第66話 何をそんなにイライラしているの?
異様な雰囲気の中、メグミ、亜紀、そして美咲という新チームでのミニゲームが始まる。
「ちょっと、鈴来! もっと、前に出てよ」
「でも、それだと大埜さんとの距離が空いてしまって……」
「イイのよ! アンタは囮くらいしかならないのだから、相手の壁になってれば――」
「亜紀、今のは鈴来さんが正しいよ」
メグミが美咲を擁護すると、亜紀は「鈴来が遅いから言っているんでしょ!」といら立ちを露わにする。
それからも、亜紀は美咲を無視した動きをするので、連携がギクシャクした。亜紀がアタッカーに入った時には、どフリーの美咲を無視して、自分からゴールボードを狙って守備側に防がれてしまう。
「ちょっと、亜紀! 今のは鈴来さんへ杖を渡すべきでしょ?」
「はあ? なんで私が?」
さすがに亜紀の身勝手が気に障って、メグミも大声になる。
「いい加減にしなさいよ! なんで、そんなに鈴来さんと合わせようとしないのよ!」
怒鳴られると、亜紀は(やってられない……)という顔を見せて、コートの外に出る。
「おい馳川! どこに行く?」
「授業をサボるの。ダグラスは言ったよね? 自分の授業に出たくなければ出なくてイイって」
それはダグラスが副担任に就任したばかりの時、「自分を先生だと思わない人は授業に出なくてもイイ」そう彼は言った。そのことを出されると、何も言えなくなる。
「琴子、行こう?」
そう言って、競技場を出ようとするのだが、琴子は動かなかった。
「琴子?」
「亜紀、何をそんなにイライラしているの?」
「なっ!」
琴子が珍しく口答えするので、亜紀は顔を真っ赤にする。
「別にイライラなんてしてないわよ!」
「それじゃ、なんで――」
「ああ! もういい!」
それだけ言って、亜紀は出て行った。
「さあ、授業中だぞ! 練習を続けろ!」
ダグラスが声を張り上げると、メグミが「ちょっと、いいの?」と声をかけてくる。
「なにがだ?」
ダグラスはメグミと目を合わせず、離れて行った。
「もう、どちらも意地っ張りなんだから……」
結局、新チームの練習はほとんどできないまま、その日は終わった。
そして翌日――
「鈴来さんは家庭の都合でお休みすると連絡がありました」
舘林の説明で、亜紀が口を開く。
「何が家庭の都合よ。逃げたのよ」
頑張りますと言いながら、早速、次の日には欠席する美咲に、亜紀はハラを立てる。
「自分ではムリとわかっていても断る勇気もなくて、結局、最後は逃げるの。そういう人よ」
亜紀の言いぶんに、美咲をかばう者は誰もいなかった。
「わかったでしょ? あのコじゃ足を引っ張るだけよ」
亜紀はメンバーの変更を改めてダグラスに要求する。しかし――
「いや、変更はしない」
「なんで、そんなに鈴来の肩を持つのよ!」
「別に鈴来の肩を持っているつもりはない。それがベストだと思っているだけだ」
「……わかったわ。なら、メンバーを変更しない限り私も練習に参加しない。それでいいわね?」
亜紀の発言に、ダグラスは「わかった」とだけ応えた。
結局、その日の午後の授業は亜紀も美咲もいない練習となってしまった。
「どうするのよ。これじゃ、競技会で優勝どころか、出場するチームも決められないじゃない」
メグミは口をへの字に曲げて、(面倒なことになった)と思う。
「ごめんね、メグちゃん。私がやってしまったばっかりに――」
ポジティブが取り柄だったマナミはあの事件以来、塞ぎ気味であった。事件は魔法のジャミングにより起きていたこと、それが誰かにハメられたということは当事者にも説明してある。ダグラスの言うことなら間違いないだろうと全員納得はしたのだが、マナミはそれでも責任を感じてしまい、あれ以来、魔法を使おうとしないのだ。
「もう、マナミのせいじゃないって言っているでしょ? いい加減に怒るよ」
メグミがそう言ってもマナミは「うん……」と生返事をするだけである。
厄介なことになったなぁ――と頭を抱えるメグミは、(もう、やるしかないか……)とハラをくくる。




