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神璽の魔法使いたち  作者: トータカロク
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四章ー1




 翌日、昨夜に屋根裏部屋で寝た汐を起こそうとしたが起きなかったのでそのままにしていたが、黎人が朝起きて見に行くといなかった。

 居間にいるのかと見に行くと朝食の用意は終わっており、一回家に帰ってまた来るとメモが置いてあった。


「日曜だって言うのに、朝早いな汐先輩は」


 未莱と休日だからと泊まったいなほを起こしにいこうかと考えたが、自分達で起きてくるのを待つことにした。

 未莱達が起きるまでの間、暇だから黎人は地下室に行く。


「まともに練習するのは久し振りだな」


 黎人は自分の血が混ざった水銀を契印章に付ける。

 黎人の契印章は汐の契印章と同じぐらいのサイズだが、周りを篆刻道具の素材であるアウリカルクムで保護して、武具押印で使いやすいように剣の柄の形にしている。

 水銀を付けた黎人はポケットから紙を取り出し押印すると汐が練習に使っていた土壁が現れた。

 土壁を出した黎人は再び契印章に水銀を付けて、鞘に入った剣を持つような格好で押印して、印影から黒い刃を引き抜いた。


「まぁまぁだな」


 魔法で作り出した剣の出来をみて呟いた。

 黎人は土壁に向かって剣を構える。集中するための深呼吸をすると、一瞬、剣が消えてすぐ元の場所に戻った。

 斬り口から上の土壁は倒れそうになるがその前に再生した。

 黎人と続けて土壁を連続で斬る。

 斬った端から再生していくが、その倍の速度で黎人は斬り続けて徐々にスピードを上げていき、再生が追いつかなくなって来たところで土壁の根元まで一刀両断した。


「『焉火』」


 黎人がそう言うと剣身から炎が上がって燃やし尽くした。


「ふぅ……、こんなもんか」

「せいが出るわねぇ、こんな朝から」

「ん? ああ、いなほか。最近練習してなかったからな」


 いなほが投げたタオルを受け取り、黎人は汗を拭った。


「未莱が朝ご飯食べようだってさ。黎人が今日作ったの?」

「いや、汐先輩が一回家に帰る前に作ったみたいだ」

「そうなんだ。ところで汐さんの今後の練習内容って決まってるの?」

「そうだな、適当にやっていこうかと思っている程度だな。

 まぁ今日は夜になったら外で練習しようかとは思っている。外での使用が慣れたら応用の押印方法を教えれば終わりかな、無理に急ぐこともないし、ゆっくりやるさ」

「分かったわ。未莱が待っているから早く行くわよ」

「ああ」


 二人は朝食を食べる為に上に上がった。

 昼になる前に汐が来る。

 黎人は汐に今日の練習のことを説明した。


「夜に遠出するなら、今日でなくても良かった気もするけど」


 汐にそう言われて黎人は確かにと思って予定を変更するかどうか考えるが、汐は当初の予定でも良いと言ったので予定通りに夜に練習にすることになった。

 夕方近くになると、黎人と汐といなほの三人は店を出る。未莱は左足と左目の理由で留守番となった。

 三人が向かった場所は汐が契約の儀式をした場所だった。

 日が沈んだ頃に三人は辿り着く、明日が月曜だからか人はいなかった。


「これなら、人に見られずにやれるな」

「それで今日はどんな練習内容なの?」


 周りの確認をしていた黎人に汐が質問した。


「とりあえず、今日は外での魔力の制御を重点的にして、その後少しだけ戦いの訓練をすることにします」

「戦いの練習も?」

「まぁ、自分から近寄らない限り戦闘をすることはないと思いますが、魔法具なんて持っていると何か巻き込まれる可能性はありますからね」

「なるほどね、分かったわ。

 とりあえず今日は好きなように魔法を使えば良いのね」

「簡単に言えばそうですが、ちゃんと過不足が無い魔力の使い方を考えながら練習してください」

「ええ、分かっているわ」


 汐は頷いて練習を始めた。

 黎人といなほが見守る中、汐はまだ時々何も出ない時はあるが地下室で発現していた魔法は完璧に出来るようになって、今は氷像を作っていた。


「個人的には完璧な氷像が出来るのが楽しみなんだが……」

「まぁそれは同意するけど、早いうちに隙を見て逃げれる程度の戦闘訓練はしとくべきよ。

 この先戦いに縁があるかは分からないけど」

「まぁな。この前の連中が諦めたとは限らないしな、協定があるからそんなことにはならないと思うが」


 二人は氷像造りに夢中になっている汐を呼んで、今からする訓練の説明をしようとした時、黎人の携帯電話が鳴った。


「ん? 未莱かどうした? ……そうか分かった。お前は地下室に隠れてろよ。

 お前の契印章なら何があっても大丈夫だろうから。後でな」


 険しい顔の黎人は携帯電話を切って、二人に向き直った。


「未莱が嫌な予感がするって連絡をしてきた」

「え?」


 電話をかけてくるぐらいだから、何か大変なことがあったのかと思っていた汐は聞き違いかと思った。


「それは、不味いわね。とりあえず汐さんだけでも隠さないと」

「そうだな」

「……嫌な予感がしただけよね?」


 二人の会話についていけない汐が言った。


「未莱の虫の知らせはよく当たるんです。今までの九割ぐらいは当たってました」

「それは高い確率で当たっているけど、もし嫌な予感が当たっていたとして何が起こるの? 

 ……もしかしてまたあの集団に襲われるとか?」

「現状ではそれが一番の候補ですね」

「でも、契約したら大丈夫じゃなかったの?」

「本来ならそうなんですが。協定を破ろうとしてるのかもしれない」

「協定って何?」

「昔、加工無加工問わずエリオンの争奪戦が激しい時期があったんですよ。

 特に三大組織の奪い合いは壮絶だったらしくて、殲滅戦になりかけていたときにウチの祖父がその他の組織を一時的に纏め上げて止めたんです。

 その時に三大組織とその他組織で協議して、契約した契印章と劣契判は奪ってはいけないということになったんです。

 もし破った場合は全ての組織が協定を破った組織を壊滅させるとなっています」

「壊滅って、そんなリスクが高いことをしようとしているの? エリオン一個ぐらいで」

「まぁ三人とも、この世から消えていなくなれば証拠が残りませんからね。

 とりあえず、汐先輩はこれを持っていてください」


 黎人が汐にマークが描かれている紙を渡した。


「これに重承押印しますから、すぐに森の中に入って夜が明けたら店に帰ってください。

 そして祖父が帰ってくるまで未莱と店に引き篭もっていてください」

「ちょっと待って。その中に君達のことが入ってないみたいだけど」

「俺たちは囮になって、敵を引きつけながら移動して時を見て逃げます」

「私も付いていくわ」

「いやぁ、汐さん足手まといになるから、隠れてくれたほうが良いんです」

「っ……。分かったわ……。この記号の意味は何?」

「透明です。じゃあ押印したら今言った通りに行動してください」

「ちょっと待って、透明だけじゃ安全性が危ないから、この紙も持っていてください。

 記号の意味は無音です。これなら見付かる心配はありません」


 そう言って二人は親指を切って契印章につけて、重承押印をした。

 汐が二人の前からいなくなる。


「さて、汐先輩はちゃんと隠れてくれたかな」

「汐さんは納得すればちゃんと行動する人だから大丈夫でしょ。

 それよりも……」


 二人は足音が近付いてくる広場の入り口を見た。

 契印章を構え警戒していると、若い男が見えた。


「こんばんは」


 若い男は二人を見て挨拶してきた。


「……こんばんは」

「ちゃんと挨拶を返すとはいい心がけです。ところで一人足りないようだが」

「アンタ何者だ」


 黎人は契印章に水銀を付けて抜刀体勢になった。


「まずは自分が名乗るべきだと思いうが、僕から名乗ろう。僕はブルーブラッドに所属している向地 幻二郎だ」

「どっかの弱小組織かと思ったら、三大組織の一つが協定違反かよ」

「協定違反をしたつもりはないんだがね。まだね」

「そーかい、とりあえず俺が言えるのは、契印章を売る気も譲る気も無い」

「本人がいないのに断言したら駄目だろう。とりあえずここに呼んでれ、いるのは分かっているんだ」

「さぁ知らないね」

「穏便に済ませたいだがね。まぁいいだろう、どうせ森の中に隠れてるだろうから」


 向地の言葉に、黎人は契印章を握る力が強まる。


「夜の森の中で、多分姿が見えなくなる魔法をかけているのかな?」


 突然、森の中から轟音が響いて、森の一部が赤く染まった。


「熱源スコープって分かるかい? 

 僕の部下の火村さん、儀式の時に君達を襲った人だが、その人が熱源スコープで追っているから、熱を遮断する魔法を使っているなら大丈夫だったんだろうけど、今の攻撃を見る限りそうじゃないみたいだ。

 早くしないと女の子は消し炭になるよ」


 黎人は印影から黒い剣を抜刀した。


「ここを頼む!」

「あら、契印章使いとしてなら私の方が強いんだけど」


 黎人が武具押印で剣を出した直後から黒いスーツの男達がぞろぞろと出来て始める。


「お前の契印章の方が対多数戦には相性がいいだろ」

「分かってるわよ。一応事を荒立てたくは無かったんだけど、これは仕方が無いわよねぇ」


 いなほの言葉に楽しそうな感情が滲み出ていた。


「じゃ、頼むぞ!」

「さっさといってらっしゃい!」



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