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ワケあり奴隷を助けていたら知らない間に一大勢力とハーレムを築いていた件  作者: 黒白鍵


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ワケあり9人目㉑

「なあ、レイネスタ」


「何?」


 ラウンズへと戻る準備をしながら、執務室で寛いでいるレイネスタに声を掛ければ、彼女は姿勢を変えずに返事だけを返してきた。

 まあ、今は他の人がいないからいいか、と思いつつ、陛下に相談されていた事を伝える。

 余剰時間があれば王城に納品する装備を作ってくれ、という話だ。


「要求される品質によるかな。剣とか槍とか盾は、数打ちの鋳型生産でいいなら、合間でも品質の高いものはそれなりに数作れるケド、鎧は人によってサイズとか違うから、ちょっと面倒」


 返ってきた答えは、合間でも制作は可能との事。

 農機具とはまた工程が違うから、並行して作業は進められるそうな。

 とはいえ、先に注文を受けた農機具が優先だから、鋳型を使えるものなら月に10前後、そうでないなら月にいくつかが限度らしい。

 まあ、その辺は陛下とやり取りをして細部を詰める事になるか。


「わかった。陛下には一応受けられる方向で話を進めていいか?」


「それでいーよ。農機具の方が鉄だけで作れるから、手間もかからないしね。どのくらいの品質のものが欲しいか確認したら、アタシが値付けするよ」


 とりあえず話は纏まったので、あとは彼女がどう年始を過ごすか確認しておこうか。


「OK、仕事についての確認は終わった。年始の間はどうする? この屋敷にいてもいいし、家族の所で過ごしてもいいし、俺と一緒に領地に来てもいい。どうしたい?」


「んー……一緒に行こっかな。おじいちゃんたちは王都に戻ってきたらいつでも会えるし」


「それなら、その方向で話を進めるぞ」


 シャルには既にレイネスタを迎え入れた事を手紙で知らせてるし、彼女の事だから受け入れ準備もしているのではないだろうか。

 とはいえ、それをアテにしすぎるのも良くないので、念のため先んじて手紙を認めておく。

 出発自体は明日だし、先触れであれば充分だろう。

 ラウンズとの行き来そのものは馬車なら半日もあればいける距離なのがありがたい限りだ。

 それこそ本気のヴァルツの脚なら1時間程度で着くし。


「アタシは何か準備いる?」


「身体だけでいいぞ。あとはまあ、着替えとかだけは持ってくれ。向こうにはレイネスタ用の服は無いからな」


 レイネスタは身体のサイズが特殊すぎて、既製品だと基本的に合わない。

 こっちで色々と衣類は購入したけど、向こうにはそもそも合うサイズの服を売ってる店があるかは不明だし。

 であれば、自分で着替えを持って行ってもらうしかない。

 馬車がラウンズにある都合上、レイネスタと二人でヴァルツに乗って戻る事になるしな。

 鍛冶仕事については年始休み明けからスタートだし、予定通りに進むのなら、ラウンズ側の代官に目処が立ってるから、割とすぐに王都に戻って来れるはず。

 俺の活動方針上、やはり基本的には王都に拠点を置く事になるし。


「はーい。それじゃ、アタシも準備するかな。あ、ヨツアシくんはどうしたらいい?」


「ヴァルツについてこれるなら、一緒に連れてってもいいけど、基本的には留守番させた方がいいんじゃないか?」


「それもそっか。りょーかい」


 今や4足歩行のゴーレムの飼い主になったレイネスタだが、ヨツアシくんという名前も付けて、ちゃんと飼い主としての自覚があるようで何よりである。

 ネーミングセンスについては……ノーコメントかな。


「あとはサクスさまと王女さまたちが滞在するから、準備をしておかないとな」


 2の巡り(日本風に言うなら2月)から、ラウンズに王族の皆さまが滞在する事になっているから、色々と準備もいる。

 とはいえ、見られて困るものがそうあるわけでもないので、本当にヤバいもの以外は別に見せても大丈夫だろう。

 見せられないのは、料理のレシピ集かな。

 こればっかりは前世の記憶フル活用で旨いものを食べるために尽力したし。

 変にこれでレシピ関連まで仕事が増えると、いい加減に首が回らなくなりそうだ。


「ああ、そういえばギルドにも顔出しておかないとな」


 S級に昇格したから、資格証も更新で預けっぱなしだから回収して、ブライアンさんにも挨拶しておかないと。

 そう考えると、結構やる事があるな。

 思い出してからすぐに外出の支度を済ませ、屋敷の馬に乗ってギルドへ向かう。

 さすがに街中の移動で、ヴァルツを駆り出すのは機嫌を損ねそうだったし。


「これはこれはハイト様。お預かりしていた資格証をお返しいたしますね」


 ギルドに到着してから、受付に顔を出したら俺の担当職員であるイケオジが、更新の終わった資格証を渡してくれた。

 S級まで昇格したからか、資格証が黒地に金の縁取りをあしらった高級感溢れるものに変わっており、見ただけで価値あるものだとわかる。


「ありがとうございます。これから、年始休みに入るので、しばらく領地の方に引っ込みます。ギルドマスターにもよろしく伝えておいて下さい」


「かしこまりました」


 ギルドマスターへの伝言をイケオジに残し、俺はギルドショップの方に向かう。

 ショップの方には、いつも通り仏頂面で店番をしているブライアンさんがいて、俺の姿を見て相好を崩す。


「おお、ハイトじゃないか。S級に昇格したって聞いたぞ!」


「おかげ様でな。年齢も考えたら荷が重い気もするけど」


「なーに言ってやがる。お前が思ってる以上に、お前には実力があるんだ。もっと胸張ってしゃきっとしろ」


 活を入れるように背中を引っ叩かれ、結構な痛みだったので、ブライアンさんを睨む。

 しかし、当の本人は気分良さげに笑うのみ。


「年始はどうすんだ?」


「領地に引っ込んで年始休みだな。今年1年、相当に濃厚だったから、さすがに何も考えずに休みたいね」


「そうか。それならしばらくは会えそうにねえな。俺も年始は短いながら休みだし、領地に引っ込むってんなら、しばらくはかかるんだろ?」


「順調にいけば2ヵ月くらいで王都に戻ってこれると思う」


「そうかそうか。ま、年始くらいゆっくり休んで英気を養うんだな。じゃ、いい休みを!」


 さっくりとブライアンさんに挨拶を済ませ、俺はギルドを後にすべくホールの方に出る。

 すると、ホールに見知った顔がいくつかあったので、せっかくだからと声をかけに向かう。


「ギルバートさん、それに老練の戦鬼(オールドウォーデン)さんに奇異の魔術師(トリックスター)さんも。お久しぶりです」


「おお! 久しぶりだなハイト! ついさっき、ギルドに来ていると聞いた。ここで待っていれば会えると思っていたぞ。まずはS級昇格おめでとう!」


「息災で何よりじゃ。ギル坊に同じく、S級昇格おめでとう」


「お二方に同じく、おめでとうございます。君とは魔術について色々語らいたかったですが、お互い忙しいですね」


 話を聞くに、どうやら3人とも俺のS級昇格を祝いに来てくれたらしい。

 なんというか、嬉しいけど、こそばゆいな。


「ささやかだが、お祝いをさせてくれ! これは俺たちフィティルからだ!」


「これは儂からじゃ」


「僕からはこれを」


 そう言って、彼らは俺へと祝いの品を手渡してくる。

 それぞれ梱包されているので中身はわからないが、恐らくは結構なものをそれぞれ用意してくれている気がするな。

 ちょっと開けるのが怖いまであるぞ。


「皆さん、何だかすみません。ありがたく受け取らせていただきますね」


 とはいえ、変に遠慮するのも失礼かと思い、俺は両手いっぱいに祝いの品を受け取った。


「本来であれば、一緒に食事とでもいきたい所じゃが、いかんせん次の依頼があるのでな。顔を合わせられただけ良しとしておこうかの。少年、また元気な顔を見せておくれ」


「僕も次の依頼があるので、失礼しますね。もう少し実力者が増えて、僕らの負担が早く減ってほしいです」


 相変わらず、S級の2人は忙しいようで、すぐに去って行ってしまう。

 もうちょっとだけお礼を言いたかったけど、予定があるなら仕方ないか。


「ハイトはこれから年始休みか?」


「そうですね。明日領地に戻って、しばらく休みます」


「そうか。忙しいとは思うが、そのうち、またギルドで一緒に飯を食ったりしよう。うちのメンバーもハイトに会うのを楽しみにしているぞ」


「他の皆さんは?」


「先に年始休みに入った。俺はクジで負けてな。まさしく貧乏クジってわけだ!」


 相変わらず、豪快で明るいギルバートさんと少し語らい合ってから、俺はギルドを後にする。

 この1年間で、俺が築き上げてきた諸々が、一気に結実したような、そんな感覚だ。

 どこか満ち足りた感覚を覚えながら、俺は屋敷へと戻っていくのだった。

今回でワケあり9人目は終了です。

次回からワケあり10人目が始まりますのでお楽しみに!


1年の総決算、という事で少々懐かしの面々も登場させてみました。

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