第38話 バ、バカにしないで!
それからは、美咲の風属性魔法が無双する。あっという間に琴子もサナエもヒットアウトしてしまった。なんたって、不可視な魔法だ。防ぐことができない。
「はい、それまで!」
舘林が終了の合図をすると、美咲は「ふぅ……」と深呼吸する。
「美咲ちゃん、スゴい! カッコよかったよ!」
コートを出ると、早速マナミが声をかけてきた。他のクラスメイトも集まってくる。
「あ、あの……」
注目されるような立場になったことがない美咲は、みんなに言い寄られ戸惑ってしまう。
「ふん! たかが運よく一、二回勝ったくらいで、英雄気取るんじゃないわよ」
亜紀がまだ納得いかないという顔で美咲を睨んでいた。
「なあに、負け惜しみ?」
マナミがからかうと亜紀は真っ赤な顔をする。
「バ、バカにしないで!」
亜紀が右手を振り上げたとき、メグミがその腕を掴んだ。
「ちょっと、やめなさい」
手を出すのは良くない――そんな気持ちでメグミは亜紀を止めたのだが、掴まれた腕を振り払って、数メートル後ずさりする亜紀の行動に驚く。メグミを見る亜紀の表情はまるで得体の知れないものを見てしまった――そんな顔だった。
(――えっ?)
まさか、そんなリアクションを取られるなんて思ってもいなかったので、メグミも何事かと思ってしまう。
「――ふん!」
すぐにいつもの表情を見せて踵を返すと、亜紀はそのまま離れていった。メグミも「ふう……」と息を吐く。
「マナミも余計なことは言わないの」
自分より十センチほど背の低いマナミの頭をメグミはポンポンと軽く叩いた。
「はーい」と軽い返事をしたあと、マナミはダグラスに近寄る。
「先生! 私にも風属性魔法を教えてください!」
マナミが頼むと、他のクラスメイトからも「私も!」という声があがった。
「わかった、それじゃ、明日の授業で教えることにしよう」
そう言うと、「わーっ!」という歓声があがるのだった。




