ワケあり11人目⑮
前回で予告した通り簡易地図を作製しました(作者がペイントで手描き)
絵心無いのでこれで許して下さい(真顔)
最後の方に載せておきますので地理的な相関情報の一助になればと思います。
「この里から出た裏切り者が竜人族の商人との事ですが、人数などの詳しい事を伺っても?」
とりあえず、俺の知らない情報をプロテが持っているのは間違いない、と判断し、早速情報を聞き出しにかかる。
あまりにも未知の相手だったから、ちょっとでも情報は欲しい。
「人数は5人。特に代表となるのは片目に傷のある男で、名はマジャン。恐ろしく洞察力が高く、逃げ足が速い。他のメンバーは取るに足らない小物ばかりだけれど、彼だけは別格だ」
マジャン。
それが竜人族の商人の名前か。
他のメンバーは取るに足らない、と断言しているけど、それが真実かはわからない。
竜人族であるプロテにはそう思えても、俺たちにも同じ認識かどうかは不明だ。
けど、人相や名前が知れただけでも大きな前進と言えるな。
あとは、連合国が取引をしてたとか言ってた気がするから、陛下にヴァルキア代表宛ての手紙を出してもらおう。
俺の聞いた人相と情報が一致するか、確認して裏付けを取っておきたい。
「僕が知る情報としては、そんな所だ。あとは他の竜人族の里にも同士がいる、という話を又聞きした程度だね」
確かに、それほど多くない情報かもしれない。
けど、確実に前に進める大事な情報だ。
他の竜人族の里に伝手があるという事は、基本的に里が存在を隠しているのを隠れ蓑にして、各地に勢力を潜伏させているという事になる。
なるほど、そもそもの潜伏場所が隠されている里の中にあるのだから、普通にやって見つかるはずもないわな。
「この里と付き合いのある里はありますか?」
さすがに、1から隠れ里を探すのは非効率がすぎる。
なので、他の隠れ里は知らないかを問うてみれば、プロテは横に小さく首を振った。
「僕が長になる前にはあったみたいだけれど、その当時は詳細を知る立場に無かった。竜人族には人族のように契約書を交わすような習慣が無くてね。記録を確認する事もできない」
ジッとプロテの表情を見るも、彼はとても真面目な表情で、端から見ている分には嘘など吐いていなさそうだが、普段の胡散臭さから、本当に大丈夫かと疑ってしまう。
しかし、彼はずっと目を逸らさない。
恐らく、本当の事を言っていると考えておくべきか。
しかし、小国家群を実質上統一していると考えると、マジャンの勢力は3大国に引けを取らない。
王国と連合国は国境が隣り合っているし、警戒を強める必要もありそうだ。
バイレンド傭兵団の存在もあるし、普通に武力で戦争を仕掛けてくる可能性だってあり得る。
「余裕があれば、香辛料の生産を増やしてくれると陛下も喜んで力を貸してくれると思います。うちの国にとって、ここの香辛料は評判がいいみたいなので」
「覚えておくよ。さすがにすぐには無理だけれどね」
とりあえず、聞き出すべき事は確認できたし、あとはエスメラルダたちの方が調査を終えるまでは待機になるかね。
とはいえ、雑談を交わすほど、俺とプロテは親しい間柄でもない。
「ところで、ジェーンとご両親は元気かい?」
一旦馬車に戻って待機していようか、と考えた所に、プロテから質問が飛んでくる。
そういえば、胡散臭いけど一応ジェーンの事を助けてご両親も匿ってくれてたんだよな。
そういう意味では気になるのも不思議ではない……か?
「ええ、元気にやっていますよ。一緒には暮らしていませんけど」
最初はうちでご両親を働かせようかと提案したが、ご両親の方から断られてしまったんだよな。
曰く、まだ娘に世話になるほど衰えちゃいない、と言っていたが。
そんなわけで、ご両親は別で王都の借家に住んでおり、時折ジェーンが遊びに行っているという形だ。
まあ、ジェーンも成人年齢はとうに過ぎてるし、1人立ちしたと考えれば妥当な距離感だろう。
「そうか。皆健在なのであれば良かったよ。あれから、僕の選択は間違っていないかを相当に悩んだからね」
選択、というのは、プロテが去年俺に語った一連の話の事だろう。
里の長を決める政争で、ジェーンを外の奴隷商に託し、ご両親を保護していたのだから。
確かに、人道的でないという話はあるかもしれないが、それでもプロテがジェーンを救おうとしたのだから、俺とジェーンは出会う事ができた。
そういう意味では、俺たちの出会いはこの男にお膳立てされたとも言えるのだが。
「さて……それじゃあ、他に質問や話が無ければ1度お開きにしようか。そろそろ勤勉な護衛が痺れを切らすだろうからね」
確認したい事は確認できた、とプロテは話を打ち切った。
俺の方もそろそろお暇して馬車に戻ろうと思っていたので、ちょうどいいタイミングだ。
そのままプロテの部屋を辞して、外で待っていた案内の男に馬車に戻る事を告げ、案内してもらって馬車へと戻る。
馬車内に入って、扉を閉めた所で、今まで借りてきた猫のように大人しかったレイジュ様がぷはーっ、と大きく息を吐く。
「何だか緊張しましたー。ハイト様はこんなお仕事をしてるんですねー」
急に6歳児らしい事を言い出したレイジュ様に、ちょっとだけ癒されつつ、エスメラルダたちの帰りを待つ。
俺たちが馬車に戻ってから、たっぷり1時間くらいが経過した辺りで、疲れた顔のエスメラルダが馬車に戻ってきた。
ちなみに疲れたのか、レイジュ様は座席で小さな身体を横にしてスヤスヤタイムだ。
横でカナエが彼女の頭を優しくなでなでしているのを見ると、存外子供が好きなのかもしれない。
「そっちは何か収穫はあったか?」
「びっくりするくらい表の調査しか進まなかったわ。裏の情報は欠片もナシよ」
そうだろうな、と思いつつも、俺はプロテから聞いた話をエスメラルダに共有。
そっちが当たりだったみたいね、とエスメラルダは腕を組んで座席に背中を預ける。
「とはいえ、人相が割れたのは大きいわね。これならいくらでも調査のやりようがあるわ。正直、あまりにも事前情報が無さすぎて行き詰ってたもの」
エスメラルダたちが苦戦するって事はそういう事だろうなー、と思ってはいたので、俺もそこを責めるつもりは無いし、むしろ少ない手がかりでよく頑張ってくれたなと思う。
「とりあえず小国家群の動向には今まで以上に気を配る必要がありそうね」
「だな。何なら諜報部隊を全員送ったっていい」
今回の動きのキーは、小国家群になる。
その動向に注視するのは当然の話だ。
「その辺はこっちで手配しておくわ。あなたは王都に戻ったら王城に報告でしょう?」
「だな。連合国にも情報の裏を取りたいし。もしかすると、連合国にも人員を増やした方がいいかもしれない」
大陸全土に暗部のエージェントたちが配置されているとはいえ、あくまで満遍なく全体的に情報を拾うためである。
必要があれば、一時的な増員や配置調整も必要になるが、その性質上、人員の確保が難しい。
中には許可無くエージェントを送っている場所もたくさんあるし。
一応、ジェーンにはそれらしい人材がいたら、スカウトして暗部を増員していいと許可してるけど、そんなに簡単におあつらえ向きの人員が見つかるはずもないので、暗部増員計画はあまり捗っていないのが現状だ。
そんな打ち合わせをしながら、俺たちは王都へ戻る道を進んで行くのだった。




