第64話 私たちになにかできることはないの?
「手稲アサミか?」
ナタリア女学院一年の手稲アサミは元総理大臣、手稲朔太郎の孫。中学まで亜紀と同じ学校に通っていて、仲も良かった。彼女にこの報告書を教えなかったこと、自分だけ逃げてしまったこと、それを亜紀は後悔していたのだ。
「アサミだけではないわ。他にも私の知っているコが何人もナタリアにいる」
彼女たちを助けるためには、チカラが必要だ。権力に屈しないためのチカラが――
「ダグラスの魔法を見た時、鳥肌が立ったわ。そして同時に、あのチカラを持てば――」
「ナタリア女学院の生徒達を助けられるかもしれない――そう思ったのか?」
「浅はかなヤツだと思った? でも、そうよ。魔法には魔法でしか対抗できない。魔法があれば、私にも何かできると思ったわ。違うの?」
「いや、違わない。魔法には様々な使い方がある。権力にだって屈しないチカラもある。しかし、それには時間が必要だ」
魔法を開花するためには、カラダも心も鍛える必要がある。
「わかっているわ。だから、今、こうして話したのでしょ?」
亜紀は今日の練習を観て、「ナタリア女学院でなにか良からぬことを進められている――」そういう気持ちが強くなった。もはや、自分がチカラを得るまで待っていられない。そのため、こうしてダグラスに報告書のことを打ち明ける気になったのだ。
「ねえ、チカラを貸して。みんなを助けたい」
亜紀はそう声にしたが、ダグラスは黙ったままだった。
「――ダグラス、私たちになにかできることはないの?」
メグミもそう言う。知ってしまった以上、黙って見過ごすことはできない。こんな無謀な策に自分たちと同世代の少女が巻き込まれている。それをなんとか阻止することはできないのだろうか?
「まあ――ないことはない」
魔法は物理攻撃だけではない。探知や感知、生体的な効果を及ぼす魔法もある。すべての魔法を試したわけではないが、おそらくこの世界でも利用可能なはずだ。それを使って、諜報や隠密活動を行い、敵の企てを阻止することもできるという。
ダグラスの回答に、メグミは「それじゃ、そういう魔法を覚えれば――」と言うのだが……
「ただ、残念ながら時間がない。オレがオマエたちにこうして会えるのは今日限りだろう」
「えっ?」
驚くメグミに、ダグラスは「おそらく今頃、緊急保護者会が行われ、魔法競技への出場取り止めと、オレの解任が決まったはずだ」と説明する。
今日発生した事故の責任を取らされて、自分はクビ、魔法の練習も当面行えないと言う。
「そ、そんな……」
「ということで、個別指導も今日限りだ」
ショックを受けるメグミに、亜紀は肩を叩く。
「メグミ、そうでもないかもよ」
「――えっ?」
「ケガをしたのが首藤リナだった。それが不幸中の幸いかな?」




