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第37話 その程度の知識で常識ぶるのはやめてくれ

 これで騒ぎは収まったと思ったのだが――


「鈴来、ちょっと来い」


 それまで黙って見ていたダグラスが美咲を呼んだ。彼は手ぶり素振りを見せながら、何かを伝えているようだ。最後に、ポンっと美咲の肩を叩いて、コートに戻す。


(あいつ……いったい、何を吹き込んだの?)


 メグミがダグラスを睨むと、彼も気づいたようで、メグミに向けて不敵な笑みを浮かべた。


(な、なにあれ?)

 メグミはムッとする。何もかも見透かされているようで腹が立つ。

(夢の中では、あんなに真剣な表情を見せていたクセに……)

 そんなことを考え、メグミは夢の中で彼が発した言葉を思い出してしまう。


『――オマエのことを世界で一番愛している』


(な、な、な、なんで、今そんなことを思い出すのよ!)

 かーっと、頬が熱くなるのを感じた。


「メグちゃんどうしたの? 顔が赤いよ?」

「な、何でもないわよ!」


 両手で顔を隠して誤魔化す。


「――?」

 メグミらしくない反応にマナミは不思議そうな表情を見せるのだが、舘林のホイッスルで、再びコートへ目が向かった。


「それじゃ、プレイを再開します!」


 亜紀と美咲の退場で二対二になったが、結局、二十四秒でポイントが入らず、そのまま攻守交替となった。

 再開の笛が鳴る。今度は亜紀がアタッカーで守備側の中央の位置に美咲が入る。

 今度も、亜紀はかまわず美咲に向かって走る。美咲の攻撃魔法は届かないとたかをくくっているから躊躇しない。だが――


「インパクト!」

 美咲が杖を亜紀に向けた。何も起きない……いや――


「痛い!」

 亜紀が突然、腹部を抑えて立ち止まる。


 ビーっ!


 亜紀の防護スーツと連動している衝撃感知装置が反応し、ブザーが鳴ったのだ。


「えっ? えーと?」


 何が起きたのかわからないという表情の舘林だが、ダグラスが声をあげた。


「馳川! ヒットアウトだ!」

「――なっ!」


 亜紀は顔を真っ赤にする。


「何も当たってないじゃない! 機械の故障でしょ!?」

「故障じゃない。風属性の魔法が当たったんだ。風属性は可視性が低いから見えなかっただけだ」


 ダグラスの説明にメグミも納得した。確かに、美咲の杖から放たれたモノが亜紀のカラダに当たっている。


(あれが、風属性……)


 メグミも初めて見た魔法だが、火属性のファイアボールより速度もあった。今、思い出してもゾクゾクする。


「風属性!? 冗談は止めてよ! 風属性の魔法でダメージがあるわけないでしょ?」


 この世界で発見されている魔法は、火属性、風属性、水属性の攻撃魔法、マジックシールド等、無属性魔法の一部。そして、召喚魔法だ。

 風属性、水属性の攻撃魔法は火属性に比べ、その威力が大きく劣る。だから、実用には向かない。そういう考えがこの世界での定説だったのだが――


「オレがいた世界でも、火属性の攻撃魔法が最もポピュラーだった。それでも、他の属性魔法を得意とする魔導士はたくさんいたぞ」


 得意な魔法属性は人それぞれで、極めればどれも十分な破壊力となる。火属性が有利で、他の属性が不利ということはない。そうダグラスは説明した。


「この世界で魔法が見つかったのは十年ちょっと前なんだろ? その程度の知識で常識ぶるのはやめてくれ」

「くっ――」


 そこまで言われると、さすがに反論できない。亜紀は悔しさで歯をくいばる。


「さあ、プレイ再開だ!」

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