第71話 あやまるの禁止! さん付けも禁止!
第一試合、早くもメグミたちの出番が来る。
横浜羽鳥女子、対、清蓮学園。
試合は序盤から点の取り合いとなる。メグミをポイントゲッターとして、点を取りに行く清蓮に対し、横浜羽鳥は全員がバランス良く攻め、確実に点数を取りに来た。守備では、弱点である美咲の防御魔法と、亜紀のスタミナを突く作戦のようだ。こちらを良く研究している。そのため、メグミが孤立する場面が増え、前半終了時点で、二点ビハインドとなる。
「アイツら、ちょこまかと動きすぎよ」
亜紀が肩で息をしながら、渡されたミネラルウォータを飲む。
「亜紀! ガンバレ! まだまだ、バテるのは早いよ!」
そんな声が聞こえ見上げると、琴子が身を乗り出し叫んでいた。その隣にはサナエと、退院してきたばかりの首藤リナもいる。
「まったく、言いたいことを言って……」
「でも、冗談じゃなくバテている場合じゃないよ、亜紀。まだ半分よ」
「わかっているわよ」と息を切らしながら、亜紀は応える。
「本当はナタリア戦まで隠しておくつもりだったけど――アレを使うわ」
メグミはダグラスの顔を見ると、「わかった」という声が返ってきた。
「もう、出し惜しみをしている余裕はない。相手が対応してくる前に、同点まで持ち込むんだ」
そう言って、ダグラスは三人を送り出した。
後半開始は二点リードの横浜羽鳥が先攻で始まる。このターンで得点が入ると三点差。そうなると、追い付くのは厳しい。
「亜紀、頼むよ」
「本当に、人使いの荒いチームね」
「亜紀さん、ごめんなさい。よろしくお願いします」
美咲がそう声をかける。
「あやまるの禁止! さん付けも禁止!」
息がまだ整わないという状況で、試合再開のホイッスルが鳴った。
刹那――
オオーッ!
歓声が湧く。亜紀が相手アタッカーに向かって猛然とダッシュしたのだ。意表を突かれた相手は、慌てて亜紀に向けて攻撃してきた。だが、亜紀は持っていた杖を引っ込めて、左手でシールドを展開する。
「悪いわね。私は囮なの」
「えっ?」
亜紀は相手の魔法を防ぐとそのまま、アタッカーとすれ違う。その陰に美咲がいた!
「インパクト!」
風魔法は不可視なうえに、速度が速い。亜紀に気を取られ、相手ガードがシールドを展開するのが遅れると、アタッカーにヒットする!
ピーッ!
「横浜羽鳥女子アタッカー、ヒットアウト!」
オオーッ!
今日初めて、アタッカーがヒットアウトしたことで、観客がどよめいた。
こうなると、攻撃側は数的不利もあり、全員ヒットアウトで相手にインターセプトされることを恐れ、センターラインぎりぎりから前に出ない。もちろん、それを承知で亜紀は、またダッシュしてきた!
「えっ? また?」
相手は混乱する。センターラインを越えて自陣に入れば、相手は攻撃できないのだが、自陣には五秒以上入っていてはいけないルールだ。まだ、ターンオーバーまで二十秒近く。少しでも時間を使いたい。そういう思いが、後退することをためらう。しかし――
「ファイアボール!」
亜紀がダッシュと同時に攻撃してきたのだ!
まさか、そんなに早いタイミングで攻撃してくると思わなかった相手は、慌ててシールドを展開する。
「インパクト!」
相手がシールドを展開したのを見計らって、今度も亜紀の背後から美咲が風魔法で攻撃してきた。
「同じ手は通用しない!」
さすがに美咲を警戒していた、相手ガードが美咲の風魔法を防いだ。だが――
「インパクト!」
「えっ?」
二人に気を取られ、回り込んでいたメグミが攻撃してくる。しかも、美咲と同じ――
「風魔法!?」
メグミが風属性を使ってくるとは思わなかった相手は、防御魔法の展開が遅れた!
「しまった!」
相手、ガードが動揺したとき、前進していた亜紀が方向展開して、相手に体当たりする!
「私の狙いはアナタだったの」
「えっ?」
ピーッ!
「横浜羽鳥アタッカー、ヒットアウト! 横浜羽鳥ガードと清蓮学園センター、ボディコンタクトで両者アウト!」
オオーッ!
亜紀も退場になったが、相手は三人全員が退場。つまり――
「やったぁ! インターセプトだ!」




