第61話 オレたちはハメられた
リナの見舞いを終えて寮に戻ってきたメグミは、今日のことで精神的にマイってしまったマナミを早めに休ませて、自分は一〇一号室へ向かう。中に入ると、すでに亜紀がいた。
「やっぱり、アナタもおかしいと思ったのね?」
亜紀の言葉に、メグミはうなずく。ダグラスが外出しているときに起きた事故。どうしても、何か裏があったのではないかと考えてしまう。
「で、どうなの?」
亜紀がダグラスを問い詰めると――
「ああ、オマエたちが思っているとおりだ。オレたちはハメられた」
あっさりダグラスは認める。
「それって、どんな――?」
メグミの質問に、ダグラスは「庭に出ようか」と言った。女子寮の庭は普段ダグラスたちが個別指導を行っている場所である。四方に魔力を封じ込めた石が置かれ、ダグラスの詠唱で結界が発動する仕組みだ。
結界の中で、ダグラスは二センチ程度の丸い透明なシールを取り出して、二人に見せる。
「それは?」
「事故があったコートの床に、これがいくつも貼ってあった」
「――えっ?」
「オレのいた世界ではジャマ―といって、魔法に何らかの障害を起こさせる魔道具だ」
「魔道具!?」
「ああ。オレの知っているモノは陶器や石膏で作られていたんだがな――戦場などにこれを埋め込むことで、魔法に誤作動を起こさせる仕組みだ」
シール自体はこの世界の文房具として売られている商品だが、簡易的な魔道具としてなら、こんな品物に魔力を封じ込めても、数日くらいは同じ効果が期待できるらしい。
「誤動作って?」
「まあ、やってみたほうが早い」
そう言って、地面にシールを一つ置く。
「馳川。このシールの上を通過するようにファイアボールを放ってみろ」
ワケもわからないまま、亜紀は魔法を唱えると、火の玉がシール上を通過する。その時、突然、射線か大きく変化してメグミの方へ向かってきた!
「えっ?」
慌てて身を屈めると、火の玉はボウッという音を立てて消える。ダグラスが魔法障壁を展開していたのだ。
「こ、これって――」
「そうだ、相手が放った魔法を、意図せぬ方向へ曲げてしまう魔道具だ」
あらかじめ、戦場となる地域にこれを埋め込めば、魔法戦が行えなくなってしまう。
これによって、ダグラスのいた世界では、大規模な魔法戦は廃れ、再び剣と盾の戦いが主流になったらしい。
「それだけでない。このタイプの魔道具は、他人が放った魔法を別の人間がコントールすることもできる」
もちろん、それには高度な魔法スキルが必要で、上級クラスの魔導士でないとコントロールできないそうだ。
マナミの放った魔法はこの魔道具によって何者かにコントロールされ、リナの後頭部に命中させた――それは間違いないとダグラスは言う。
「ちょっと待ってよ。それじゃ、この世界にダグラスと同じレベルの魔法使いが他にもいるってこと?」
自分レベルほどではないが、魔道具をコントロールできる程度の魔導士がいるはずだ――そうダグラスは言う。
「実際、ひとりは知っている。ただ、そいつは事故が起こった時間、オレの隣にいたから、別の人物が行ったはずだ」
つまり、ダグラス以外に少なくても二人以上は上級クラスの魔導士がいるということだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 先生の隣にいたって――まさか……」
「ナタリア女学院の今居だ」




