第60話 生徒の心配をするのが教師というモノだろ?
「舘林先生、これはアナタの管理不行届きですぞ」
教頭の麻村にそう言われて、舘林は天然アフロの頭を何度も上下する。
「申し訳ありません! 本当に、申し訳ありません!」
「謝って済むことじゃない! よりによって首藤家の令嬢にケガさせるなんて、これはもう学校全体の問題なんだぞ!」
そう岳田が大声を出した。
(別に、家柄は関係ないと思うが――)ダグラスはヤレヤレと思う。
「マグナマル! なぜ他人事みたいな顔をしている! お前の指導が悪かったから事故が起きたのだぞ!」
いきなり岳田はダグラスに振ってきた。だが、それは彼も予想していたことで、「ああ、そうだオレにも責任がある」と素直に認める。
「だ、だったら――」
「ところで岳田先生、授業の前、事故のあった競技場に行ったりしてないか?」
「なっ!」
突然、ダグラスから言われ、狼狽える岳田。
「なんで、私が魔法競技場に行かなければならないんだ?」
そう言いながら、何度も麻村のほうをチラチラと見ている。
ダグラスは(なるほどな――)と思った時に自分のスマホが鳴った。すぐに電話を受ける。
「コラッ! 会議中だぞ! 電話に出るな!」
怒鳴る岳田を無視すると――
「大埜か? そうか、目を覚ましたか」
ダグラスは電話を切ると、舘林にリナが目を覚ましたと伝え、今から病院へ向かおうと話をした。
「おい! まだ会議は終わっていないぞ! お前の責任問題について話をしているんだぞ!」
ここまでぎゃあぎゃあうるさいと、さすがにイラっとする。岳田を睨みつけながら、ダグラスは近寄った。
「な、なんだ、その態度は?」
今度は前の机をドンと叩くダグラス。さすがに岳田もびびって「ひぃ!」と短い悲鳴をあげる。
「責任がどうのこうのより、先に生徒の心配をするのが教師というモノだろ?」
それだけ言うと、踵を返した。
「た、たかが副担任が、え、偉そうに――」
ダグラスが会議室を出て行くと、岳田はそんな捨てセリフを言う。
「まあ、落ちつきなさい岳田君。たしかに、マグナマル先生がいうことも正しい。しかし、授業中にケガをしたという問題はとても大きい。すぐに保護者会へ説明をする準備をしなければならないでしょう。校長、異論はありませんな?」
いつものように、ことの成り行きを黙って聞いていた清野蓮が「ああ――」と短く返事をする。
「それでは、他に案件がなければ会議は終わりにする」
バラバラと会議室から教職員が出て行く時にも、まだハラの虫がおさまらない岳田は席から立とうとしなかった。それを見た麻村が岳田の肩を叩く。
「まあ、そう怒るな。いずれにせよ。これで魔法競技への出場見送りは決まったようなものだ」
説明会で保護者から競技出場取り止めが提案され、議決されれば、もはや魔法科の廃止も決定的となる。そう、麻村は岳田に伝えるのだった。
「あの男の顔を見るのも、それまでの辛抱ですよ」
「そ、そうですね」




