第53話 ひさしぶり。元気だった?
午後の授業が開始される時間になると、ナタリア女学院の見学者たちは魔法競技場へ移動する。そこで、清蓮の魔法科生徒と顔合わせを行った。
「今日は皆さんの練習を見せていただけるということで、大変楽しみにしてまいりました。ぜひ、新たな発見と良い刺激を当校に持ち帰りたいと考えています。また、来週は御校の代表者をお呼びして、当校の授業も見学していただく予定です。その時はまたよろしくお願いします」
今居が挨拶すると、全員で拍手する。それから、見学にきた生徒も簡単に挨拶を行った。
「それでは、各学年に分かれて練習を行いますので、それぞれ分かれてください」
三年の魔法科担任からそう説明され、生徒たちが散らばった。
「亜紀――」
一年生が実習するコートへ向かおうとしていた亜紀に、ナタリア女学院の生徒が声をかけてくる。
「ひさしぶり。元気だった?」
そう親しげな口調で話す相手に、亜紀は「まあね――」と素っ気なく応えた。
「なんか、亜紀……ずいぶん変わったね」
声をかけてきた生徒は亜紀の金髪を見て、微妙な表情を見せる。
「別に――高校に上がったらこういう髪にするって、前々から思っていたことを実行しただけよ」
亜紀は巻き髪の先端を指でクルクルと回す。
「そうなんだ――ねえ、こんどLINしていい? どこかで会わない?」
相手と目を合わせないまま、亜紀は「まあ……いいけど」と、これまた感情がこもっていない言い方をする。
「ありがとう。それじゃLINするね」
そう言って相手が離れようとしたところ、「あのさ、アサミ」と亜紀は呼び止めた。
「なに?」
「えっ? いや、なんでもない。じゃあね」
「うん、じゃあね」
ナタリアの生徒が離れたところで、ダグラスが亜紀に近寄る。
「手稲アサミと知り合いなのか?」
「――相変わらず、女の子の名前を覚えるのは早いのね。このセクハラ教師」
別に女の子だけのつもりはないのだが――なんて、ダグラスは考える。
「同じ中学ってだけよ」
「そうか? その割には、ずいぶん親しかったような感じだったが?」
「別に、どうでもいいでしょ?」
亜紀はサッサと移動していった。




