いらいら、がおー!
「ああああああああああああああああああああもう!!!」
縮こまった住宅街のさらに狭い一角にある、部屋数もさほど多くないアパートに、苛立ちの混じった怒号が響き渡った。
『音源地』は階段を上がってすぐの一室だった。
珍しい怒り声に、その部屋の角で丸くなっていた白い毛玉はぴくっとはねた。
それから声の主に視線を向ける。
「信じられない!!!99もあったんだよ!!!一気に40にダウンだよ!!!ふざけんな!仲間は動かないしむやみにジャンプしてくるし塗らないといけないルールで爆発系統の武器もってくるし!!!」
声の主は、お互いの陣地をインクで塗り合って勝敗を競うという今や国民的人気の某テレビゲームを遊んで午後をすごしていた、飼い主であった。
彼はそのゲームのなかにある、「マジマッチ」という自身の腕前を競い合うモードで奮闘していたところで、最初こそ調子はよかった物の時間がたつにつれ勝てなくなり、それに伴い機嫌もわるくなってきていた。
「ふざけんなよほんとに!あと一勝すれば良かっただけなのに!!ずるずると下がりまくってんじゃねえかっ!!なんなんだよったくよ!!」
普段とは似てもつかない言葉使いで憤慨している自身の主人を、白い毛玉は興味深げに眺めていた。
「ああああああ、やっぱあそこでやめときゃ良かった。やめるべきだった。99になった時点で欲を張らず明日に持ち越しておけばよかった。ああああもうう自分の判断にさえ腹が立ってくる!!」
テレビとゲームの電源を半ば乱暴に落として、今度はぶつぶつ呟きながら部屋の中をぐるぐると回り始めた。
台所で、水を張った鍋に水滴が落ちてぴちょんと音を立てた。
気に障ったのか、飼い主はちっと舌を鳴らした。
空気がピリピリする。
居心地が悪そうに、ポムはそれを眺めていた。
しばらくして少しはマシになって来たものの、いつまでも腹の虫がおさまりそうにない飼い主に、いよいよポムも我慢できなくなったのか、飼い主の頭に飛び乗って「ぽむ!!」と一声あげた。
すると、
「うっせーよ!今それどころじゃないんだ、あっちいってろ!」
と返された。
むっとなって、それからふぅ、と白い毛玉は溜息をついた。
ご主人の頭から飛び降りる。
そして、「ふわぁーーっ」と息を吸い込んだ。
「あそこまで上げるのにどれくらいの時間かけたとおもってんだよ……ほんとによ……」
ちょんちょん、と肩をつつかれる感覚。
またポムか、あっちいってろと言ったくせになんなんだよ。
そう思い振り向いてみると。
「ひっ!?」
彼はその場に凍り付いて動けなくなってしまった。
そこには自身の倍以上ありそうな白い巨体に、ぱっくりと裂けた巨大な口を広げた恐ろしい風貌の何かがたっていたからだ。
「な、なななななな……」
あまりの驚きに声が出てない飼い主に、それは歩み寄る。
「ぽむ~」
それは低い声でそう鳴いた。
「ぽ、ポムなのか……?なんでそんな姿に……」
「ぽむぅぅぅぅ!!!」
「ひぃえ!?」
「ぽむーーーー」
「な、なにを一体……」
しばらくの間、沈黙。
二人は見つめ合ったまま、ピクリとも動かなかった。
だけどやがて、飼い主が何かを悟った様に「そうか……」と呟いた。
「そうか、そうだよな……。僕が悪かったよ。ゲームで勝てなかったからって、あんなにイライラすることないよな。お前の言う通りだよ……」
「ぽむ」
「ああ、分かってるさ。でも、僕も真剣だったんだ。それで勝てなくて悔しい気持ちは分かってくれるよな」
「ぽむ」
「うん、そうだよな。次勝てばいいだけの話だよな。落ちた分もまたすぐ上がるさ。ごめんな、僕もカッとなってしまったから……」
白い巨体は、するすると空気がしぼんでいく風船のように、いつもの毛玉に戻っていった。
それからポムは、自身の主人の頭に飛び乗った。
飼い主はポムをぽんぽんと撫で、「気分転換に美味しいものでも食べにいこうか」と問いかける。
ポムは賛成!と頭の上で飛び跳ねる。
「まずは大声出したこと、アパートの皆さんに謝ってまわらないといけないなー」
「ぽむー」
そうして笑い合いながら、一人と一匹は部屋を後にするのだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
久しぶりの投稿で申し訳ございません。
はい。あのゲームです。
私もバシャバシャ頑張ってはいるのですけども、中々難しいですよね。うまくなりたい。
次回も読んでいただけたら幸いです。それでは!




