第84話 清蓮学園魔法科が廃止になりました
競技会が終わると、メグミたちには学生本来の重要イベントである期末試験が待っていた。
それも何とか乗り越え、激動の一学期は終了する。ただし、競技会以降、ダグラスは一度もメグミたちの前に現れなかった。
終業式が終わった、その日の午後――
メグミは一〇一号室のドアを叩いた。しかし、返事はない。ドアノブを回すとカチッと音がして開いたのだが、中はフローリングの空き部屋となっていた。寮母さんに尋ねると、午前中に家具はレンタル業者が引き上げていったそうだ。
「せめて、挨拶くらいしたかったのに……」そう寮母さんが残念そうにつぶやくのをメグミは聞いた。
(そうよ、せめて挨拶くらいしなさいよ! バカ!)
夏休みは実家に帰って羽を伸ばし、あっという間に八月は終わる。女子寮に戻ったメグミはマナミたちと再会した。
翌日、二学期の始業式――
校長の清野蓮がステージの中央に上がり学期初めの挨拶を始めた。
「今日、こうして事故もなく皆さんにお会いできたことが、私としては一番うれしい報告となります」
そして、手元に置いた書類を一枚めくる。
「さて、この二学期より変わることがあります。それは――昨日付けで清蓮学園魔法科が廃止になりました」
(………………えっ?)、魔法科が廃止?
「ねえ、メグちゃん、どういうこと?」
マナミだけでない。魔法科の生徒全員が騒然となった。
ナタリア女学院の試合が無効になったからということもあるが、メグミたちが七月の競技会で優勝したことには変わりない。なにより、理事会でも、保護者会でも、魔法科廃止は議題に上がらなかったはずだ。
なのに、なぜ!?
メグミだけではない。全員が納得できないという顔をした。
しかし、続いた清野の説明でその理由がハッキリする。
「本日付けで、魔法科を清蓮学園女子魔法高等学校に昇格し、独立した運営が開始されることになりました!」
――なんだって? 魔法科を独立した学校に昇格?
「現在建設中の新校舎を女子魔法高等学校とし、今学期中に現在の魔法科教室を移動する予定です」
「メグちゃん! なんかスゴいことになったよ!」
マナミが興奮してメグミの袖を引っ張る。
「う、うん。そうだね……」
メグミはいまだに状況が飲み込めない。独立した学校? それって――
「理事会、保護者会、教職員も清蓮学園から分離することになり、決定権も女子魔法高校として独自に持つこととなります」
つまり今後、普通科主体の職員や理事会、保護者会からの圧力に心配することはもうない――そういうことだ!
もちろん、だからって勉強や魔法実習をおろそかにしていいわけではない。しかし、外野からの声に惑わされず、学業に集中できることはとてもうれしいことである。
そして――
「そういうことで、新たなに清蓮学園女子魔法高等学校長になられた方を紹介いたします。ダグラス・マグナマル新校長です」
「――――――――えっ?」
ステージの袖から現れた若者。少し生意気そうな少年にしか見えない人物が堂々と中央へ向かった。
清野蓮が手を叩くのを合図に、講堂に集まった全員が彼に拍手をする。
メグミは呆然とする。頭の中が真っ白になった――
何が起きている?
ダグラスは学校を去って、もう自分たちの知らない世界に行ってしまった。そうではなかったのか?
「ねえねえ、メグちゃん! マグリンだよ! マグリンが帰ってきたよ!」
マナミがメグの腕に抱きついて、喜びを露わにするのだが、メグミはまだなんのリアクションも取れないでいた。
(な、なによ……それ?)
「ダグラス・マグナマルだ! 今、紹介があったとおり、清蓮学園女子魔法高等学校の校長を拝命した――が! 今までどおり、魔法教師も兼任する! まだまだ、オマエたちに教えることはたくさんあるからな! 覚悟しておけよ! 以上!」
とても、校長とは思えない新任の挨拶。だが、もっとも彼らしい挨拶だった。




