第74話 な、なによ……あれ
二、三年の試合が終わると、続いて、ナタリア一年と横浜羽鳥一年の試合が始まった。
先攻のナタリア女学院、アタッカーは手稲アサミだった。観客席から亜紀が食い入るように観ている。
「手稲さんが心配?」
メグミに声をかけられると、前がかりだった姿勢を起こして、背もたれに寄りかかる。
「べ、別に……次の相手として、どんな試合をするのかな――って、気になっただけよ」
髪型は変わっても、相変わらず素直じゃないよね――ちょっとカワイイなんて思ってしまう。
「――手稲さんのチーム、先月の練習からだと、フットワークを使って相手の連携を崩していくタイプのようだったけど……」
ナタリアの練習はとにかく動いていた。「その割には、魔法の練習が少ない――」そうダグラスが感想を言っていたのを思い出す。あれは、自分たち、他校が見学していたからなのか? 魔法より、フィジカルを使ったプレイを目指しているのか? どちらともハッキリしない――というのが、ダグラスの見解だった。
(さて、最初のターンは?)
ピーッ!
試合開始の合図とともに、アサミがゆっくりと敵陣に入る。五メートルほど進んで立ち止まり、いきなりゴールボードに杖を向けた。
「えっ!? いきなり!?」
メグミは思わず声を出す。亜紀も驚いた表情で試合を観ていた。
慌てて、横浜羽鳥の両サイドがアサミに魔法を放つ。それをナタリアのガードが防ぐと――
「ファイアボール!」
アサミの放った魔法は、ウィッチシュートでもっとも使用頻度の高い、ファイアボール。つまり火属性の射出魔法なのだが、その炎の大きさ、勢いが通常のそれとは明らかに違う!
だが、見え見えの攻撃に、横浜羽鳥のセンターがマジックシールドをゴールボードとの射線上に展開する。通常なら、それで防げるのだが――
「きゃあ!」
アサミのファイアボールがシールドを破壊し、勢いを保ったままゴールへ向かう!
ボンッ!
ピーッ!
「ナタリア女学院、ポイント!」
ナタリア側の応援席は歓声をあげるが、他は異様な沈黙に包まれた。
「な、なによ……あれ」
亜紀のつぶやきは、おそらく今の魔法を観ていた全員の感想を代弁していたはずだ。横浜羽鳥の防御魔法を破壊して、なお、ゴールボードまで届く威力が残っているとは……
「魔力強化の魔法薬を使っているな」
ダグラスがそう声にする。
「ポーション?」
ゲームでは当たり前のように登場する魔法薬は、回復だけでなく、一時的に魔力や防御力、筋力を向上するタイプがある。もちろん、それはダグラスが召喚前にいた世界にあったモノだ。この世界にはない――はずだった。
「そんなモノをナタリアは持っているっていうの? それじゃ……」
ダグラスは黙ったままだったが、その理由はメグミにだって簡単に推測できる。つまり――
(この世界に、ダグラス以外の異世界人が存在する。もしくは、異世界の知識を持っている人がいる……)




