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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり11人目⑬

「ハイト様の馬車、全然揺れないですねー」


 竜人族の里へと向かう道すがら、座席から立ち上がって窓から景色を見てはしゃぐレイジュ様。

 年相応の子供らしい面を見てほっこりしながら、どうしてこうなった、と天を仰ぐ。

 エスメラルダと諜報部隊の面々を引き連れての、竜人族の里訪問。

 護衛はカナエだけのシンプルな行軍のはずが、出発してから1回目の小休憩を入れたタイミングで、カナエが野営用の荷物を漁り始めて俺は首を傾げたのだが、荷物の中から服の襟を掴まれたレイジュ様が引っ張り出された瞬間、俺は口にしていた水を噴き出した。

 その時正面にいたエスメラルダが、俺の噴き出した水を浴びるという二次被害も発生したが、とりあえずその場で彼女にすまんと声をかける。


「すみません、王都の外を見てみたくてー……」


 カナエにぶら下げられつつも、レイジュ様はのんびりと呟く。

 話を聞いてみれば、王都の外の世界を見た事が無かったので、興味本位で荷物の中に紛れてついてきたのだと言う。

 うーん、のんびり屋な感じのする話し方と違って行動がアグレッシヴだなあ。

 ともあれ、日程を組んで行動している以上、ここでレイジュ様を送り返している時間は無いし、幸いというか、魔物討伐のような危険な場所に行くわけではないので、そのまま連れて行く事にしたのだ。

 もっとも、後に俺はこの判断を悔やむ事になるのだが……。


「精霊たちも元気ですねー」


 はしゃぐレイジュ様の側で、色とりどりの光が舞う。

 そう、こうして同行を許すに至った理由がこの色とりどりの光たち。

 いわゆる精霊というもので、大気中の魔力が集まって自我を得た存在なのだが、レイジュ様はこの精霊を使役できる。

 精霊術師、と呼ばれる希少な魔術師だ。

 そもそもの話、精霊との親和性が高くないと精霊術師としてやってはいけないのだが、レイジュ様は精霊と言葉を交わす事ができ、その姿を見る事ができるという。

 そして、その実力がなかなかにとんでもない。

 たまたま、小規模な魔物の襲撃があったのだが、俺たちならば苦も無く処理できるような雑魚ではあったものの、俺たちが処理する前に、レイジュ様が精霊魔術で撃破してしまった。

 否、正確にはレイジュ様は何もしていないのだが、彼女の側に漂う精霊たちが、勝手に迎撃したのだ。

 話を聞いた所によると、精霊たちはレイジュ様に向けられる悪意や害意に対して恐ろしく敏感で、何かあると勝手に迎撃してしまうそうな。


「ずいぶんと力のある精霊たちですね」


 先ほどの精霊魔術の威力を見るに、その威力は相当なものだった。

 それでいて、周辺に被害を出さないように調整されていた節がある。

 俺にはただの光にしか見えない精霊たちだが、レイジュ様はしっかりとその姿を捉えているのだそう。


「今わたしの周囲にいるのはー、中級くらいの精霊たちですねー。意識がハッキリしている分、存在も認識しやすいですよー」


 どうやら、下級精霊やそれ以下の微精霊たちは意識が薄いらしく、特に微精霊は微生物レベルらしい。

 下級精霊で動物くらいの知能と意識で、中級精霊となると人間の子供くらいであり、上級精霊から上は人間と遜色ないどころか、人間を越えるくらいになるとのこと。

 そしてレイジュ様は精霊に好かれやすい体質らしく、基本的にいつも精霊たちが周囲に群がっているのだそう。

 さすがに微精霊は寄って来ないが、下級精霊以上の存在はほぼ必ず集まってくるらしい。

 その土地に根付いた精霊でなければ、ずっとついてくる事もあるとか。

 今、彼女の周囲を漂う色とりどりの光たちは、元々は王城近くを飛んでいただけの中級精霊らしいが、お互いに意思疎通をしてからはずっと一緒にいるとの事。

 レイジュ様と戦う場合、各種属性の中級精霊+αで他の精霊がついてくる事になるわけで。

 うん、下手な護衛付けるよりもよっぽど強いわ。


「ハイト様もどちらかと言えば精霊に好かれるみたいですねー。目が慣れたら下級精霊くらいまでは見えるようになるかもしれませんよー?」


 レイジュ様曰く、俺も精霊には好かれやすい部類との事だが、あくまでどちらかと言えば、という括りなので、精霊術師になれるほどのものではないのだろう。

 まあ、嫌われるよりはマシか。

 しかし、こうしてはしゃぎながら精霊の事を語るレイジュ様は、本当に子供なんだな、と思う。

 言葉遣いこそ丁寧ではあるけど、6歳児らしいというか。

 ……いや、そもそも6歳児がこんなに賢い時点でだいぶ異常だわ。

 小学校1年生って考えても、ここまでしっかりしてないだろ。


「……精霊たちが、ざわついてますねー」


 改めて、レイジュ様が6歳児ってマジ?

 という感想を内心で抱いていたら、だいぶ竜人族の里の方に近付いてきたのだが、そこでレイジュ様から不吉な一言が飛び出す。

 精霊という、ある意味自然界の使者のような存在がざわつく、というのはどう考えても不吉である。


「カナエ、何か感じるか?」


「前に来た時よりも変な空気」


 野生の勘に優れるカナエに声をかけてみれば、彼女も何かを感じ取っているようだった。

 これはさすがに、このまま真っ直ぐ調査に向かうのは避けるべきか、と考えつつエスメラルダの方に視線を移す。


「とりあえず、警戒するしかないわね」


 俺の内心を悟っていたのか、エスメラルダは肩を竦めるに留める。

 まあ、とりあえずは出たトコ勝負になるって事だな。

 とはいえ、事前に警戒をするべきとわかっているのなら、先に心構えをしておく事はできるのだ。

 何が起きるかわからないが、とりあえず警戒はしっかりとしておこう。


「長にこの書状を渡してほしい。返事が来るまで俺たちは馬車で待機している」


 およそ1年ぶりの竜人族の里に到着し、俺たちは以前と同じように馬車を入口の脇に止めて待機の構え。

 ちなみに、門番は去年見た人とは別人だったので、誰だコイツ?

 みたいな目で見られたが、交易で人が来る事が増えたのか、俺が書状を渡してくれと頼むと、事務的に請け負ってくれた。

 まあ、長があの糸目の胡散臭い男から代わっていなければ、多分すぐに会うと言ってくれるはずだ。

 そうして待つ事10分程度。

 馬車の扉をノックされたので、代表して俺が外に出る。


「長が会われるそうだ。調査の人員も一緒に来ていいと言われている」


 やはり、と俺は内心で納得しながらも、準備をしたら行くと返答をして、1度馬車の中に引っ込む。

 さて、これは鬼が出るか蛇が出るか。

 とりあえず、レイジュ様の安全は最優先で確保しないといけないな、心に誓いつつ、俺たちは里へ入る準備をするのだった。

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