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神璽の魔法使いたち  作者: トータカロク
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8/13

三章ー2

 一週間後、数日練習を休むことはあったが汐は空中押印を使いこなせるようになっていた。

 薄い膜のような氷、剣状の氷、砂のように細かい氷、大小の球状などを作り出せるようになっていた。

 今、汐はイメージ通りの氷像を作ることに熱心になっている。

 黎人もどのくらいの完成度になるか興味があったが止めて、少し練習を変えることにする。


「汐先輩、今日からいなほも練習を手伝うそうです」

「いなほちゃんも?」

「どーも、汐さん」


 いなほが地下室に入ってくる。


「未莱から汐さんが店の方で契印章の練習をしていると聞いて、手伝おうかと」

「……なるほどねぇ」


 汐は半目になりながら意味深な言い方をした。


「……あはははは」


 いなほは顔を逸らしながら乾いた笑いを上げる。


「どうかしたのか?」

「なんでもないわ。そうよね、いなほちゃん」

「汐さんの言う通りです」


 黎人は不可解そうに二人を見た。

 いなほは地下室の真ん中に紙を置く。


「今から汐さんにしてもらうのは、最高速か最大力での攻撃です。今の時点のですけど」


 そう言っていなほは重承押印をすると土の壁が現れる。

 それからまた二つの紙を取り出して、重承押印をした。


「印判魔法は発動方法上隙が出来やすいから、速く強い攻撃をして隙を出来るだけ無くさないといけないんです。

 で、汐さんにはこの土壁を壊してもらうんですが」


 いなほが空中押印をすると雷が出て、土壁を壊してしまったが、すぐに元通りになった。


「土壁は再生するんで、汐さんが設定以上の威力で一撃で壊すと再生しなくなります。

 それと、再生スピードが速く、設定以内で攻撃の威力が少しでも上がると強度が上がって、その威力未満の攻撃は効かなくなります」

「なるほど、分かったわ」

「じゃあ、始めてください」


 いなほは練習を開始させた。


「俺は上ですることがあるから、いなほ頼んだぞ」

「大丈夫よ、見てるだけだになるだろうけど」


 いなほが言うのを聞きながら、黎人は上に上がって行った。

 二時間ほど経って、未莱が練習の見学に来る。

 そこには傷一つ付いてない土壁と汗まみれになっている汐にそれを眺めているいなほがいた。


「いなちゃん、練習の方はどう?」

「かなり苦戦してるから、結構掛かるかも」

「そうなんだ、とりあえず今日はもう遅いから終わらせたら?」

「もうそんな時間?」


 いなほが時計を見ると八時を過ぎようとしていた。


「もうこんな時間か。汐さん今日はもう止めにしましょう」

「私はまだいけるわ」

「急ぐ必要が無い以上、練習は程々がいいです。

 結構神経を使う魔法ですから、ちゃんと休みを取らないと」


 いなほに言われて汐は何か言おうとしたが。


「そうね。あまり根を詰めたら倒れてしまうものね」


 押印する体勢をといた。


「夕食が出来ているんで手を洗って居間に来てください」


 そう言い残して未莱は上に上がって行った。


「全く家に帰ったら、ご飯があると思わないのかしら、未莱は」

「でも、家の方には夕食はいらないって言ってあるんでしょう?」

「……まぁそうなんですけど。汐さんは?」

「最近入り浸ってるから、ちゃんと言ってあるわ」


 二人は笑いながら、上に向かった。

 夕食後、汐が未莱にシャワーを貸してくれるように頼んだ。


「じゃあ古海さん、お風呂が沸いているので入ってください」

「えっ? シャワーだけ使わせてもらえればいいわ」

「いえ、兄さんが今日ここに泊まるんで、沸かしたんです。そのついでです」

「なるほどね、そういうことなら頂こうかしら。じゃあ折角だし、未莱さんといなほちゃん一緒に入らない?」


 それを聞いた三人はポカンとした顔になった。


「どうかしたの? 三人ぐらいなら入ると思うのだけど」

「いや汐先輩、そういうことじゃなくて、一緒に入ろうというのが……」

「女同士なのだから、気にすることないと思うのだけど。

 まぁ折角知り合ったのだから裸の付き合いでもするのも、いいかもとふと思ったのよ」

「男らしいですね、汐さん……」

「そう? まぁ減るものでもないし」


 汐はもう二人と風呂に入る気満々だ。


「……えっと私は、後片付けしないといけないから、いなちゃんと入ってください」

「未莱!」


 親友を売る未莱を見て、流石俺の妹と思っていると汐からの視線を感じた。


「クロ君?」


 生徒会長モードで言われ、黎人と何が言いたいのかすぐに悟る。


「あー……、片付けは俺がやるよ」

「兄さん!」


 まさかの裏切りに黎人に非難の視線を向ける。


「じゃあ、一緒に入りましょう」


 汐はそう言って、二人の手を握り風呂場に連れて行った。

 それから黎人にとって生殺しだった。

 この店は築三十年以上は経っている。だから所々にボロがあるのだ。

 その一つにお風呂の扉がある。きちんと閉めていれば大きい音をたてない限り外には聞こえないのだが、ガタがきているので扉が上手く閉まらない時がある。そして扉が少しでも開いていると台所まで音が聞こえるのだ。

 妹の未莱や妹のようないなほならまだしも汐が入っているのだ、つい聞き耳を立ててしまう。


「汐さんって肌白くて綺麗ですね」

「いなほちゃんとそう変わらないわ。それより、立派な胸ね」

「私もいなちゃんぐらい欲しいな」


 聞いたらいけないと思いつつも、聞こえてしまう。片づけを後回しにして逃げたいが、残っていたら汐が黙っていないのが用意に想像出来て逃げることが出来無いでいた。


「きゃっ」


 いつもでは聞けない汐の声が聞こえた。


「それに汐さんスレンダーだし……、薄い胸って敏感なんですよね」

「っん……」


 今すぐにでも扉をちゃんと閉めたい衝動に駆られるが、今までの会話を聞いていたことがバレる。不可抗力とはいえ何と言われるか分かったものではない。


「早く、早く終わらせて逃げなければ……」


 無心になろうと黎人は勤める。


「でも、巨乳でもちゃんと感じるのよ、上手く出来ないのはその人が下手なだけだって、深夜番組で言ってたわ」

「やっ……」


 いなほの聞いたことが無い声が聞こえた。


「まぁ私としては邪魔になるから胸が無いほうがいいのだけど、それでも少しは女らしいぐらいには欲しかったわね。未莱さんみたいな美乳で今の胸より少し大きいぐらいのが」

「美乳なんてそんな……」


 照れた未莱の声を聞いて、妹のそんな話は聞きたくないと猛烈な勢いで片づけを終わらせていく。

 三人が風呂から上がる頃には、黎人は作業部屋に篭って一心不乱に石を彫っていた。




 それから五日後、汐はいなほが出した練習をしていた。

 この五日間の間に一度も壁を壊していない。難しい練習だが、黎人といなほが思っていたより汐が苦戦しているのだ。

 汐も色々な方法で土壁を壊そうとしたが、全て失敗に終わっていた。


「やっぱり、汐さんって不器用?」

「そ、そんなことはないわ」

「いやだって二回に一回は発動しない時があるし」

「あれは色々と理由があるの、理由が……。でも正直手詰まりねぇ、氷をドリル型にするのは成功すると思ったのだけど、まさか再生した土で動きを止められるとは思わなかったわ」


 一回失敗しても考え方は悪くないと思ってドリルの形を次々と変えてみたが全て上手くいかなかった。


「やっぱり……ぶきよ――」

「私は一教えられて十覚えるタイプじゃないのよ。理解が人より遅い代わりに一度覚えたらわすれないのだけど……」


 それでもこの練習は汐が思っていた以上に難しいらしい。


「まぁ、ゆっくりやりましょうよ」


 いなほは汐に飲み物を差し出す。


「ありがとう。でもずっとこれをやるわけにもいかないのだけどね」


 いなほは意外とドつぼにはまり安い人なんだなぁと汐の評価を変える。


 とりあえず、気分転換にと話題を変えることにする。


「そういえば、汐さん」

「何かしら?」

「未莱から学校で弁当を食べた話を聞いて、後から気になっていることがあるんですけど」

「気になること?」

「汐さんって、黎人のどうしようもない部分があった時に、窘めてるイメージがあるけど、その時はそういうことを言わなかったみたいだから、どうしてかなぁと私の気に過ぎだとは思うんですけどね」


 いなほがそう言うと、汐は少し驚いた表情になる。


「意外な所を見ているのね。まぁそうね……正直に言うと自分の自己満足なのよね」


 汐は悲しそうな微笑をいなほに見せる。


「黎人を窘めることがですか?」

「いえ、未莱さんがどんな理由にしろ学校に来ることがよ。

 左足が無い上に左目も見えないから、学校に来るのは難しいでしょう?」

「まぁ、たしかに……って汐さん左目のこと気付いていたんですか!」


 未莱は左目が見えていないのを気付かれないように振舞っていて、ある程度長く付き合っている人でさえ気付かない場合があるほど上手く隠していることを知っているいなほは驚きの声を上げる。


「一緒に夕食を作った時とそれを一緒に食べた時にね。

 だからせめて忘れ物を届けに来て学校を見学する機会が多ければと思ったのよ。

 まぁだからわざと忘れ物しろというわけじゃないのだけど。未莱さんにはいらぬお節介よね」


 いなほは曖昧に笑った。


「それにしても、今日は私が夕食作るって言ったから、そろそろ作り始めないと」

「じゃあ、今日はこれで終わります?」

「そうねぇ……」


 曖昧に頷きながら汐は二回空中押印する。

 一回目はバスケットボール大の氷の玉が土壁に向かって飛んでいったが、二回目は何も出ず土壁は再生する。

 また失敗するのを見て、今日も上手くいかないようだし夕食の支度もあるからやっぱり練習を終わらせた方が良いと、いなほは考えて終わるように言おうとすると汐は溜息を吐いた。


「これ以上は要練習ね。いつまでも続けるわけにもいかないし……」


 汐は呟いて土壁に契印章を押し付ける。

 何か新しい方法を考え付いたのかと、いなほは首を傾げながら見ていると、土壁が白く色付くと汐を契印章を離した。

 その瞬間、土壁を氷が覆って連続して土壁を貫く音が響いた。そして、氷が軋む音をさせると土壁諸共粉々に砕け散った。

 砕け散った土壁は再生する気配を見せない。


「これで合格かしら? いなほちゃん?」


 突然のことに、呆然とするいなほは汐に聞かれて頷いた。


「じゃあ、合格祝いってことで今日は張りきって作りましょうかね」


 汐は上に上がっていく。


「汐さん?」

「何かしら?」

「本当はいつから出来たんですか?」

「さぁ、いつかしらね」


 汐は不適な笑みを浮かべながら、いなほを残して上がって行った。

 食卓に広がる料理は豪勢だった。


「それほど上手ではないけど、それなりには上手く出来たと思うわ、どうぞ召し上がって」


 汐はそう言って箸を手に持った。


「美味しい……」


 未莱は一口食べて呟いた。

 黎人といなほは汐の料理を食べたことがあるが、未莱は無かったので汐の料理の美味しさに感動する。


「ありがとう。二人は食べても感想を行ってくれなかったから、嬉しいわ」


 黎人といなほは二人して顔を背けると、汐と未莱が笑った。

 夕食後、未莱といなほが後片付けをすると言ったので汐は居間でテレビを見ていると、黎人が声をかける。


「どうしたの? クロ君」

「たいした用じゃないんですが、作業部屋に来てもらって良いですか?」

「ええ、良いわよ」


 立ち上がって黎人と汐は作業部屋に行く。

 作業部屋は汐が想像していたよりも広く部屋二つ分の広さがる。石を彫る道具が散らかった二つの机のスペース以外では様々な種類の石が転がっていて、壁際には階段があった。


「すいませんが、汐先輩の契印章を貸してくれませんか?」


 汐は頷いて黎人に契印章を渡すと、黎人は散らかった机から銀色の長方形の筒を取った。

 黎人はその筒に汐の契印章を填め込んだ。


「よし、一応型は取っていたから大丈夫と思ったけど、うまく出来てた」

「何、それは?」


 作業が上手くいって満足している黎人に、汐は質問した。


「これは保護ケースです。

 エリオンは余程のことで無い限り傷一つ付かないぐらい頑丈なんですが、魔法となると最悪砕かれることもあるんです。

 だからエリオンを彫る時に使う道具の素材と同じ金属で保護するんです」

「なるほど。クロ君の契印章が銀色の柄に填め込まれていたのは、そういう理由も合ったからね」

「そうです。汐先輩のエリオンを彫る時に出た粉を混ぜているので、魔法を使う時の感覚に支障ないはずです」


 黎人は汐に契印章を返す。銀色の金属の保護ケースには持ちやすいように浅く凹みが造られていて、角には模様が彫られていた。


「いなほちゃんが来るようになってから練習を見に来なかったのはこれを作っていたのね」

「出来るだけ早く渡そうとは思っていたんですけど、手こずってしまって……。

 練習をクリアするまでに間に合ってよかったです」

「そうなの。作ってくれてありがろう」


 汐に笑顔で言われて、黎人の顔は少し紅くなった。


「角に細かい模様が入っているけど、細かい作業で目は疲れなかった?」

「集中すると感じないんですが、長時間や作業を止めた時に目の疲れは感じますね。

 祖父からはそういう時は目薬をさして、目が悪くならないように遠くを見ろって言われてます」

「そうなの」

「そうだ、汐先輩ちょっとついて来てください」


 黎人はついてくるように言って、階段を上った。

 汐が上ると、そこは大人が立てる程度の高さの屋根裏部屋になっていた。


「汐先輩ここに寝てください」


 黎人は汐を天窓の真下にあるベッドに寝かせると、黎人は窓に紙を貼り付けて自身の契印章で紙に書かれているマークの上に押印した。


「電気を消しますよ」


 言って黎人が明りを消すと、汐の目の前に満天の星空が広がる


「綺麗……!」


 普段夜空を見るだけでは見れない星空に、汐は感動して心を奪われる。


「こんな星空初めて見たわ……。これってもしかして幻?」

「いいえ違います。窓に貼った紙に書かれていたマークは、遮断という意味のマークで窓に人口の光を遮断する能力を魔法で付けたんです」

「ねぇ、そのマークが描かれた紙を貰っても良いかしら?」

「いいですよ。意味はあってもマーク自体に魔力が込められているわけではないんで、幾らでもコピーできますし、もしくは汐先輩自身で遮断のマークを考えるのも良いかもしれません。

 使う本人は遮断の意味と認識すればどんなマークでも良いんですから。まぁその前に使える練習をしなきゃいけませんけどね」

「じゃあまだまだ先になるのね、残念だわ」

「汐先輩ならすぐに出来ますよ」

「買被り過ぎ……よ」


 汐は眠たげな顔になる。


「そういえば、今更ですが。なんでエリオンを探してたんですか?」

「え……? ああ、私も今年で受験生だから、お守りにね」

「お守り?」

「お祖父ちゃんがね、持っていたのよエリオンで作った判子を」

「契印章を持っていたんですか!」

「いえ契印章や劣契判にはなっていなかったと思うわ。昔二つ拾って一つを私にくれて一つを自分の判子にしたの」

「なんで判子にしたんです?」

「綺麗な石だし手によく馴染んだんですって、だから何か身近な道具にできないかと思ったそうなの。

 それで自身のトレードマークをよく葉書に押していたわ。

 この判子を見て自分のことを思い出して欲しいそう言ってたわ」

「なるほど、でもお守りっていうのは……」

「お祖父ちゃんの名前が楽助って言ってね。

 判子に彫られていたのが『楽』だったのよ。

 いつも私が落ち込んでいる時とか緊張している時に掌に押してくれて、この判子は魔法の判子で押すと楽しい気持ちになるおまじないと言って、励ましてくれてり勇気つけてくれたりしたの」


 汐は睡魔が襲ってきているのか段々と欠伸交じりのしゃべりになってくる。


「それで、私も受験生として緊張もするし心細かったりもするから、心の支えに同じものを作ろうと思ったのよ。

 でも私の石は傷付けたくなかったから」

「で、探し回っていたんですか。

 でも汐先輩のお祖父さんが持っていたのは?」

「一緒にお墓と埋めたわ」

「あー……そうですか」

「ええ……そうよ。私も一つ質問していいかしら?」

「何ですか?」

「クロ君が篆刻師になろうと思った切っ掛けは何だったのかなって。やっぱりおじい様の影響?」


 汐が聞くと黎人は一瞬険しい顔つきになるがすぐに戻った。しかし、僅かだが瞳は黒い意思が見え隠れしていた。


「聞いてはいけないことだったかしら? 言いたくなければ言わなくていいわ」

「たいした話じゃないですよ。

 二年前に家族旅行で北欧に行ったことがあるんです。その時に親父が紅い水晶のような石を二つ見つけたんです」

「エリオン?」


 汐が聞くと黎人は頷いた。


「それをどこからか聞きつけたのか、石を譲って欲しいって奴が何人も現れたんですが、親父は全部断ったんです。

 親父の親父、つまり祖父が印判魔法を使う魔法具使いだったから自分が何を拾ったのか分かっていたんです。

 一応魔法は習っていたみたいですから。

 親父は北欧にいる間断り続けていたんですが、実は誰にも見つけたことを言ってなかったんです」

「誰にも?」

「はい。だから毎日かわるがわる人が来ることに危機感を募らせた親父は旅行を止めてすぐに日本に帰国しました。

 帰国してすぐに祖父のもとに行く途中で謎の連中に襲われて両親は死に、二つのエリオンを託されて逃げる途中で未莱は片足と片眼を失いました。

 そして、命が危なくなった時に、祖父が助けに来て死は逃れました。その時見た祖父の力を見て俺は……」

「……復讐するために習うことにしたのね」

「はい。それと魔法を覚えるだけじゃなく、篆刻師になれば色々と情報も入ってきますから」

「なる……ほどね……」

「そんな悲しそうな顔をしないでください。

 色々あって復讐するためだけに篆刻師になろうとしてません。

 ですが……」

「ごめんなさいね。未莱さんから何があったのか大体の予想はついていたのに、考えればすぐに気付きそうなことに気付かないで、傷を開くようなことを聞いてしまって」

「いえ、いつかは話すことになるだろう気はしていましたから、気にしないでください」

「そう言って、もらえると、助かるわ……」


 とうとう睡魔には勝てなかった汐はそのまま眠りについた。

 眠りについた汐の寝顔は月の光に照らされ幻想的で、黎人は見惚れてしまい無意識に顔に触りそうになり、とっさに手を引っ込める。


「何かこのままいたら非常に不味い気がする。一時間したら起こしにくるか」


 黎人は汐に毛布をかけて、下に降りて行った。


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