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ポム  作者: 天野 うずめ
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ワンちゃん、隊長。

犬はワンと鳴く。

猫はニャーと鳴く。


犬の鳴き声は、欧米ではBark Bark と表現するらしい。

猫の鳴き声は、Meow と表現するらしい。


ポムはやっぱりぽむと鳴く。

欧米では、こいつの鳴き声はどう聞こえるのだろうか?



ドッグランにやってきた。

この白い毛玉が犬なのかどうかはさておき、たまにはいつもと違う場所で遊ばせてみるのもいいだろう。

それに、他の犬たちとの触れ合いも楽しんでもらいたい。

まぁハッキリ言うと、コイツが犬ではないと他の犬たちは認識するのか興味が湧いた。


「んで……」

僕は隣でウキウキしている人の姿に目を向けた。

「あなたはなんでついてくるんですか」

「えっ、ダメ!?」

美人さんは簡素で動きやすい服装に、メッシュ地のキャップをかぶっていた。その後ろから、ポニーテールをなびかせている。

犬と触れ合う気満々だ、この人。

「ダメではないですが……僕が言っているのは、なぜあなたが今日ポムと僕がここに来ることを知っていたかということです」

『僕とポムが出発しようとした瞬間にたまたま遊びにきてそのままついてくることになった』という偶然を装ってはいるが、僕はそれが偶然でないことくらい知っている。

証拠は彼女の服装と持ってきたリュックの中身だ。

フリスビーにボールにぬいぐるみ、さらには犬用のおやつ。自身のための日焼け止め、水筒にお弁当。アウトレジャーする気を隠すつもりもない持ち物が諸々押し込められていた。

だが一番僕に恐怖を与えるのは、出発時刻ぴったしに僕の家に来たということだ。

僕はこの施設に来ることも、朝何時に出るかということも、昨日の夜寝る前にポムに言っただけで、他の人には伝えてするいない。

なのに彼女はここに来た。

最早盗聴器でも仕掛けられているんじゃないかと疑ってしまう。彼女ならやりかねないところが恐ろしいところである……。

まぁ彼女はもともと犬好きだし、おとなしく遊んでてくれるだろう。


ともあれせっかく来たのだから、ポムに目いっぱい遊んでもらいたい。普段はよくても公園で、なかなか広いところで遊ぶことができないのだ。できる限り楽しんでもらわなければ。

とりあえず最初は雰囲気に慣れてもらうために一緒にボール遊びでもするとしよう。何故か心を読んだようにピンクのボールを手渡してきた美人さんを若干気味悪く思いながらも、僕はポムと向きあった。


「ポム、ほれ。ボールを落とさずに何回トスできるか勝負だ。お互いにトスし合って、先に落とした方の負けな」

「ぽむ!!」

かかってこい!と言わんばかりに鼻息を荒くした。

「それじゃあスタートだ!」

僕はポーンとボールを高く上げた。

まずは小手調べだ。ポムよ、どう返してくる?

「ぽむー!!」

一声。そして跳躍。

僕が放り投げたボールが最高到達点に達すると同時に、ポムがそれを強烈な勢いでそれを僕の足元に叩き落とした。

びゅん!!

頬の近くで風を感じた僕は動けなくなっていた。

「こふー、こふー」

シュゥゥゥゥゥゥ……。

野生に戻ったようなポムの呼吸と、ボールから発する蒸気が、その威力を物語っていた。

どっちの勝ち?ポムが視線で問いかけてきたが、僕は応えることができない。


僕が脳裏に浮かべたことはただ一つ。

ボールの耐久力やべぇ……。



僕は少し休憩をとることにした。

ポムを美人さんに任せ、木陰で座り込む。まったくだらしないが、体力に自信のない僕にポムのスーパーメテオを受けることは、5回ともなると限界に達してしまうのだ。


僕はどっこいしょとおっさんクサイことを言いながらポムの様子を観察していた。


ポムは人語を理解する。

僕の言っていることを完璧なまでに理解して、会話、とまではいかないものの、簡単な受け答えはできる。

例えば犬も飼い主の言うことを聞き分けて芸をしたりするが、ポムのそれは犬のそれをはるかに上回る。

無邪気に犬の群れと遊んでいるポムを見ていて、僕の中に一つ疑問が浮かびあがった。


コイツに天敵というものは存在するのだろうか。

今見る限りでは、犬と仲良く遊んでいるようなので、少なくとも犬は違うだろう。

近所の野良猫と日向ぼっこをしているところも見たことがあるので、猫も違う。

この前ベランダですずめをみてたし、たまにカラスに体当たりをして遊んでいることもあるので、鳥類も違うかもしれない。


これだけじゃ断定はできないけれど、人間というある種食物連鎖の頂点に危ういバランスで君臨する生物の言語を理解する、ということは、こいつはもしかしたらどんな生物とでも、一定の距離感を保って付き合っていくことができる能力がある、ということかもしれない。

考え過ぎだろうか。


「ぽむ!」

「わんわん!!」

遠くからポムと犬の声が聞こえる。

犬が一塊に集まり、ポムがそれらの目の前に立ちはだかるような様子だ。

何かあったのだろうか。

「ぽむ!」

「わん!」

「わんわん!」

「わんわんわん!」

ポムの一声で、ずらりと並んだ犬たちが順番に鳴きはじめた。

その様子はまるで、

「……点呼をとっている……!?」


ポムを先頭に、その隊列は広場をずらずらと練り歩く。

まさか、この短時間でここにいた犬たちの統率をとったというのだろうか……?


少し、寒気がした。


もしかしたらポムは、すべての種を制圧し得るほどの能力を秘めているのかも、しれない。

ここまでお読み下さりありがとうございます!


とてもお利口さんな犬を見かけると感心してしまいます。

たまに吠え立ててくるのがいるのですけど、若干びびってしまいますよね!


次回も是非よろしくお願いします……!!

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