのなら王国になるはずだ。
いかに少数で戦場を引っ掻き回せるとはいえ、総人数は圧倒的に少ないので、一番まずいのは連合国側を抑えられてから、西と南から同時に攻められる流れ。
どう頑張っても物理的に手が足りなくなってしまうので、かなり戦況が厳しくなるだろう。
「そうなるだろうね。ハイトくん、念のために君たちだけで連合国に向かう可能性も、頭の片隅に置いておいてほしい」
「そうならないのが一番ですが……わかりました」
話を終えると同時に、ちょうど馬車の発着場に着いたので、俺たちはそれぞれの家の馬車に乗り込んでいく。
そのまま、どちらともなく馬車を走らせ、今回の戦に向けて動き出すのだった。
話の流れがキナ臭くなってまいりました。




