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第65話 やらせてください! お願いします

「議案が否決された!? そ、それはどういうことですか?」


 岳田は、保護者会から戻ってきた麻村からそういう報告を受ける。


「首藤財団の首藤義景代表理事が議案を否決するように保護者へ頼み回ったらしい」


 公家として、千年以上前からこの国の権力者に影響力を持つ首藤家。戦後は米国との関係をいち早く回復し、資産を保有し続けてきた。そして、世界有数の財力を武器に首藤財団を設立し、日本はおろか、世界にも発言力をもつ大老、首藤義景。彼がとても可愛がっている孫娘が首藤リナなのである。


 リナが祖父へ、大事にしないよう頼んだのだ。おかげで、授業中に生徒が大ケガをしたという重大事故だというのに、報道は全くされなかった。


「そ、それじゃ……」

「マグナマル解任の話はなかったことになり、競技会へも予定どおり出場することになった」


 淡々と応える麻村だが、その言葉の節々に悔しさがにじみ出ている。


「とくかく、今居さんに伝えて今後どうするか相談することにしよう。なあに、最低限の狙いは達成したのです。競技会に出場したからといって、もはや優勝はムリでしょう」


 最低限の狙いは達成。競技会の優勝はムリ。それを意味することは――



(首藤リナと盛サナエのケガによって、二つのチームが競技会に参加できなくなった)

 競技会前に教師を解任されるという最悪な事態は免れたが、それでも「七月の競技会で優勝しなければ教師を辞める」という約束が残っている。そして、二人のケガで、一年生で勝率上位のメグミのチームと亜紀のチームが出場できなくなった。


 三番目は鈴来美咲のチームとなるのだが、美咲の風属性頼みのところがあり、競技会までに他校が対策してくる可能性が高い。つまり、勝率は大きく落ちることだろう――


「こうなったら、やるしかないか……」

 メグミと亜紀が退出したあと、夜遅くまで策を考えていたダグラスはそうつぶやく。翌日、魔法の授業の前に、それをクラスに説明した。


「今日から、馳川、大埜、そして鈴来でチームを構成する」

「――えっ?」


 競技会までもう一か月もない。そんな時期にチームを変更しても、十分な連携は取れない。まして――


「ちょ、ちょっと待ってよ! 二人のケガで、新チームを作るのはわかるけど、なんで鈴来なのよ!? どう考えても琴子か藍川さんでしょ!?」


 亜紀がそう声を荒げる。ケガで出場できない人の代わりに誰かを加えるならわかるが、別チームだった三人で結成する理由がわからない。


「もう決めた。今日から三人でチームを作れ」

「アンタねぇ、いくらなんでも横暴すぎない?」

「やらせてください! お願いします」


 ダグラスと亜紀のやり取りに入ってきたのは美咲だった。


「私、頑張ります! みんなの役に立ちたいんです!」


 引っ込み思案の美咲が、初めて亜紀に自分から声をかけてきたのだ。


「アンタ、風魔法でちょっと無双したからって、いい気になってない? もう、アンタの魔法なんて怖くないの。役立たずなんだからすっこんでてよ」


 そう言って、亜紀は美咲のムネを手のひらで押しのけた。それで美咲はいつものようにうつむいて、おどおどした表情に逆戻りしてしまう。


「亜紀、そこまで言わなくても、一回くらい試してみよ?」


 メグミが言うと、亜紀は納得していないという表情を見せながらも、「ふんっ!」とそっぽを向きながら、コートに向かった。

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