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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり11人目④

「何事もなく村人たちを解放できて良かったです」


 旧教国派の主立ったメンバーを襲撃し、捕らえた翌日。

 薬を盛られて唆された村人たちは、無事に薬の影響が抜け、憑き物が落ちたように穏やかになった。

 記憶は朧気に覚えているようだが、聞き取りを行った村人たちは、一様にどうして反乱に加担したのかわからないと首を傾げており、自発的に反乱を起こす可能性は極めて低いと判断。

 無事に釈放と相成ったわけである。

 一晩中彼らの様子を見ていたオルフェさんは、満足げに帰っていく村人たちを見送っていた。

 ロクに寝てないだろうに、大した関わりも無い村人たちの無事を喜べるのだから、聖女よりもよほど聖女らしいなと思う。


「もし辛かったら、移動中に寝ててもいいぞ?」


「いえ、そういうわけにはいきません。体力には自信ありますから。ですが、拠点に帰ったらゆっくり休ませてもらます」


 ほぼ徹夜の後に行軍はキツかろうと彼女に声をかけてみれば、オルフェさんは気丈にも首を横に振る。

 大丈夫か、と思わないでも無かったが、サンクリドに戻ったらちゃんと休むと言っているので、とりあえずは彼女に任せる事にしておく。

 これから国境付近に展開している帝国軍と合流するわけだが、今朝のうちに昨日出した伝令が帰ってきており、恙なく捕虜を国外に出せて、その後に攻撃も無かったと返事が来ていたので、俺たちはゆったりと国境へと向かっている。

 だらだらとしているわけではないが、さりとて必要以上に急いでいるわけでもない、といった所か。

 ちょうど昼前に差し掛かる頃には、国境が目前に近付いていた。


「……血の臭いがする」


 俺の左右を守るように移動している双子のうち、カトレスが鼻をヒクつかせながらぽつりと呟く。

 確認するようにクルスの方を見れば、彼女も無言で頷いたので、間違いは無いらしい。

 俺は何も感じないが、獣人である2人なら、何かを嗅ぎ分ける事も可能か。


「フリス、確かか?」


 もう1人、影として身辺警護を担う獣人のフリスを呼べば、彼女は相変わらず気配無く俺の前に姿を現し、後ろに歩きながら恭しく頭を垂れる。


「間違い無いですね。濃い血の臭いです。かなりの人数が死んだでしょうね」


 顔を上げたフリスが、より細かな状況を伝えてくる。

 彼女の嗅覚が2人よりも優れているのか、先行して偵察でもしてきたのかは不明だが、3人の言う通りであれば、これから先は警戒が必要だ。


「リシア」


「うむ、聞こえている。全軍、第1種警戒態勢!!」


 俺が声をかければ、心得たとリシアは全軍に警戒するよう声をかけた。

 阿吽の呼吸とはこの事か。

 いや、単にリシアが優秀なだけだな。

 人に恵まれてるな、と思いつつ、警戒態勢で先へと進んで行く。

 進んだ先に見えたのは、怯えた様子の帝国軍と、その先の国境に展開する、バイレンド傭兵団の姿だった。

 パッと見では、帝国軍に損耗は無さそうに見えるが、かなり様子がおかしい。

 兵士の多くが戦意喪失しており、もはや軍としては機能していなさそうだ。


「一体何があった……?」


 遠巻きに見えていた様子では、状況の全容を知る事ができなかったので、俺は双子とリシアたちを伴い、ヴァルツを前に進ませた。

 そして、状況を嫌でも理解させられてしまう。


「貴様が我々の3番隊を潰した、ハイト・リベルヤという者か!?」


 そう大声を張り上げるのは、国境に展開するバイレンド傭兵団の中から馬に乗って歩み出てくる、1人の大男。

 身長もさる事ながら、鍛え上げられた肉体――特に四肢は丸太のように太く、乗っている馬が今にも潰れてしまいそうだ。

 戦場で出会ったのなら、絶対に真正面から戦いたくはない相手だな。


「ハイト、あれがバイレンド傭兵団の総団長よ」


 後ろから、エスメラルダが耳打ちしてくる。

 なるほど、と納得すると同時に、隻眼の率いていた部隊は、バイレンド傭兵団の中では弱い部類だったんだな、と理解させられてしまう。

 とはいえ、ここで気後れしているわけにもいかないので、俺は少しヴァルツを前に進ませ、声を張り上げる。

 相手に対抗して、拡声の魔術は無しだ。


「いかにも、俺がハイトだ! 俺に何か用か!?」


 お呼びとあれば、一騎打ちでもしてやりたい所だが、正直な話、負ける可能性が脳裏を過ぎる。

 あの肉体を見るに、絶対に筋力では敵わないし、持久力なんかも足りないだろう。

 まだ身体が出来上がってない事を考慮するなら、絶対に戦いたくはないな。


「貴様は、最弱とはいえ我々バイレンド傭兵団の部隊を一方的に打ち破った! オレはその功績を称えに来た! 誇るがいい! 常勝無敵を謳うバイレンド傭兵団を正面から下したと! だが、次は無いと言っておく!」


 大男は、言いたい事を言って、小国家群方向へと馬首を返して去っていく。

 その後ろに展開していたバイレンド傭兵団が、整然とその後に続いて去ってしまい、場が静寂に包まれた。

 マジで、一体何だったんだ……?

 まるで狐に摘ままれたような気分だったが、バイレンド傭兵団が去っていった後に、血みどろの死体が大量に転がっている事に気付く。


「ソリド将軍、これは一体……?」


 遠目からでは死体が何かはわからなかったので、動ける兵士たちに死体を一ヵ所に集めるよう指示を出してから、事情を知っているであろうソリド将軍の下へ向かった。

 彼は、指揮所となっている天幕の中にいたが、覇気の無い顔で俺を見てから、大きく息を吐く。


「……情けない所を見せた。まさしく、化け物とはああいう手合いの事を言うのだろうな」


 ぽつりぽつりと、ソリド将軍は事の発端を語り出す。

 何事も無く、捕虜とした連中を国境の方に放り出し、様子を伺っていた所、彼らは国境付近に固まって集まり、武器も無いのに隊列を組みながら、何人かを偵察や伝令に出した。

 夜が明けても彼らは国境付近から動かず、何かあっても対応できるよう、帝国軍は地の利のある崖上でジッと待ち構えていたのだ。

 彼らが夜を徹して見張っているタイミングで、連合国の出した伝令が到着し、現状は問題無しと返事を出したのが、早朝に俺たちに届いた。

 そして夜が明けて、俺たちが国境に到着する1時間前くらいに、バイレンド傭兵団の総団長が率いる軍勢がやってきたのだが、帝国軍が身構えたのも束の間。

 総団長が単騎で先行し、味方であるはずの捕虜になっていた部隊に、大剣を振るって襲い掛かったそうな。

 阿鼻叫喚の中、彼はたった1人で10分もかけずに200人を殺し切り、何も言わずに俺たちが来るまで布陣していたらしい。

 その様子にすっかり兵士たちが怯えてしまい、ソリド将軍自身も、このまま戦闘に入れば勝ち目は全く無い、と理解させられて(わからされて)しまった。

 それが、今のこの惨状、というわけだ。

 なるほど、と思う反面、帝国兵は運が悪かったな、と思う。

 とはいえ、人的な被害は一切無いというのは救いだな。


「ハイト、死体を集め終わったぞ」


「わかった、今行く」


 状況を把握した所で、リシアから死体を集め終わったと報告が来たので、俺は死体を魔術で纏めて焼却するために、ソリド将軍のいる天幕を後にするのだった。

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