第62話 そろそろ、理由を教えてもらってもいいよな?
ダグラスたちがナタリア女学院を見学していた時に起きた事故。
それはジャマ―という魔道具を使用し、上級の魔導士が起こしたものだとダグラスは推測した。
それほどの魔導士がダグラス以外にいるなんて……
だが、複数人は確実にいるとダグラスは言う。そのひとりはナタリアの教師、今居だ。
ダグラスは今居がなんらかの魔力感知遮断を使用しているとすぐに気づいた。それだけ、今居の魔力が際立っているという証拠だ。
「だから、ヘンでしょ? だって、今居先生って男性よ。この世界の男性には魔法適性がないって……」
「オレは男だがな」
言われればそうだ。日本人女性、しかも魔法覚醒因子を接種していなければ魔法適性を持つ人物は現れないという思い込みは、これまでの報道や学校の教育で刷り込まれただけ。それが真実なんてわからない。だが、今居は三十代後半の年齢だったはず。ジョンズホプキンス大学のハルムラ・ダイゴ教授が魔法を発見したと発表したのは十年前――と、いうことは……
「――つまり、他にも召喚された異世界人がいるということ?」
亜紀がそう言うと――
「あるいは、自らの意志でこの世界に転移してきたか――」
「そ、そんなことできるの?」
「人間じゃまずムリだな。なぜなら、オレがまだその魔法を習得していないからだ」
ダグラスが習得していなければ、人間はムリだという理論が成立するのかどうかは別にして――
「それじゃ、誰がそんなことをできるって言うの?」
メグミの質問に、ダグラスは「オレのいた世界には魔族がいたという記録が残っている」と説明する。
「ま、魔族!? 悪魔っていうこと!?」
五百年前、人間を支配し、恐怖に陥れていた魔族は勇者アーサーによって滅ぼされた。それが彼のいた世界の歴史である。
「魔族なら、あるいは異世界への転移を可能にしていたかもしれない……」
魔族は人間を凌駕する魔力の持ち主で、人間の知らない魔法をいくつも持っていた。そういう言い伝えが残っているらしい。
「だからって、魔族なんて……たったそれだけの情報で決めつけるのは……」
「そのとおりだ。だからもっと情報が必要だ。と、いうことで馳川――」
ダグラスは亜紀に顔を向ける。
「そろそろ、理由を教えてもらってもいいよな?」
ダグラスから個別指導を受けたいと思うようになった理由を亜紀はまだ話していない。しかし、条件として『いつか理由を話す』という約束になっていた。「今がその時だろう?」そう、ダグラスは言う。
「――わかったわ」
亜紀はダグラスの部屋に戻って説明すると言った。




