第49話 アナタ、いつの時代の人?
「ねえ、今からミックに行かない?」
放課後、琴子とサナエが亜紀に近寄り、普段から利用しているハンバーガーショップへ行こうと誘ってきた。
「ああ、ゴメン。ちょっと用事ができて、しばらく放課後は付き合えないかも」
亜紀はすまなそうに、二人に向かって手を合わせる。
「えっ? 塾とか? まさか、彼氏?」
琴子の勘ぐりに「彼氏じゃないって。まあ、塾みたいなものかな?」と誤魔化した。
二人と別れ、寮に戻った亜紀。早速、新しいランニングウェアに着替え、玄関へ向かう。そして、やはり新品のランニングシューズを履いた。ダグラスから「走れ」と言われていたからだ。わざわざ、新調したのは少しでも気持ちが乗るようにという考えだった。カタチから入るタイプらしい。
「ほんとうに、アイツの言うことを聞くのね」
そう声をかけられたので振り向くとメグミがいた。
「――そうしないと魔法を教えない。そう言われたからよ」
不愛想な表情のまま、亜紀はきれいな金髪を後ろで結んだ。
「……早く、靴を履いたら?」
「えっ?」
「走るんでしょ?」
「一緒でいいの?」
亜紀は、「別に……」と素っ気なく応えるので、メグミは「それじゃ――」と急いで靴を履いた。そのまま、外に飛び出す。
しばらくは無言のまま走り続けた二人だが、メグミから声をかけてきた。
「ねえ馳川さん、どうしてアイツの個別指導を受けようなんて思ったの?」
メグミは昨日、ダグラスから「明日から馳川と一緒に指導する」と言われた。ただし、理由までは聞かされていなかったのだ。
「別に――ただ、魔法を覚えたいと思っただけよ。あと、亜紀でいいわ」
「えっ?」
「さん付けされるの、気持ち悪いから――その代わり、私もあなたのことメグミって呼ぶから」
「わかったわ。それじゃ亜紀って呼ばせてもらう」
「それより、メグミはどうなの?」
「どうなの――って? 何が?」
「悪いけど、あなたがダグラスと話してるの聞いちゃったの。メグミって、この世界の人間としては魔力量が異常なまでに高いのでしょ?」
メグミは(ああ、そのこと……)と苦笑いする。
「そうらしいね」
「自分のことが気持ち悪いとか、思わないの?」
「えっ? なんで?」
亜紀の言っていることが良くわからないという表情をメグミは見せる。
「だって、他人と違うって言われているのよ。ショックじゃないの?」
「まあ、そうなんだけど……」
確かに最初は、(自分が怖い)なんて思った時もあった。逆にダグラスからそうだと言われて安心したというか、なんか吹っ切れた気分になっていた。ただ、それをどう説明すればいいのか困ってしまう。
そんなことを考えていたメグミの顔が面白かったようで、「ぷっ――」亜紀は吹き出した。
「な、なによ?」
「いや、メグミって今までのイメージと全然違うなって」
そう言われて、相手はぷうっと頬を膨らませる。
「どういう意味よ?」
「なんか、いままで話しかけ辛かったのよね。カラダから『話しかけるな』オーラを放っているっていうか?」
「えっ?」
「マナミとリナといつも一緒だけど、他の人とはあまり話さないじゃない? 普段から仏頂面してて、人を寄せ付けない感じ?」
「わ、私、そんな仏頂面してる?」
「してるしてる。なあに? 自分で気づいてなかったの?」
確かに、自分から人に話しかけるタイプじゃないけど……そういえば、寮で同室のマナミとリナ以外、あまり他人と話していないな――と、いまさらショックを受ける。
「ちょっと、ウケる。マジなの?」
走りながら、おなかを抱える。そういうふうに笑われると、さすがにメグミも面白くない。
「あ、亜紀だってそんなコギャルの恰好で、学校じゃ浮いているじゃない!」
「コギャルって……アナタ、いつの時代の人?」
「う、うるさい!」




