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第29話 生徒の攻撃なんかに当たらない

 魔法科で学年対抗の練習試合を行うことは今までもあった。だが、一年生がまだ入学したばかりの一学期に行うのはめずらしい。

 提案してきたのは岳田である。各学年がどれだけのレベルにあるのかを見たいと、他の学年に声をかけたのだ。もちろんそれは建前で、一年生が惨敗した場合、ダグラスに責任を取らせようという魂胆だった。


 公式戦と同じ試合時間で、前後半各五分の十分間。各学年で三チームを選抜し、各チームが一試合ずつ他の学年と行う。つまり、一チーム二試合、各学年六試合行うのだが――


「ねえねえ、私たちが代表になったらイイね。先輩たちにどれだけやれるか楽しみ!」

「アンタはいつもポジティブでイイわね」


 笑顔のマナミを見てメグミは皮肉を言ってみる。


「でも、どうやって代表を決めるのかなぁ?」


 試合は三人で一チームとなる。交代はない。入学から一か月を過ぎた五月に自分たちで誰とチームを組むか決めた。

 魔法はイメージと集中力だ。しかも、カラダへの直接攻撃もある荒っぽい競技なので、信頼できる友達同士でないとチームとしてなかなか機能しない。

 メグミは寮でも同部屋のマナミとリナがチームメイトとなる。だが、いままで試合を行ったことがないので、二人とどれだけ息が合うのか不安なところもあった。それに――


(もし、昨日のような魔力暴走が試合で発生したら……)


 自分で制御できない状況がどうして発生したのか? その理由がわからない。昨日はダグラスが助けてくれた。しかしそれが試合中だったらどうなっていたのだろう……

 そう思うと、試合に出たいという気持ちにはとてもなれなかった。


 メグミは不安を抱えながら、午後の魔法実習に入る。


「ホームルームでも話したが、急遽、学年対応の試合を行うことになった。なので、これから一週間で、代表となる三チームを決めることになるのだが、その前に――」


 ダグラスは基本的な攻撃側の作戦を説明する。


「攻撃側はアタッカーと呼ばれる杖を持った一人だけが攻撃魔法を使える。残りの二人はガードと言ってアタッカーを防御魔法で守ることになる」


 彼女たちはすでに四月の実習で、攻撃魔法となるファイアボールと防御魔法となるマジックシールドは習得していた。


「コートは三分割されており、真ん中にアタッカー、サイドライン寄りにガードの二人が入る。アタッカー、ガードとも自分が動けるエリアを出てしまうと反則となり、ターンオーバーまで試合参加ができなくなる」


 攻撃側は二十四秒以内で相手のゴールボードに魔法を的中させれば一ポイントが入る。二十四秒間でゴールボードに魔法が当てられなければ、ターンオーバーとなり攻守交替となる。


「審判の笛と同時に相手側の陣地に入れる。アタッカーは的中率を上げるため、できるだけ敵陣奥深くまで侵入して、ゴールボードを攻撃しなければならない」


 ゴールボードへ攻撃できるのは一ターン、つまり二十四秒で三回まで。あまり、ムダ撃ちはできない。それに魔法をたくさん使えばそれだけ疲労が蓄積され、魔法の威力が落ちてしまう。前半、魔力を使いすぎると、後半、魔力切れや体力切れを起こしてしまう。


「三人が息を合わせて敵陣へ向かい、ガードはアタッカーを守り、アタッカーが確実に攻撃を当てられる位置まで誘導しなければならない」


 これは攻撃側の基本だと、ダグラスは説明する。


「今日は、各チーム攻撃ターンを練習してもらう」


 生徒達がざわつく。ひとり、手を上げた者が……メグミである。


「攻撃ターンを練習って、それじゃ守備側は誰がやるの?」


 ダグラスはニヤリとして、「大埜にしてはイイ質問だ」と応える。

(いったい、どういう意味よ)とメグミは思うのが、それよりも……


「守備はオレ一人でやる」

「――えっ?」


 驚く生徒たち。ダグラスたった一人で守備を?


「せ、先生! それじゃ、防護スーツを着てください! 危険ですよ」

 舘林がそうお願いをするのが、「大丈夫。生徒の攻撃なんかに当たらない」とダグラスは気にも留めないのだった。

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