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第79話 どこをほっつき歩いているのよ!

「タイム!」


 ナタリア側のコーチがたまらず、選手を集める。


「おい、両サイドは相手のガードに体当たりしろ。同点のまま、前半を終わらずぞ」


 それまで、チカラ任せの魔法で相手をねじ伏せてきたが、シールドに角度を付け魔法を逸らすという清蓮学園の作戦にハマってしまった。もはや、魔法だけでは難しいと考えたナタリアはフットワークを使う手に切り替えてきたのだ。


「どうした? 返事は?」

「――わかりました」


 手稲アサミは相手コート側にいる亜紀を見た。アサミ側のガードが亜紀だったからだ。親友に向けてボディコンタクトを仕掛けるのはつらい。しかし、これは指示である。逆らうことは許されない。アサミはコートに向かった。


 ピーッ!


 再開を告げるホイッスルのあと、ナタリア側の両サイドが勢いよく前進してきた。


「――!?」


 警戒はしていたのだが、それまでそんな素振りさえしていなかったので、亜紀も美咲も反応が遅れる。


(それなら!)


 先にゴールボードを撃ち抜いて、ポイントを上げれば――


(えっ?)


 相手センターも、全速力でメグミに向かってきた。速い! すでに、ゴールボードまでの射線上に相手のカラダが入っている。これでは、直接ゴールを狙えない。そのうえ――


「ファイアボール!」


 捨て身の魔法攻撃で、メグミは防御魔法を展開せざるを得ない。


「きゃあ!」

「きゃあ!」


 両サイドから悲鳴が上がった。亜紀も美咲も相手側ともつれるように倒れている。


 ピーッ!


「ボディコンタクトで四名退場!」


 そのタイミングで、前半終了のブザーが鳴った。まさか、そんな捨て身の方法でポイント阻止をしてくるとは……完全にやられたという感じだ。


「イタイッ!」


 そう叫んだのは亜紀だった。足首を手で押さえている。


「亜紀、大丈夫!」


 そう声をかけるが、亜紀はもん絶の表情を見せて動けない。


「ごめんなさい。亜紀――」


 ぶつかった手稲アサミが近寄ってくる。


「ちょっと、いくらなんでもやりすぎでしょ!」


 メグミがアサミに文句を言うが、アサミは真っ青の顔をして呆然としていた。


「おい! 手稲! 何をしている! さっさと引き上げて来い!」

「ちょっと! そんなことを言っている場合じゃ――」


 メグミが相手側コーチの声に反応したとき、亜紀が「メグミ、いいの」と声をかける。


「亜紀……」

「アサミも行って」

「でも……」

「行って! また怒られるよ!」


 亜紀に言われ、アサミは何度も振り返りながら、自分のベンチに戻った。


「亜紀、立てる?」


 メグミが肩を貸すと、もう片方も美咲が背負う。


「美咲は大丈夫だったの」

「は、はい。痛かったけど、私は大丈夫です――でも……」


 美咲が言いたいことはわかっていた。


「ナタリアのあのスピード、パワー……あきらかにオカシイわね」

 亜紀を抱えながら、自分たちのベンチへ向かう。まだ、ダグラスの姿はない。


(いったい、どこをほっつき歩いているのよ!)

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