夕方、窓辺で。
ボロっちいアパートの窓際に座って本を読む。
夕方の西日がきついけれど、それもそれで何かこう、いい。うまく言葉にできないけれど。
差し込んだオレンジの光に包まれて、白い毛玉も紅く染まりながら、一層丸みを増してすやすやと寝息を立てている。
あまりに心地よさそうだから、悪戯に鼻のあたりをこしょこしょ、と擽ったら全身を振るわせてくしゃみをした。
それからまた何事もなかったように鼻ちょうちんを作り始める。
僕はその頭を二、三回撫でてから、視線を活字に戻した。
とりとめのない日々の楽しさを綴った、短い話。
何事も無く流れていく毎日に、だけどたまに起こるちょっとした騒動。穏やかな雰囲気が好きで、幾度となく読み返した本だ。
―――コイツとの出会いも、僕にしてはちょっとした騒動だった。
日常にふと、非日常が一滴だけ溶け込んだように。
コイツは少しだけ、僕の人生に、ほんの少しだけ変化をもたらした。
もしコイツが僕の前に現れなくても、やっぱり僕は今と同じように、何も変わらない毎日をすごしていたであろう。
コイツが来たからと言って、何か物凄く大きな騒動に巻き込まれるわけでもない。
特別な使命を果たさなければいけないわけでもない。
ただ僕の人生に、コイツが来て、コイツがいる。
それだけだ。
コイツがいるか、いないか。
それだけだ。
だけど、やっぱりコイツは僕の毎日に少し変化をもたらした。
日常のあり方を、少しだけ変えた。
ただ毎日が流れていくだけだけれど、その隣に、コイツがいる。
ほんの少しだけど、僕はその変化を気に入っている。
とても、気に入っている。
そして、そのちょっとした変化が、今度は僕の中で新しい日常となった。
そうして、少しの変化を繰り返しながら、僕とコイツは、やっぱり隣同士にいるのであった。
何事もなく流れる毎日に、だけどたまに起こるコイツとのちょっとした騒動。
そんな毎日が、僕はとても気に入っている。
とても好きだ。
「ポム」
もう一度、眠っているソイツの頭に手を置いて、名前を呼んだ。
するとソイツは一つ欠伸をした後に、こちらに顔を向けて、「ぽむ」と鳴くのであった。
ここまでお読み下さりありがとうございます……!
刺激的なこともいいですが、穏やかな、それこそ時の流れに身を任せるような日もとても重要なんじゃないかなと、思います。
ゆっくり空を見上げることにだって、意味はあるんだと思いますよ。
それでは次回もお読みいただけたら幸いです……!




