第50話 それじゃ、私が取っちゃおうかな?
同じクラスメイトだったのに、今までほとんど話したことのなかったメグミと亜紀。ふたりで寮周辺をジョギングしているうちに、会話が弾んでいた。
いつも仏頂面していると亜紀にからかわれ、メグミは本気でショックを受ける。それを亜紀に笑われた。
耳まで真っ赤にして恥ずかしがるメグミが可愛いと思ってしまい、思わず頭を撫でる。
「そうそう、そんなふうに感情を表に出せばいいんじゃない? メグミは地が可愛いんだから、きっとダグラスも喜んでくれるよ」
「なっ!」
突然、ダグラスの名前が出てきて狼狽える。
「なんで、アイツの名前が出てくるのよ!?」
「だってメグミ、ダグラスのこと好きなんでしょ?」
「わ、わ、私がぁ!?」
もはやゆでだこ状態の相手に、(本当に可愛い人)と亜紀は嬉しそうな表情を見せた。
「な、なにを言っているの!? そんなアイツのことなんて何とも思ってないわよ!」
アイツ、アイツって、相手は先生なのに……(きっと、それさえ気づいていないんだろうなあ)なんて思い、口元が緩んでしまう。
「あ、そう? それじゃ、私が取っちゃおうかな?」
「と、取っちゃう!?」
それを聞いてメグミは慌てた顔をする。
「亜紀って、アイツのことを嫌っていたじゃないの!? 辞めさせるとか言って――」
「まあ、そうだったんだけどね……」
亜紀は斜め上を見上げて――
「よく考えたら、結構イケメンじゃない? 彼氏にしたら友達に自慢できそうだし――そう思わない?」
「し、知らないわよ!」
プイッとそっぽを向くメグミに、(からかい甲斐のあるコよねぇ)とニヤけてしまう。
三十分ほどで街を一周して、寮に戻ってくると……
「やっと、戻ってきたか。それじゃ、訓練開始だ――って、おい、馳川? 大丈夫か?」
戻ってくるなり、膝と手を玄関前の地面に付いて、ゼイゼイと息をする亜紀。
「ちょ、ちょっと、休ませて……」
メグミをからかうのに夢中になっていて、オーバーワークなってしまったらしい……
「走れとは言ったが、そりゃ、やり過ぎだろう――で? 大埜はなんで顔が真っ赤なんだ? 調子悪いのか?」
「なんでもないわよ!」
ダグラスの顔を直視できないメグミであった。
「――?」




