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第35話 愛しているわ。ダグラス

 劫火の中、私はいた――


(――って、どういうこと? ここはどこ?)


「もうやめろ! これ以上、罪を犯すな!」


 そういう声が聞こえる。今の声、ダグラス?

 振り向くと眼下にダグラスと数人の騎士が見えた。


「ダグラス、どうして? アナタはわかっていたのでしょ? 私はこの世界にとって異物でしかない。だから、こうなってしまうことを……」


 ちょっと、今の声は私? だけど、何を言っているの? 異物? どういう意味?


「黙れ魔女め! フン――それだけ衰弱しているのであれば、もうダグラス殿の手を煩わせる必要はなかろう! 私がトドメを刺してやる!」

 そう言って、ダグラスの傍らにいた騎士が私に向かって剣を振り上げ飛びかかってきた!


(いや、だから、これは何? 私が何をしたっていうの?)


「やめろ! オマエではムリだ!」

 そういうダグラスの声が聞こえたが、『私』は向かって来た騎士に手を向ける。


「うわぁぁぁぁっ!」

 騎士のカラダに黒い霧が纏わりつくと、騎士のカラダが急激に老い朽ちはて、やがて白骨となる。


「うわっ! や、やっぱり、バケモノだぁ!」

「し、死にたくない!」


 仲間が一瞬にして死に朽ちたことで、ダグラス以外の騎士たちはその場を逃げ出した。


「――これで、もう邪魔者はいなくなったわ。ダグラス……」

「……そうだな」

「どうして……」


 自分がダグラスに話しかけている――そうは理解できるのだけど、自分の意志でないことは明白だった。

 なんなの? どうしたっていうの?


「ねえダグラス、どうして教えてくれなかったの?」

「――すまん。オレのミスだ許してくれ」

「質問の答えてになっていないわよ! いつもそうやって、話をはぐらかすんだから……アナタはずるいわ」

「……」


 その時に見せたダグラスの顔は、とても悲しみに満ち溢れていた。初めて会った時からそんな顔を一度でさえ見せたことがないのに、私はあの顔を知っている……どうして?


「……ねえ、私と一緒に別の世界へ行かない? ダグラスとだったら私はどんな世界でも構わないわ」

「――それもできない」

「……そう」


 その時、私は絶望していた。どうして、そう思ったのかわからない。でも、全てを裏切られたような気持になっていたと記憶している――なぜ?


「それじゃ、もうひとつだけ……私のことを愛していた?」


 ――えっ?


「もちろんだ。今でもオマエのことを世界で一番愛している」


 ――えっ?


「それは、女のとして? それとも?」

「…………」


 ダグラスは何も答えなかった。ただ、私のことを見つめていた。悲しみでも、哀れみでもない……そんな目で……


「もういいわ。それじゃ、決着をつけましょう?」

「わかった……」


 私の頬に、熱いなにかが流れているとわかった。何なの?


「愛しているわ。ダグラス」

 次の瞬間、私は全身に黒い炎を纏い、ダグラスへ向かっていった。


「ベアトリス!」

 そう叫んで、ダグラスも青い炎を纏い、私に向かってきた!


 そして、黒と青が交わると、激しい光が飛び出し――


 *


「――はっ!」

 

 そこでメグミは目覚めた。


(えっ? 今の何? どういう夢?)


 私に魔法の指導をする――

 ダグラスからそう伝えられた日の夜に見た夢――

 

 彼は私に謝っていた――なぜ?

 私と彼は敵同士のようだった――なぜ?


 いや、夢なのだから理由なんてないのはわかるけど……

 どうしてそんな夢を?


 彼は私のことを別の名前で呼んでいた。どんな名前だったのかは思い出せない……

 なのに、私が最後に発した言葉だけは覚えている。


『愛しているわ。ダグラス――』


(――えっ? ええぇぇっ!)


 顔がカーッと熱くなる。


(な、なんで、そんなことを? い、いくら夢だからって?)

 胸の鼓動が激しく鳴っているのが自分でもわかった。


(ちょ、ちょっと、そんな……うそでしょ!?)

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