第59話 つまらない小細工をしやがって……
ダグラス、メグミ、亜紀は見学を切り上げ、急いで清蓮学園に戻った。と、いうのも――
「ど、どうしたの!? 何が起きたの!?」
清蓮学園の競技場に到着して、真っ先にメグミはマナミへ駆け寄る。
「メグ……ちゃん……」
虚ろな目でマナミはメグミを見た。どんな時もポジティブを崩さないマナミがそんな顔をするのは、よっぽどのことが起きたんだとすぐにわかった。メグミはマナミに抱きつく。
「わ、私……」
何か言いたいようだが、カラダを震わし、マナミはそれ以上言葉にできない。
「いいから、落ち着いて……」
そんな二人を横目で見た後、ダグラスは舘林に事情を聞く。
それは、授業のミニゲームの最中――
メグミと亜紀がナタリア女学院の見学で欠席していたたため、マナミ、リナと琴子、サナエの二対二という変則的な対戦を行っていた。守備側のマナミがファイアボールを放った時、大きく射線が逸れて、前進していた味方であるリナの後頭部に直撃。その勢いでリナは前にいたサナエともつれるように倒れ込んだ。
「首藤さんは意識不明のまま救急車に運ばれて、盛さんは足を怪我して今、医務室で手当てしてもらっています」
まだ呆然という表情で、舘林はダグラスに説明した。
「わ、私……アタッカーの西園寺さんへ向けてファイアボールを放ったんだよ。なのに……」
「ふざけないでよ! どうやったら私に向けて放った魔法が、首藤さんの後頭部に当たるのよ!」
そう怒るのは西園寺琴子である。その状況を一番近くで見ていた。どんなにミスをしても、魔法がリナへ向かうような位置ではなかった。あきらかにリナの後頭部を狙ったと琴子は言う。
「そ、そんな――私、リナに向けて魔法を使ってない!」
「嘘を吐くのもいい加減にして! みんな見ていたのよ!」
防護スーツはカラダ全体と覆い、顔は防護マスクを被っている。しかし、マスクは前面しか保護していないので、後頭部は丸腰なのだ。そのため、後方からの攻撃は禁止されており、一回で退場。危険な行為だとみなされれば、その場で試合を没収され、反則があったチームが敗北になる。
しかも、今回は味方に向けてである。味方が攻撃してくるなんて考えもしないので、無防備に背を向けていたところだった。だから、もし、故意であれば大変な事件だ。
「まあ待て西園寺。状況はわかった。ここは落ち着け」
ダグラスがそう言うと、琴子はいったん口を閉ざす。しかし、マナミを疑っているという表情を崩さない。
「マグリン、私、本当に――」
すがるような目でマナミはダグラスを見るので、「わかっている」とだけマナミに伝えた。
「ここはもういいから、今日は帰るんだ。みんなも帰れ」
メグミにはマナミと、亜紀には琴子と、それぞれ一緒に下校してもらうように話をする。
「舘林先生は先に職員会議へ行ってもらえるかな?」
「マグナマル先生は?」
舘林に聞かれて、「盛の様子を見てから行く」と答えた。
「私も――」と舘林は言うのだが、「二人とも遅れたら、また何を言われるかわからない」と説得して、彼女を行かせるのだった。
全員が競技場から出て行くのを確認したダグラスは、コートの床に腰を下ろす。そして、何かを剥がすと――
「つまらない小細工をしやがって……」と呆れたようにつぶやいた。




