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ポム  作者: 天野 うずめ
11/16

お魚、料理しよう。

「あー……しまったなぁ」

昨日の夜から何かが足りないとは思っていたんだ。

まさかこれだったとは。うっかりしていた。


「ポム、ハマチ忘れてたみたい」

ぽむ、と一声鳴いたのは、返事だったのか寝言だったのか。



昨日の夜、僕は友人数人とお金を出し合い、とても素敵で楽しい催しものを開催した。

と、言ってもそんなに大したものではない。

毎月恒例の『美味しいもの作って食べようぜ』パーティだ。

ここのところ鍋物が続てしまっていたけれど、今回は誰が提案したか、「手巻き寿司にしようぜ」の一言で手巻きパーティが行われることになった。


もちのろんで魚は高い。

切り身でパックになっている生食用の魚を数種類―――マグロ、サーモンと王道を始め、イカ、甘海老、さらにはウニと、物凄く豪華なラインアップで、手巻きパーティは華々しく幕を開けた。

大きなお皿がいっぱいになるくらいの量で、その豪華絢爛な様子を見るだけでも心が晴れ晴れするようであった。

ノリに酢飯を乗せて伸ばして、そこに好きな刺身と大葉を乗せる。適当に手で丸めてほおばると、新鮮な海の幸が口の中で踊りを披露するかのような幸せな感触が広がっていった。

もちろんポムも宴会の仲間であったので、この白い毛玉も例外なく手巻き寿司に舌鼓をうっていた。

一つ一つを味わって食べるかのように、手巻きを口に運ぶごとに気の抜けた表情となって身体をコロコロと左右に揺らしている姿は、なんとも愛らしいものであった。

僕も含めて、男四人と毛玉が一匹。うまいうまいとあっという間に間食して、手巻き寿司パーティはお開きになった。

全員酒が飲めないので、その後あまりにもグダグダすることもなく、サクッとそれぞれ自身の家へと帰っていった。


そんなわけでとても素敵なパーティであったわけだが、日が空けて今日。

休日なのでお昼ぎりぎりに起きた僕は、朝昼兼用で何か適当にご飯でも作って食べましょうかと、冷蔵庫を開けたところ、無残にも昨日のパーティの主役となれずに一人取り残されたハマチを発見したのであった。いや、一匹か。


「いやー、こいつも買ってたっけなぁ……。すっかり忘れてた……」


こういうことはたまにある。うっかり用意していた食材を使い忘れたりした準備していた料理が頭からすっかり抜け落ちて別のものを作ってしまったり。

僕のおふくろもよくやっていた記憶。

「ポムー、どうしようか」

もぞもぞとこちらにはいよってきた毛玉に声をかけると、ポムは一声ぽむっ!と鳴いた。

「え、他になにがあるのかって」

「ぽむ!」

「えー、そんなにないよー。男子一人暮らしなめんなよー。冷蔵庫なんて充実してるわけないじゃないか」

「ぽむー」

「え、醤油?まぁ、一応昨日手巻き寿司だったし?」

「ぽむー!」

「そうだねー、そうすっかー」

「ぽむ」


とんとん、と必要な調味料などを棚からだしながら、ハマチのパックをあけていく。

ポムがぴょこんと、頭に乗ってきた。

「ボウルだしてよ」

「ふぇー」

「嫌そうな顔しないで、はやく」

「ぽむー」

ボウルに酒、みりん、白だし、醤油を加えて、混ぜ合わせる。

少し、味見して、

「からっ」

みりんを足した。

男の手料理だから、などと言ってしまうとちゃんとやっている男の人に失礼かもしれないが、分量は計らず大体勘でつくる。

適当にやっていけば割となんでも上手くいくものだ。

少なくとも、今まではなんとかなってきた。

だからまぁ、今回も感覚に任せてやっていこう。


ハマチを半分に切ると、ポムが少し反応した。

「はいはい、そうだよ。一個はポムの分ね」

というと、ポムは目を輝かせる。分かりやすい奴だ。

先程作ったタレを半分くらい、別の容器に入れて、そこにハマチを浸らせる。

「少し染み込ませるけど、これでいいのかな?」

「ぽむー?」

やってる間に、フライパンを温めて、丁度いい温度にったらごま油を引く。あまり入れすぎない様に注意して、フライパンを動かして油を伸ばした。

独特の、良い香り。

「よし、投下―」

フライパンにハマチ投入。

じう、と素敵な音がして、ぱちぱちと油がはねる。少しだけ火力を弱めて、ちょっと放置。

その間に昨日の酢飯を作った時に余ったご飯をチンして、即席の味噌汁を作る。

「うわぁ、ぎりぎり」

ポットのお湯が丁度なくなった。

「電源切っておかないと。後でまた沸かさないと」

「ぽむ!」

ハマチをひっくり返して、先程残しておいたタレを少しだけ回しこむようにかけた。

色合いと立ちのぼる香りから濃さを見てまたタレをかけて調整する。

濃すぎても辛いので少しづつ。

良い具合に焦げ目がついたら火を消して、お皿に乗っける。

完成だ。

ハマチの照り焼きっぽいゴマ風味焼き。

「はい、こっちのがポムのね」

「ぽむー!」

「ほい座った座った!めしじゃめしじゃ!」

「ぽむぽむ!」

ご飯は左、お味噌汁は右。おかずを真ん中に置いて、僕も席に着く。


今日も、こうしてご飯が食べられることに感謝します。

全ての生き物の命と、僕の生きる糧となってくれた食材に、

「いただきます」

「ぽむ!」


「うん。美味しい」

やっぱり日本人は魚だ。

と、僕は思う。

「しかし、お刺身用の魚を焼いて食べるなんて、ものすごい贅沢だよねぇ」

「ぽむー」

「もともとお刺身ようだし、若干生でも安心だね」

「ぽむ!?」

「いやこれはしっかり焼けてるから大丈夫。焼き過ぎて固くなったわけでもなく、焼き足りなくて生に近いわけでもなく、絶妙なポイント」

「ぽむ~!!」

「そらよかった」


これで昨日パーティに参加できなかったハマチも少しは浮かばれただろう。美味しく焼けて良かった。


それは、もう少しで太陽が空のてっぺんまで登ってくる時間だった。

ごちそうさまでした。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

ハマチ!英語で言うとイエローテイル!

成長するとブリ!

もともと稚魚からの成長の過程で呼び方が変わる魚らしいですね。


僕も大体感覚で料理をするタイプなのでハマチの焼き方があれでよかったのかどうか。もしかしたら間違ってるかもしれませんが、僕がやった時は美味しかったです。

何かもっと上手な方法があるのでしょうか。


次回も是非、読んでいただけたら幸いです。

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