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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり10人目②

2025/12/21 気付くと注目度ランキングとやらに70位で載っていました。

100位以内に入ったのはかなり久しぶりですね。

よりたくさんの人の目に止まってくれると嬉しいです。

「さて、と。とりあえず国境は難なく越えられたな」


 陛下に会ってから2日後、物資を集めたりして準備を整え、俺たちは教国へ向けて出発した。

 今回は少数とはいえ軍を率いての移動なので、それなりの移動時間がかかったが、軍の全てを騎兵で構築していた事もあり、12日ほどで国境を越えて教国内に入る事に成功。

 さすがに3大国によるメスが入った後だからか、国境警備はキチンと規則に則ったもので、賄賂を要求されるような事も無く、サックリと国境を抜ける。


「ここからは何があるかわからん。警戒を怠らないように」


 既に敵地に入っているという事もあり、リシアが改めて警戒を強めるよう声をかけており、兵士たちも整然と返事を返す。

 数ヵ月間とはいえ、リシアの調練能力には驚かされるばかりだ。

 元々それほど練度が高くなかったラウンズの領軍を、とんでもなく精強な軍へと鍛え上げてしまった。

 良くてCランク冒険者レベルの者が殆どで、本当に最低限の治安維持をこなす程度しかできなかったはずが、今となっては平均がBランク冒険者レベルまで上がり、指揮官や一部の強者はAランク冒険者にも手が届くかもしれないくらいだ。

 そんな兵士たちは己の役割を理解し、リシアという総指揮官の指示の下、統率された一つの巨大な群体のように動く。

 あまりに鮮やかな手際で、思わず嘆息してしまう。


「まずはサンクリドに向かおう。諜報部隊もそこにいるはずだし、まずは合流して拠点確保と情報集めだ」


 どれだけの長丁場になるかもわからないし、何が起こるかもわからない。

 とにもかくにも拠点を確保しておく事は必須だし、補給なんかも考える必要がある。

 幸い、資金に関しては陛下からそれなりのものを貰っているし、そもそもリベルヤ家としても別口で軍事行動予算を組んでいるので、軍資金が枯渇する心配はほぼ無いのは安心できるか。

 教国の今の状況は不明瞭だが、3大国が手を入れた時点で、物流なども普通になっているはずだ。

 経済封鎖などが無ければこれといって問題は起こらないはず。

 色々な想定を脳内シミュレーションしながら、俺たちは教国首都、サンクリドへ向かう。




……

………




「伝令! 前方に怪しい集団を発見しました!」


 あと1日でサンクリドに着くかといった道程の所で、斥候として放っていた兵士が怪しい集団を発見したという報告を持ち帰ってくる。


「規模や特徴は?」


「統一性はありませんが、武装した集団です。服装からして軍などではないと思われます。大きな馬車を護衛しているようにも見えたので、隊商かもしれませんが、それにしても雰囲気が物々しかったように思います。人数としては、20人程度でしょうか」


 リシアが伝令を伝えてきた兵士に状況を詳しく確認しているが、俺はなんとなくここに来て考え付くものがあった。


「リシア、一度その集団と接触しよう。俺の読みが正しければ、何か今回の件に関わる情報が得られるはずだ」


「うむ、承知した。これから、本隊でその集団と接触する。気づかれぬようその集団を追跡し、絶対に逃がすな」


 リシアの指示を受けた兵士は敬礼をしてから、慌ただしく去っていく。

 ああ、それはそうと荒事にも備えておかないと。


「多分、戦闘になる。読みが外れてなければ、だけどな」


「ハイトの勘は侮れんからな。そういうものとして動くとしよう」


 俺の勘を全面的に信用する、とリシアは白い歯を見せて笑う。

 なんというか、美少女なんだけどリアクションが男前なんだよなあ。

 そんな感想を俺が抱いていると、リシアが大きく息を吸う。


「全軍に通達! これより、総員戦闘配備! 対人戦仕様だ!」


 よく通る大きな声で、リシアが指示を飛ばせば、兵士たちがすぐに動き出す。

 指示を出してからの兵士たちの動きが、淀みなく素早い。

 幾度となく訓練を繰り返し、完全に習慣レベルにまで落とし込まれたその動作は、彼らが精鋭と呼ばれるに相応しいものだ。

 少しだけ移動速度を上げ、怪しい集団に追い付くようにすれば、30分も移動した頃にはその集団が見えてくる。

 確かに、報告にあったように統一性の無い、武装した集団。

 それ以上に、俺には見えるものがあった。


「……竜人族」


 その存在を知るからこそ、気付けた偽装の魔術。

 希少種族がその身を守るため、人間に溶け込むための術である。

 前方の集団のほとんどが、魔術で人間に見せかけている竜人族だ。

 人間もちらほらと混じっているが、割合としては数人程度。

 脳裏に、以前聞いた情報が過ぎる。


『竜人族の里と、教国の間に物資の流れがある』


 確たる悪事の証拠は無いものの、あの糸目の胡散臭い竜人族の男を思い浮かべて、俺は今回の件が思っていたよりも複雑な気がしている。

 問題は、教国だけではないのかもしれない。

 とはいえ、証拠も何もあったもんじゃないので、憶測だけで行動を起こすわけにもいかん。

 まずは手がかりに繋がりそうな、目の前の集団からだ。


「まずは俺が声をかける。魔術防壁を事前に展開しておくから守りは心配しなくていい」


「あなたねえ……」


 真っ先に危険へと晒される場所に自ら赴こうという俺の意見に、側近兼護衛であるエスメラルダがこめかみ辺りに青筋を浮かべる。

 とはいえ、これは相手をハメるための仕込みでもあるのだ。

 譲るわけにはいかない。


「俺のような子供から声をかけた方が、相手の油断を誘えるからボロを出しやすいだろ。それに、この場で一番守りが固いのは、俺だろ?」


 この場で破壊力という1点においては、最強のカナエの全力を、真正面から防げるのは俺の魔術だけだ。

 もちろん、俺も全力で守りに回る必要はあるが。

 この役割を誰かに譲った場合、至近距離から不意打ちを受けた際に、被害が出る可能性もある。

 しかし、俺なら事前に防御を張っておけるし、至近距離での不意打ちに関しても物理と魔術に両対応可能。

 これ以上に適任はいないはずだ。


「……カナエを連れていきなさい。これが最低条件よ」


「元よりそのつもりだよ」


 俺の判断そのものを否定する材料を見つけられず、苦虫を噛み潰すように顔をしかめたエスメラルダが、カナエを連れて行く事を条件に折れてくれた。

 元より直感と悪意の感知に優れるカナエは連れていくつもりだったし、予定に変更は無い。


「リシア、軍の指揮は任せるぞ」


「うむ。ハイトなら問題無いとは思うが、気を付けるようにな」


 こちらを窘めてきたエスメラルダとは対照的に、リシアは全幅の信頼を持って俺を送り出してくれる。

 まあ、エスメラルダは役割上、口うるさくなるのもしょうがない部分もあるのだが。

 ともあれ、俺は隣にカナエと数名の兵士を伴い、ヴァルツと共に謎の集団に向かって駆けていく。

 謎の集団はこちらに気付いたようだが、徒歩ではどうあがいても逃げられない。

 それに気付いていたのか、はたまた隠すような事など無いと言いたいのか、特に逃げる素振りも見せず、落ち着いた様子だ。


「そこの集団、止まれ!」


 俺が馬上から大声で呼び掛ければ、謎の集団は歩みを止め、俺たちを見据えて下卑た笑みを浮かべる。


『不愉快な視線だ。こやつら、我が雷で殺してやろうか』


『落ち着け。情報を取るまでは死なせられちゃ困る。少し我慢してくれ』


 ブルル、と短く声を上げ、不機嫌そうな念話を送ってきたヴァルツを同じ念話で宥めつつ、謎の集団の道を塞ぐよう、立ち塞がる。

 どういった反応を返してくるか、と思えば、馬車の中から屈強そうな大男が下りてきて、こちらを睥睨してから鼻を鳴らす。


「ガキが、何の権限を持って俺たちを止める?」


「3大国のリアムルド王国から、教国の出した治安維持の協力要請を受けている。その馬車の荷を検めさせてもらおうか。何も無ければ通っていい」


 教国から、正式に依頼を受けていると声に出せば、大男は不機嫌そうに顔を歪め、左手を挙げる。

 その瞬間、それを合図にして怪しい集団が襲い掛かってきたのだが……。


「鼻の効くヤツだ。だが、運が悪かったな。俺たちは――」


 俺たちがたったの数騎だと侮ったのか、大男は余裕の笑みを浮かべたが、その言葉の先は、凄まじい轟音にて掻き消されたのだった。

響き渡る轟音。

一体発生源は誰でしょうね?(すっとぼけ)

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