第32話 あれはオレのミスだ
ダグラスの姿が目に入ってマナミはうろたえるが、メグミが「気にしないで、ゴールボードだけを狙って!」と叫ぶので、マナミは「ファイアボール!」と唱えた。しかし、炎の塊はゴールボードを大きく逸れた。
ピーっ!
「スリーアウト!」
攻撃側は攻撃魔法を一ターンで三回までと決められている。三回の攻撃魔法が失敗に終わった時点で、攻守交替になるのだ。
「アタッカーを守るガードの姿勢は良かったが、さすがにあの位置からゴールを狙うにはムリがあるな」
もっと確率の高い攻撃を考えたほうがイイと、ダグラスに言われる。
「本来、攻守交替だが、そのままアタッカーを変更して再開だ」
「――次、私にアタッカーをやらせて」
メグミが二人に頼むと、マナミもリナも頷いた。三人がセンターラインに立つ。
(遠くから攻撃魔法を放っても相手がシールドを展開してしまう。近くまで寄ったら、相手の攻撃を避けられない……それなら――)
舘林の合図で試合が再開されると、メグミはゆっくりと前進した。
(こうして、相手が動いてくるのを待つ……)
二人の距離が十メートルほどになると、ダグラスがダッシュする。すかさずメグミが下がると、ダグラスも動きを止めた。
(やっぱり、不用意に突っ込んでこないわね)
もし、ダグラスがあのままメグミに向かってくるようなら、相打ち狙いでダグラスに攻撃魔法を食らわすつもりだった。アタッカーと防御側が相打ちの場合、防御側だけが退場となる。
ただ、相手を待っていてもダメだ。二十四秒の間にゴールボードへ魔法を当ててポイントを取らないとターンオーバーになってしまう。
残り十五秒――じわじわとダグラスとの距離を縮めた。
残り十秒――いつでも魔法が放てるように杖をかまえ、相手との距離を再び十メートルとした。その瞬間、ダグラスがこちらに向かって走るのが見えた!
(今よ!)
メグミは「ファイアボール!」と唱える! その時、脳裏に昨日のことが浮かぶ。
暴走した炎の塊。もし、今も自分が制御できないような大きな炎が現れたら――
そう思った瞬間、ダグラスに向けていた杖を下方にズラしてしまう。
バンッ!
メグミの放ったファイアボールはダグラスの足元ではじけた。それを彼はジャンプして躱す。こうなるともうメグミになす術がない。
「ファイアボール」
ダグラスが近距離で放った魔法が、メグミの太ももに直撃。その衝撃でメグミは倒れ込んだ。
ピーッ!
「大埜さん、ヒットアウト!」
「ああ! ほしい! もうちょっとだったのに!」
マナミが悔しそうな顔をした。
ダグラスは倒れたメグミに手を差し伸べ、カラダを起こす。その時、声をかけてきた。
「まだ、昨日のことを気にしているのか?」
「――えっ?」
「あれはオレのミスだ。許してくれ」
それだけ言うと、ダグラスはメグミから離れる。
(ミス? 許してくれ? どういう意味?)
「さあ、次だ――」
ダグラスは何事もなかったように、授業を続ける。
その後もダグラスの一方的な展開となる。結局、誰一人、ポイントを獲得できないまま、その日の実習は終了した。




