第33話 それが大埜の答えか?
放課後――寮に戻ってきても、メグミはダグラスが言った言葉が頭から離れない。気がついたら、ダグラスの部屋へ足が向かっていた。あれほど、嫌っていた彼の部屋に――
数十秒、一〇一号室と表示のあるドアの前で躊躇っていたのだが、意を決してそれを叩く。
「入っていいぞ」
ダグラスの声だった。メグミはドアノブを回し、中に入る。
「なんだ、大埜か。どうした?」
「――異世界でもパソコンはあったの?」
ダグラスはテーブルの上に乗せたノートパソコンを器用に扱っていた。
「いや、向こうの世界にはパソコンなんてなかったぞ。こっちに来て覚えた。本当にスゴいなこれは。こんな道具が向こうにあれば、百年かかった魔法の研究が数年で終わらせられたはずだ」
そう何気に言う。彼はこの世界に来て、まだ一週間ちょっと。それで、すでにパソコンを使いこなすとは――
「――まあ、アンタが何をしようと、もう驚かないけど」
「それで、ここに来た理由は?」
「マナミの質問に答えて、私の質問に答えない――そう言っていた意味、なんとなくわかったわ」
ダグラスはキーボートを打つ手を止めて、メグミへカラダを向ける。
「ほう……それは?」
メグミは頭を掻きながら――
「マナミの質問は先生が知っていることを教えてもらう――そういう意志があった。それに対して私の質問は、先生がやっていることを理解しようともせず、ただ感情的に口から出た言葉だった」
「――それが大埜の答えか?」
「違うの?」
ダグラスは頭を横に振る。
「いや、違わない。というより、答えは千差万別。自分の答えを持つ――それが大事なんだ。こういった事例の場合、誰かの考えを教えてもらっても意味はない。自分自身で考え、納得する。それが本当の答えだ」
なんかうまく誤魔化された気分だが、それでもダグラスの言いたいことはわかった。だから、彼は自分の質問に「答えない」と言ったのだ。ダグラスの考えを伝えるだけでは何の意味もない。自分自身が答えを導き出さなければならない問題――そういうことなんだろう。
確かにあの時、ダグラスがどんな説明をしても、おそらくメグミは納得しなかっただろう。反発する感情だけが残って、それについて考え直すこともしなかったはずだ。「答えをもらわなかった」から、メグミはそれについて冷静に考え、自分なりに納得できる機会を得たのだ。
「それで……今日の授業で私に謝ったでしょ? あの理由を知りたかったの」
「――いや、あれはそのままの意味だ。オレがしっかり指導していなかったから、危なくケガをさせるところだった」
それを気にして、今日の授業では魔法攻撃を躊躇ってしまった。もし、メグミがあの時、躊躇わずダグラスを攻撃していれば、もっと接戦になっていた――そう言う。
「それだけ?」
「どういう意味だ?」
「私って、異常なの?」
「……………………」
ダグラスは言葉に詰まった。どう説明すればイイか? そういう顔をする。
「やっぱり、そうなのね」
メグミは少し笑みを見せる。
「――わかった。正直に話す。実のところ大埜の魔力量は、この世界の人間としては異常だ」
薄々、気づいていたとはいえ、面と向かって言われるとショックである。
「すでに清野とはオマエをどうするか、何度か話し合ってきた」
清野蓮、つまりこの学校の校長であり理事長でもある人物だ。
「どうするって?」
「オマエを魔法科から除籍するように――オレはそう助言した」
「ちょ、ちょっと、除籍って退学させるっていうこと!?」




