第28話 それって迷惑電話じゃないかと……
翌朝のホームルーム――
「いやあ、スマホってすごいな! 電話とかメールとかがジャンジャン来たぞ!」
なぜかスマホのことになるとテンションが高いダグラス。楽しそうに話す。
「不動産投資に興味はないか? とか、不払いの契約がある……とか、内容は良くわからなかったが、楽しかったぞ」
全員、冷めた目でダグラスを見ているのだが、当の本人は気にしていないようだ。
「マグナマル先生、それって迷惑電話じゃないかと……」
舘林は迷惑電話が何たるかを説明するのだが、ダグラスは「そうか、勉強になった」となぜか喜んでいた。
「アイツの電話番号やメアドを怪しいサイトにいくつか登録したんだ」と、亜紀に耳打ちしたのは琴子である。
「あ、そう……イイ加減にしときなさい。バレたら面倒よ」
亜紀がそうささやくと、琴子は怪訝な顔をする。
「昨日は亜紀、乗り気だったじゃん?」
実際、彼の個人情報をネットに流そうと言い出したのは亜紀だったのだが――
「そ、そうだけど……」と歯切れの悪い返事が返ってきた。
亜紀は思い出していた――「オマエは筋がイイ」そうダグラスが口にしたことを……
彼女が魔法覚醒因子を接種することになったのは、国会議員である父親の指示だった。父親が属する与党が当時進めていた『魔法遺伝子覚醒に関する法律』。その安全性と有効性を広く国民に知ってもらうため、議員の家族は率先して受けるとそれを世間に公表していた時期があったのだ。つまり、自分たちの選挙活動のため、娘たちを差し出したのである。
亜紀自身、魔法にあまり興味はなかった。魔法覚醒因子が陽性とわかってからもそれは同じであった。それでも、魔法科へ進学するように親から言われるのだろうなと、内心思っていた。しかし、高校の志望校について学校から相談があると、父親は「好きにしなさい」と興味を示さなかったのである。選挙のため娘へ魔法覚醒因子の接種を勧めたのに、それが世間であまり騒がれなくなると、もうどうでも良くなっていたのだ。
魔法科でなく普通科への進学を志望することにした亜紀だったのだが、ある日を境に一転、魔法科へ進学することを両親へ告げる。それも、政界や財界の家族が多く入学するナタリア女学院でなく、清蓮学園を志望した。母親は反対したのだが、父親はやはり関心を示さなかったため、亜紀は清蓮へ進学することとなったのだ。
正直のところ、両親への反抗心もあって清蓮への入学を決めたのだが、『ある出来事』があって、魔法を勉強したいという気持ちになったのだ。
――そして、ダグラスの言葉に心が揺れる。
(もし、自分に魔法の才能があるのだとしたら……ダグラスのような魔法が使えるとしたら……)
「――ねえ亜紀、聞こえている?」
そんな、琴子の声で我に返る。
「えっ? 何?」
「七月の対抗戦代表選考を兼ねた学年対抗の練習試合を来週行うんだって」
「――えっ?」




